第13話 まともな奴はおらんのか

 「剣聖騎士」を解散してから一週間後。ギルドにて、


「おう、レオン、話がある」


 そう言ってくれたのは王都のギルドマスター(略称ギルマス)だ。


「何ですか? ギルマス」

「お前、「剣聖騎士」を解散したらしいな」

「はい、そうですよ」

「他のパーティーから、たくさん誘われているだろう?」

「はい、もう四パーティーから誘われました」

「入る気は?」

「まったく無いです」


 ギルマスは続ける。


「お前ジョブは?」

「剣士です」

「本当は?」

(偉い人はわかっちゃうんだな)


「剣聖です」

「だよな。剣士としての実力は飛び抜けているからな。そりゃあ誘われるわ」

「ですね」

「それでだ、本題に入ろう」

「??」

「新人冒険者の育成をしてみないか?」

「……」

「具体的にいうと、クエストに同行して新人にアドバイスをすることと」

「はい」

「ヤバい時には、助ける。そういう事をやって欲しいんだが」


 そう言ってギルマスは手で報酬額を示す。


「やります」

(そりゃね、その額、示されたらね、やるの一択でしょ)


「あとな、昔お前ところに魔女いたろ、そいつに後衛の育成を頼みたいのだが」


 ◆


「という訳で、どうだ? ソロン」

「あたい、新人の育成よりも、子供の面倒と教育の方が大事だわ」


 ◆


「という訳です。ギルマス」

「だよなぁ。やっぱり、あの高飛車魔女は無理か」

「はい」

「ふぅ、後衛なら、誰でもいいって訳じゃないからな。骨が折れるけど探すか」


 ◆


「ただいま」

「おう、ニート、仕事見つかったか?」

「親父さん、ようやく良いのが来ましたよ」

「副ギルドマスターか?」

(親父さん、こんな若造にそんなの来る訳ないでしょ)


「新人冒険者の育成です」

「そうかぁ、ポンコツなのに当たらないといいな」

(あっ、そうか。ジャンヌみたいなのに当たるかもしれんのか。トドーみたいのは知らん)


「あとな」

「はい」

「孫が沢山欲しい、ルイとガンガンやってくれ」

(親父さん……ストレートすぎますよ)


 ◆


 月日は流れ、レイとクレオ君が二歳になった頃。俺はギルドにてラスロドと共に、夏のキャンプを計画していた。


「だいぶ、アバウトだな、食料、現地調達って」

「いいんじゃない、その方が面白いだろうし」

「しかしまぁ、レイもクレオ君も引き連れて、初めてのキャンプだし楽しみだな」



「吾輩も楽しみにしているぞ」

(トドー、お前は呼んでいない、っていうか絶対に呼ばない。ってか何故いる?)



 メンバーは俺、ルイ、レイに親父さん、ジャンヌとソロンにクレオ君、それにラスロド。ディーンとタレスも(無理矢理有給休暇とらせて)参加する。


 ◇


 出発の日


「じゃあ、出発って、ディーン何だ? その大荷物は?」

「はい、あらかじめ、野菜は買っておきました」

(ディーン、変わらないね。嬉しいよ。さすが元ポーター)


「それなら魔法部隊のマジックバック持って来たから、入れてもいいよ」


 みんなで移動する。ちなみにレイとクレオ君は風の精霊シルフが補助してくれる。


「おい、ラスロド、この森、突っ切るのか?」

「計画立てたときに、ルート確認したじゃん」


「レイちゃーん、クレオ君。お爺ちゃんがカッコイイことするから見てな」

(予想がつきます。親父さん)


「インフェルノ!!」

(あぁ、火力強すぎて、森が炭化していく)


「「「すごい、初めてみた」」」

(そりゃそうでしょ)


「これがインフェルノですね。記録――あったデジカメ」

(タレス、よくわからんが魔法部隊って凄いんだね)


「よし、みんなで手分けして、炭を集めよう」

(何でそんなに前向きなんだ、ラスロド)


「レイちゃーん、クレオ君。また見たい? よし! わかった」

(親父さん、頼みます。この森、焼き尽くすつもりですか?)


「クレオ、レイちゃん、ママ、この森、吹き飛ばすからね」

(ああああ! 俺の周りには、まともな奴はおらんのか!)


 無事に(環境破壊?)目的地に到着。


「吾輩、待ちくたびれたぞ」


「ソロン、れ」

「わかった 「ハリケーンストーム!!」」

(うーん、綺麗に飛んでいるね。ここまでくると芸術だな)


 ◆


 夏のキャンプは(トドーが邪魔してきたが)とても楽しかった。


(まぁ、丸太を井形に組んでキャンプファイヤーをしようと思ったが、酔った勢いでインフェルノかまされ、別の方向に行ってしまった事は忘れよう)

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