第11話 散りゆくこと
「剣聖騎士」五人態勢になって、初のクエスト。事件は起こる。
(親父さん。昨日呑み過ぎなんだって)
四人で目的地へ。途中、数十匹のワイルドウルフに囲まれる。
「前は俺がやる、トドーは右、左はディーン、後ろはジャンヌな」
ワイルドウルフをなぎ倒していく。粗方倒し終わったなと思っていたら、
「キャーー!」
悲鳴のする方へ振り向くと、
(キングウルフ! まずい)
ジャンヌは右腕をキングウルフに嚙まれて、流血が酷い。剣も、もう持てない。
(しまった。間に合わない、首もやられる)
ズバッ
キングウルフは力なく倒れた。
「まったく、何してんだよレオン」
「すまない、ラスロド助かった」
「話は後だ、流血が酷い」
ラスロドはハイポーションをジャンヌにかける。ジャンヌの傷が塞がっていく。
「とれあえず、大丈夫そうだな」
「あぁ、助かったよ」
「クエストは中止にして戻った方がいい」
「ああ、そうする」
ジャンヌを背負い、右腕のフォローをディーンにお願いした。
「吾輩が背負う」とトドーは言ったが、ラスロドが「お前が背負うとややこしくなる」といって切り捨てた。
(サンキュー、ラスロド、このエロ親父なにするかわからん)
「じゃあ、俺は行く、貸しな」
「わかった。ありがとな」
ギルドに戻り、仮眠室のベッドでへジャンヌを寝かせる。
「ディーン傍にいて、何かあったら叫んでくれ」
「わかりました」
トドーはせっかくのチャンスと言ってたようだが無視する。受付にクエスト失敗の報告と、ジャンヌに飲ませるポーションを買いにいく。
「レオン、彼女はどうだ?」
「ああ、大丈夫だ。ラスロドのおかげで」
(慢心していた。このメンバーならと。リーダーとして失格だ)
「そうか、良かったな」
「レオンさん」
「おい、ジャンヌ動くな、仮眠室に戻れ」
「お礼が言いたくて」
ジャンヌはラスロドに名前を聞いた。
(そこまでは普通なんだけど、泊まっている宿屋まで聞くか?)
◆
「おかえりなさい、ってジャンヌちゃん血だらけじゃない」
「あぁ、やられた。傷は塞がったが、血が足りない。湯あみと食事を」
そう言って、ルイとソロンにお願いする。
「おめぇよ。三人で三方向だろ、中心にフォロー役とヒーラー置いて」
「はい、親父さん」
(親父さん、あんたが二日酔いでなければ……殺されるから言わないけど)
「もう、おめぇには任せられん。ルイと別れてもらう」
「えっ、え」
「冗談だよ。しかしまぁ、命が繋がったのはラッキーだったな」
「はい」
「で、そのラスロド何とかに、ちゃんと礼はするんだろ」
「ん?」
「馬鹿だな、菓子折りでもいいから何か持っていくんだよ」
◆
俺とジャンヌはラスロドが泊まる宿屋へと向かった。
「おう、レオン、どうしたの?」
「先日のお礼で来た、これ」
「お、エクストラポーションじゃないか!」
「すまぬな、これくらいしか思いつかなくて」
「ラスロドさん、これ」
ジャンヌはラスロドにペンダントを渡す。
「これ、どうしたの?」
「はい、お土産屋さんからパクってきました」
(ジャンヌ、犯罪だ。一緒に検問所へ行こう)
「ごめんね、これは受け取れない」
「そうですか……」
(うん、そうだ、その通りだ)
「ジャンヌちゃん、一緒に検問所へ行こう」
(大小かかわらず窃盗だもんな。犯罪絶対ダメ)
このあと俺とラスロドは、お土産屋さんに行って同じペンダントを大量に買った。
「ペンダント十九点ですね」
「いや、二十点だ」
そう言って、偽装工作をした。
(犯罪だからね。絶対ダメだからね)
◆
俺はラスロドとギルドの食堂にいる。大量のペンダントを日頃のお礼と言って、受付嬢全員に渡した。
(足りない分は後で購入)
「いろんな意味で助かったよ」
「大変だなレオン、ホント構成メンバー大事だよね」
「そうだな。お前それがイヤでソロやってるんだろ」
「まぁ、強い奴と手合わせしたいんだよ。しかしまあ」
「ん?」
「魔法部隊にエリートがいるらしい」
「へぇー」
(タレスかな)
「なんでも北の防衛線から、王都防衛に異動、しばらくしたら副長補佐だって」
「へー、そんな奴いるんだ」
(確定だな)
「手合わせして、ぶちのめしたい奴だな、俺最強を証明するため」
(言わなくてよかった。知り合いだと分かれば面倒になる)
「そんなことしなくても、いいんじゃないの?」
「君が手合わせしてくれるならね」
(正直いってやりたくない)
「あとさ」
「ん?」
「ジャンヌちゃんのことなんだけどさ」
「ジャンヌがどうした」
「庇護欲に駆られるんだよ、彼女、引き抜いてもいい?」
「あいつ、ハイヒール使えるから抜けると困る」
「だよねぇ、じゃあさ」
「ん?」
「デートに誘っても問題ないかな?」
(お前、勇者だな、ヤバい奴って分かってるだろ)
◆
「ジャンヌ」
「レオンさん、なんですか?」
「手紙を預かってきた、ほい」
ジャンヌは手紙を読んで、目を見開いて、意を決したかのように
「ソロンさーん、化粧のやり方教えてくださーい」
(吊り橋効果って凄いね)
このあと、案件(窃盗事件)を親父さんに伝えたところ、ジャンヌに教育的指導(三ヶ月間の朝食夕食作りと外出禁止)が入る事となった。
始めは三週間の拷問(二時間ボコし)になる予定だったが、泣きが入ったため、このようになった。
ちなみに俺は厳重注意(二時間ボコし)となった。 聞くところによると、ジャンヌを殴れなくなったため、ストレス解消に厳重注意としたもよう。
(完全にとばっちり)
◆
親父さんが加入してからは親父さんが火力調整して敵を半殺しにし、前衛陣で止めを刺すスタイルになっていった。
「レオンさーん、これ、いつものように、ラスロドさんに、お願いします」
「わかったよ、預かるよ」
俺は手紙を預かりギルドへ向かう
(そういえば、ジャンヌ謹慎中だったな、やべっ)
「どうするかな~」
(とりあえず検閲しとくか)
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ラスちゃんえ
いつも変シン、あガリとーー、うち嬉ピッピ
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(見なかった事にしよう)
◆
二週間が過ぎた頃
「吾輩はこのパーティーから抜ける」
「「「……」」」
「旅に出る。王都に留まり続ける器じゃないからな」
(うん、知ってる。娼館巡りするんでしょ)
「いいんじゃね。ヘタレがいてもしょうがないし」
(親父さん、トドーと、そりが合わなかったしな)
◇
三人でクエストを行い、少し難しくなると思ったが、全然そんなことは無かった。
(うん、トドー要らなかったね)
クエストの帰り道。
「そういえば親父さん、よく加入してくれましたね」
「俺がやんなきゃ、ソロンとかという奴に頼むだろ」
(はい、そうです)
「それに」
「ん?」
「大概のことはできたしな。ここで散っても悔いは無いよ」
「親父さん、ルイが聞いたら――」
「わかっているよ。ここだけの話にしといてな」
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