第12話 決断

 ジャンヌの謹慎も無事に終わり、復帰戦前のミーティングで、


「失礼するぞ、パーティーメンバーを探していると聞いたが?」

「何でいるの? トドー」

「王都で活躍することが、吾輩の使命でね」


「おう、ヘタレ、久しぶりだな」

「おぅ、久しぶり」

(おめえ、馬鹿だろ)


「で、入りたいのだが」


「親父さん、どう思います?」

「はっきり言ってイヤだね」


「ディーンは?」

「どんなに有能優秀な人を集めても、足の引っ張り合いが起これば、逆効果です」


「ジャンヌは?」

「うちは生理的に無理です」


「ということだ、トドー」

「よろしく」

(あの、聞いてました? 断っているんですよ)


「てめえ、ちっと来い!」

(あーぁ、拷問だ)


 ◆


「おかえり、ディーン」

「タレスさん、珍しいですね、どうしたんですか?」

「ちょっと話があってね。ここじゃなんだから、部屋に行こう」


 ◆


「ディーン、二回謁見したでしょ?」

「はい」

「それで、国王が君のことを興味もったみたいで」

「はい」

「特殊部隊が「剣聖騎士」を調査していたらしい」

「……」

「結論を言おう、来月の騎士団試験を受ければ、君は騎士団に入れる」

「…………、タレスさんは、どう思いますか?」

「それは自分で考える事じゃない?」





「レオンさん、ダディさん、ジャンヌさん、お話しがあります」





「ふーん、そうなのね」

「うん、僕は良い選択をしたと思うよ」

「なんでなの?」

「冒険者の活動を少しやったけど、前衛は引退が早い」

「……」

「聡明な彼なら、おそらく後進の育成の仕事が回って来るだろう」

「……」

「それにね、ギルドでは出会いが少ないし、パートナーを見つける意味でもね」

「そうねぇ」

「お見合いの話も来るだろうしさ」


 ◆


 ディーンの送別会の日を決めて、それまでの間は一緒にクエストを行うことにした。


「ファイアウォール!」

「でいやぁ!」

「なめてんのか、おらお…………」

「はーー、はっ!」


 ◇


「余裕だな」

「そうでし……たね」

「……」



「レオン、ちっと来い」

(マジすっか、クエスト中、拷問ですか?)


「お、親父さん、何ですか?」


 親父さんは耳打ちする。


「ジャンヌの様子がおかしい」

「えっ、ジャンヌいつもおかしいですよ」

「そうじゃない、利き腕を庇っている」

「えっ」

「レオン、クエストを中止にしよう」


 ◇


「みんな、俺、調子悪いわ、クエスト中止にしたい」

(あっ、ディーンもわかっているな)


 ◆


「ソロン、ルイも、ちょっと来てくれ」

「ボク、部屋に行きますね」


 俺、親父さん、ジャンヌ、ソロン、ルイがリビングに集まる。


「嬢ちゃん、言わなきゃいけないことあんだろ」

「……はい」


「ジャンヌ、怒らないから言ってくれ」

「う、うち、け、剣が、思うように……」


「わかったわ。ジャンヌ、これ命に関わることよ」

「はい」

「どういう事ですか? ソロンさん」

「三ヵ月前、大怪我したでしょ、右腕を」


 俺は思わず天井を見る。後遺症だ。ポーションでも治せない。


「ソロン、なんとかなる方法はないか」

「あるには、あるけど、現実的ではないわ。エリクサーよ」


「嬢ちゃん、左で剣を扱うか、後衛に下がるか、辞めるか、よく考えた方がいいな」

「……」

「じゃあ、クエストしばらく中止ですかね、親父さん」

「どう考えても、そうだろ」


 女性陣三人は部屋に戻る。


「どうしましょ、親父さん」

「前衛がお前、ひとりだろ」

「そうですね」

「それに、俺は自分で守れるが、後衛に下がったとしても、守る奴がいない」

「そうですよね、回復役だとしてもハイヒールまでだしなぁ」

「選択肢は提示できるが、決めんのは、嬢ちゃんだな」


 ◆


 後日


「うち、一旦活動をやめて、左でやってみる。それでもダメなら」


 ジャンヌは泣いて、


「い、引退します」


 ◆


 ディーンの送別会は盛大に行われ、特に泣きながらディーンの肩を叩く親父さんが印象的だった。

(そんな強く叩いたら、紅葉になるでしょ、親父さん)



 ◇◇◇◇


(キツイな)


 俺はヒュドラと相対峙し、斬っては下がり、斬っては下がりを繰り返していく。

そして、ヒュドラが隙を見せた。


(よし、今だ!)


 俺はヒュドラの懐に行き。


「馬鹿! よせ!」


 ヒュドラの攻撃が胴体めがけて飛んでくる。


(しまった。ヤバい)


 俺は思わず目を瞑った。

 

(あれ?)


 目を開けると、そこには見たことのない大きな炎柱と。

 胴体が真っ二つになっている親父さんがいた。


(っ!)


「撤退だ。ディーンはジャンヌに槍を預けて下半身を頼む、俺は上半身を抱える」


 俺達は走って逃げる。



(親父さん、親父さん……)


「ちくしょーーーーーー!!」



 ◇◇◇◇


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「どうしたの? レオン、大丈夫?」


「ルイ、親父さんは! 親父さんは!」

「えっ? 酔い潰れて、リビングで寝てると思うけど」


 ◇


(はぁー、よかった)


 床に酒瓶が転がっている中、親父さんはスヤスヤと眠っていた。


 ◆


 遅めの朝食を親父さんと食べる。


「しかしまぁ、嬢ちゃんも仕方ないよな。おめえの初めての仲間だろ」

「親父さん、俺決めたよ」

「ん? 何をだ」

「「剣聖騎士」を解散する」

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