第14話 親父と命

 リビングのソファーで親父さんがふんぞり返っている。その前には正座しているラスロドとジャンヌがいる。


「てめぇらに、聞きたいんだが?」


 時は数刻前に遡る。


 ◆


「ジャンヌちゃん、伝えたいことがあるんだけど聞いてくれる?」

「はい。ルイさん、なんですか?」

「精霊さんが言うには、ジャンヌちゃんに子供できたよ!」

「えっ」

「ジャンヌちゃん良かったじゃん!」

「うち、まだ子供いらないかな」


 ルイの怒りを聞いて、俺はギルドに行き、ラスロドのもとに。


「ラスロド」

「おう、レオン」

「ジャンヌに子供できたって」

「そうなのか!?」

「あぁ、そうだ」

「困ったなぁ、まだ、いらないんだけど」

(ブチッ!)


 俺はラスロドの首ねっこ掴み、家に戻る。そして、今に至るわけだ。


 ◆


「おい、ジャンヌ。てめぇ、他にも抱かれた男はいるか?」

「う、うち、ラスロドさんだけです」


「ラスロド、遊びじゃねぇんだよな」

「……」


「それで、てめぇら、どうしたいんだ?」

(やっちゃっえ、やっちゃっえ、親父さん。もっと圧かけてください)


「うち、まだ――」

「あ"ぁ」


 親父さんはジャンヌに圧をかけ、目線はラスロドに。


「堕してもらえると……」

「あ"あ"ぁあ」


 ラスロドとジャンヌは俯いている。


「てめぇら、人が話をしているときは、ちゃんと顔みるんだよ、わかっんのか、おいこら!」


 親父さんの蹴りがラスロドに当たる。

(ボコしてもいいですけど、殺さないでくださいね)


「で。てめぇら、子供いらないんだってな?」

「「……」」


「身勝手過ぎないか。って、聞いてんのか、おいこら!」


 親父さんの蹴りがはいる。


「てめぇらが子供を殺すっていうんなら」

「「……」」

「俺が、てめぇらを殺す」


 親父さんはブチ切れて、ラスロドをボコし始めた。

(親父さん、子供のことを考えてジャンヌはボコさないんですね)


 気が晴れたのか、蹴りを止める。


「ラスロドよぅ、宿屋暮らしなんか止めて、ここに住め」

「……」

「その金を子供の為に使え。わかっんのか、おいこら!」


 親父さんの蹴りが、また入る。


 こうして、親父さんのおかげで一つの命が救われた。


 ◆


 ラスロドがこの家に移り住み、自己紹介のときに事件が起こる。


「僕はタレス、魔法部隊の副長補佐をしています」


 ラスロドの目が鋭くなる。


「へー、副長補佐ね。知らんかったわ。オレ、エリートぶっ潰したいんだよね。やっていい?」

「ちょっと、あたいのダーリンに何するつもり。場合によっては許さないからね」

「へー、邪魔だよ高飛車魔女め」

「へっぽこ騎士のくせに」

(それはトドーです)


「(ブチっ)へっぽことはなんだ。ブチのめしたる」

(やべー。ん? タレス、右手から煙でてるけど?)


凍結フローズン!」


 ラスロドの両足は、タレスによってドンドン凍り固まり、動けなくなる。


「ソロン、やっていいですよ。もう動けませんから」

「わかったわダーリン。ファイヤ「ちょっと待ってください!」」

「いくら、ソロンさんとはいえ、うち許しませんから」


 こうして、二対二の喧嘩が始ま――、


「おう、てめぇら、喧嘩両成敗って知ってっか? そこに集めれ。焼き切ってやる」

(親父さん、インフェルノは家が耐えられません。止めてください)


「それと拷問してやる」

(親父さん、それだけにしてください)


 タレス以外の三人は親父さんに許しを請い願う。それは勘弁してと。

(タレスすごいね。耐えられる自信があるんだね)


「ルイ、どうする? このままだと生活に支障きたすぞ」

「とりあえず、部屋割りを変えましょう。両端にして」

「そうだな」

「あとはダディがやってくれるから、大丈夫だと思う」


 こうして無事に? (親父さん頼りの)新しい生活が始まった。


 ◇


 二ヶ月後


「ソロンさーん」

「ルイどうしたの?」

「あのね、精霊さんがね、ソロンさんに子供ができたって」

「ホント!」

「うん、良かったね」

「ありがとう、ルイ。ダーリン早く帰ってこないかな~」


 ◆


「ただいま」

「おう、おつかれ」

「親父さん、これお土産」

「なんだ?」

「ギルマスからボーナスで酒瓶五本もらった」

「じゃあ、早速呑むか」

「親父さん、夜にしてください」


 部屋に戻り、


「ルイ、お土産……」


 ルイは奥でうずくまり泣いていた。


「どうしたんだ? ルイ」

「ダ、ダディが、ダディが……」

「落ちたらでいいから、話してごらん」


 話を聞くと親父さんが何度も「もっと孫が欲しい孫が欲しい」と言っていたことに、プレッシャーを感じ、ソロンに子供ができて、ルイは感情を抑えられなくなったみたいだ。


 俺はルイを抱きしめ、


「大丈夫。親父さん、情に厚い人だから、どんなルイでも愛してくれるよ」

「……」

「俺らは俺らのペースでいいんだから」


 そう言って強く抱きしめた。ルイはそれに応えるように、俺を強く抱きしめ離れようとしなかった。


 それから三年後、俺とルイの間に待望の娘が産まれた。そして娘をアイと名付けた。

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