第6話 首席タレス
「最近、ソロンのやつ、化粧しているけど、ジャンヌ何か知ってるか?」
「知らないです。近頃、ソロンさん買い物に行くことが多くなったくらいですね」
「ディーン、何か知ってる?」
「いや、まったく。わかりません」
「どうしたんだろ。何か悪いもん食べたんだろうか」
そんなことを疑問に思っていたら、ソロンがやってきた。
「レオン」
「なんだ」
「この前の貸し、返して欲しいんだけど」
「ん?」
「明日、ルイと一緒に来て欲しいの」
◆
翌日
「だ、大丈夫かな? これで」
「大丈夫ですよ、ソロンさん、行きましょう」
「ルイ。ソロンと一緒に行けばいいの?」
「はい」
◆
「ここで、待ち合わせしています」
「ここ、お高い所じゃん。なんでまた」
ソロンを見ると、彼女は緊張しているようだ。
「行きましょ、ソロンさん」
俺はわけもわからず高級レストランに入っていく。
「あそこにいますよ。ソロンさん」
四人掛けのテーブル席に一人の男がいた
(ん? 誰だ――あっ。この前、ルイといた奴じゃん)
「タレス君、待たせて、ごめんね」
「大丈夫、大丈夫。えっと、紹介してくれる子は彼女かな」
「はい、ソロンさん座りましょ」
俺はタレスと呼ばれた男の隣に、真正面にはソロン、斜め前にルイが座った。
「じゃあ自己紹介から、私はルイです。専攻は精霊学です」
「僕はタレスと言います。専攻は古代魔術文字の解読です」
「俺はレオン、ルイの婚約者だ」
「あ、あ、あたいは、ソロンです。魔女――じゃなく賢者です」
(あっ、なるほどね)
四人で食事を摂るが、ソロンはいつもの感じとは違う。
「ソロン、いつも通り、高飛車でいいんだぞ」
「ソロンさんって、高飛車なんですね」
ソロンからガンを飛ばされる。
(鬼にみえるよ、タレス君の前で大丈夫か?)
「ソロンさんって普段魔女の恰好をしているって聞いていたので興味があったんですよ」
「そうなんだよ。こいつ、賢者なのに魔女の恰好なんだよ」
「今日のお召し物、イメージを違って素敵な感じですね」
(この男、やりおるな)
「あ、ありがとう」
「どうせ、バレるんだから、猫被ってないで、普段どお(痛!)」
(足、踏んでくんなよ、ソロン)
「ソロンさん、大丈夫ですよ、タレス君、温厚篤実ですから」
「あの、タレスさん」
「なんですか?」
「あ、あたいと一緒に街を歩いてくれてもいいですか?」
「はい、喜んで」
(やるな、こいつ)
四人で食事を済ませ。二人が学生なので、俺――。
(貸しがあるから、払うか)
その後、俺とルイは帰る――、
(わけないじゃん。尾行だよ。尾行)
◆
俺とルイは物陰に隠れて聞き耳をたてる。
「ソロンさん、はい」
「えっ」
「あまり、食事が進んでいなかったから、これでも食べてよ」
「いいの? ありがとう」
「同い年なんだから、何でも言ってよね」
「はい。タレス君……」
「なぁに?」
「魔女の恰好みたい?」
「うーん、見たいけど、時間がある時でいいよ」
「わかった」
「そういえば、レオンさんとは、どこで知りあったの?」
「うん、冒険者ギルドで男に絡まれて、逃げ込んだ先のテーブルにいたの」
「へぇー、そんなんだ、よく絡まれるの?」
「うん、冒険者の人、ほとんど体目当てで近づいてくるの」
「じゃあ、レオンさんも?」
「たまたま、会ったせいなのか、そんなことはなかった」
「レオンさん紳士なんだね」
「あいつは紳士じゃない。あっ、今の無し無し」
(これ今のところは、上手く行っているんじゃね)
「レオンさんがいなかったら、僕ら会っていなかったんだね」
「そうね」
「あのね、僕ね」
「うん」
「ルイさんから、話を聞いた時、なんで僕なんだろって」
「うん」
「どうして、僕なの?」
「それは……」
「僕はね、初めての事で嬉しかったし」
「うん」
「賢者の人と会って、仲良くなりたいなぁって思っていたんだ」
「ホントに?」
「うん、だって、僕のジョブ」
「ジョブ?」
「賢者なんだ」
「えーー!」
「ははは、そうだよね、そうなるよね。だって賢者って物凄くレアだし」
「うんめい……」
「ソロンさん、もしよければ週一でもいいので会ってくれますか?」
ソロンは目を見開き、
「は、はい。よろしくお願いします。なんなら、週二、週三3でも」
「嬉しいな」
≪こちらレオン、ホシは楽しく歩いているようです≫
≪了解しました。尾行を続けてください≫
≪こちらレオン、ホシは嬉しそうにタレスの前でクルリと回っています≫
≪了解しました。尾行を続けてください≫
「じゃあ、今日はここまでですかね」
「そうですね」
「次、いつ会えます?」
「クエストのない日が三日後にあるので」
「じゃあ、その日にしましょ。集合場所はどこにしますか?」
「タレス君、学生だから、学園の正門あたりで」
「わかりました。あっ、魔女の恰好じゃない方がいいですね」
「??」
「あまり他の人に見て欲しくないので」
「はい! わかりました!」
「じゃあ、また、気を付けてね」
「ありがとう。タレス君も気を付けてね」
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