第5話 ドラゴン

 借りた家の部屋割りをした。ディーンはリビングでいいと言っていたが、疲労回復も考えて部屋の方が良いと説得した。


「リーダーの部屋はここね、決めといたから」

「サンキュー、ソロン。余計なこと考えなくてよかったよ」

「でしょー」

「でも、なんで壁に変なのが貼り付けてあるんだ? 二重に」

「これ、防音効果があるの」

「へー、そうなのか」

「リーダーの部屋、ルイが夜訪れるでしょ。その対策」

(あぁ、ルイのこと好きだよ。遊ぶのも。夜の方じゃなくて)


「聞こえてたわよね、ルイ」


 ルイは下を向いている。恥ずかしいようだ。

(そりゃ、そうだろ)


「わ、私、今夜、頑張ります」

「気持ちは嬉しいけど、無理しなくてもいいよ。俺は普通に遊べればいいから」

「レオン……」

「どうした?」

「初めてはレオンがいいの。ううん、レオンじゃなきゃイヤなの」

「リーダー、女の子にこんだけ言わせたんだから、覚悟を決めなさい」

(ソロン、お前なぁ)


「わかったよ。責任とるよ。ルイ」

「はい、不束者ですが、よろしくお願いします」


 その日の夜はとても素敵な夜だった、ルイの気持ちがとても嬉しかった。


 ◇


「なんか、音すごかったですね」

「そう? あたいは両親の見ているから、そんなこと思わなかったけど」

「あぁ、だから防音室作ろうって言ってたんですね」

「まぁ、全部は消せなかったけど、寝るのには十分ね」

「ん? ディーン君、どうしたの?」


 ソロンは頭を抱える。


「いい、ジャンヌ。あんた、いい寄られたことあったでしょ?」

「はい、何度も」

「男って、そういうことで興奮するの。ホント気をつけなさい」

「ボク、槍の型やってきます」


 そういってディーンは雑念を払うように八時間ほど型をやり続けた。

(ストイックだよね。彼、苦労人だし、すごいよ)


 ◇


「でだ、前衛は俺とディーン、場合によってはジャンヌも」

「はい」


「できればジャンヌは中衛にいて、ソロンを守って欲しい」

「基本陣形の応用だわね」


「ん? どうした、ルイ」

「あの、私もパーティーに入っていいですか?」

「「「「!!」」」」


「大丈夫なの? リーダー、戦力じゃないの入れると、守りきれないわよ」

「私、精霊術使えます」

「ルイは見えるだけじゃなく、使役できるってこと?」

「はい」

「リーダー、お試しでやってみて、ダメなら諦めてもらうのが本人納得するんじゃない?」

「そうだな、ジャンヌ、ディーンどう思う?」


「うちはアリかと」

「ボクは今めいっぱいなので、他人のこと言えないです」

「じゃあ、軽めのクエストやってみるか」


 ◆


「サラマンダー!」

「ノーム!」

「ウンディーネ!」



「ソロン、どうだった?」

「面白いわよ。攻撃がサラマンダー。ディフェンスがノーム。ウンディーネで回復させて、シルフは補助系。まだ、力不足は否めないけど、育てたら凄くなると思うわ」


 ◆


「私、パーティーに入れるんですか? やったー!」

「ええ、リーダーと相談したけど、理論と実践でいいんじゃないかって」


「よろしくお願いしますね。ルイさん」

「ジャンヌちゃん、こちらこそよろしくお願いします」


 こうして「剣聖騎士」は五人で活動することとなった。


 ◆


 「剣聖騎士」は基本週三回クエストを行うことにした。ルイの通学日とその前日は休み。ディーンも槍さばきが良くなり、馬に乗っても戦えることがわかった。

(ランサーって凄いね)


「このクエスト、うち、やってみたいです」

「遠征か……しかもAランクだぞ、これ」

「そうね、そろそろ、やってもいいんじゃない」

(これ、自信のないやつは、硬直して、いつも通りできなくなって、危険だぞ)


「じゃあ、挙手しよう。やりたい人」

「「「「「はい」」」」」

(全員じゃねぇか)


 ◆


 馬車に揺られ目的地に向かう。


「しかし、まあドラゴンが金鉱山に棲むとは」

「山道だから、徒歩で体力削られた状態で戦うのは、実力計るのにはもってこいね」


 ルイは俺の肩に頭をつけ、寝てる。ディーンは普通に座って寝ている。

(ポーター時代、どんだけ苦労したんだ? ディーン)


「うち、ドラゴン見るの初めてです。楽しみです」


 麓に到着。ここからは山登り。体力が削られていく。

(風の精霊使えるルイは消耗していない)


 来る魔獣はザコから手強いやつまでバラエティーにとんでいた。


「もう少しね」

「そうだな」

(ジャンヌとディーン、きつそうだな。前衛は俺だけになりそうか)


 ◇


『誰だ、この領域に踏みいれるものは?』

「喋った!」

「リーダー、想定してなかったの? 知能が高いんだから、ありえるでしょ」


「うち、いけます」「ボクもいけます」

「私も大丈夫です」


「ルイ、風のシルフ、ドラゴンの前まで飛ばせる?」

「はい」

「棲むところを移動してくれないか、聞いてみて」

「わかりました」


 風の妖精シルフは行く。



『精霊使いもいるのか。歯ごたえがありそうだな』

『お父ちゃんこわいよ~』

『父上、僕逃げたいです』

『大丈夫よ、お父さん強いし、いざとなれば母さん守るから』



「帰るぞ」

「「「「えっ」」」」

「だって可哀そうだろ、家族は大切にしたいだろうよ」

「リーダー、お人好し過ぎ、ホントなんの為にきたのか」

「実力計るの、登りの魔獣で十分わかったろ」



『ははは、面白いやつじゃのう、ワシと戦わんのか』

「あぁ、邪魔して悪かった」

『そうか、お前さんに渡したいものがある、何人でもいい、ここに来てくれ』


「あたいは無理、陣形崩れてるから、リスクが高い」

「他のメンバーは?」

「「「……」」」


「じゃ、俺行ってくるわ」

「待って、私もいく。レオンだけ行かせたくない」


 ◇


「来たぞ」

『あぁそこにある、鱗と爪を持っていきなさい』

「これか? これ、だいぶ量あるぞ」

『はえかわり抜け落ちたものだ、ここにあっても、邪魔になるだけだ』

「わかった持っていく」

『全部持っていけ、また溜まるからな』


 そして俺とルイは三往復して、全部貰った。


 ◆


「で、これ、どうすんの?下りはいいけど馬車に積める?」

「うち、考えがあります」



(歩いて帰るって、ジャンヌ脳筋だな。面白そうだし、いいか)


 ◆


 ルイは学校があるので、一足先に馬車で帰ることにした。そして、俺らは歩いてる。次の宿場町までこれた、十四時間の歩き、足がパンパンだ。早めに寝て、早朝出発。

 宿場町から宿舎町まで、歩き続けること四日、ようやく家に着いた。


「おかえり、レオン。みんな。心配したよ」

「あぁ、飯だけ用意してくれるか」


 そしてギルドでクエスト失敗の報告をして、夕食をとり、この日は皆すぐに眠りについた。


 ◆


「で、どうすんの、これ」

「どうしようね」

「ったく無計画にもほどがあるわ」


「あのー」

「ルイ、どうした?」

「ここから歩いて二日程の街に鍛冶屋さんがあります」


「それはいいアイデアね」

「どういうこと? ソロン」

「そこでドラゴンメイルを作ってもらえばいいのよ」


 歩く旅脳筋の旅はまだ続く。ジャンヌとディーンと共に。


 ◆


 街に到着。鍛冶屋へ。


「おう、坊主、何か用か?」

「この素材で鎧を作って欲しい」


 おっちゃんは目を見開き、


「これ、全部使っていいのか?」

「大丈夫。全部だ」


 まずは俺、そしてディーンと体のサイズをくまなく計る。ジャンヌは、


「うち、神官服のままでいいです」

(だよな)


 材料の量から二人分は無理だと推計されたので、ディーンの装備にする。一週間くらいでできるというので、それまで家で待つことにした。


 一週間後。俺とディーンで出来上がったドラゴンメイルを取りにいく。


「おう、出来上がってるぞ」


 おっちゃんから説明を受けた、まだ体が成長するので可変領域を作ったそうだ。それでも、きつくなったら残りの素材で修理してくれるそうだ。


「鱗と爪がたくさんあったから、緊張せずにできたよ」


 これで、ディーンは鎖帷子から卒業した。

(よく鎖帷子で粘ったな。特にダンジョン)


 ◆


 ある日のクエスト休養日。


「そうだな、夕方、ルイを迎えに行くか」


  俺は学園へと向かう、ゆっくり歩いてみると、森の作りだす空気や、鳥のさえずり、気付かなかった風景がそこにあった。


 学園に着き、ルイを探す。

(ル――、えっ)


 そこには楽し気に話しているルイと男がいた。

(マジか。俺に隠れて……)


 ◆


 気付いたら家に着いていた。


「で、おめおめと帰って来たわけだ」

「どうすればいいんだ」

「ったく、あんたとルイの仲なんだから、直接聞けばいいんじゃないの?」

「……、もしものことを考えると」

「ふぅ、しょうがないわね。代わりに聞いてあげればいいんでしょ」

「ソロン頼む」

「貸しにしとくからね」



 その日の夜


「ルイ、ちょっときて」

「なんですか、ソロンさん」

「あなた、仲良くしてる男いる?」

「えっ、レオンだけですよ」

「ふーん。そうなの、じゃあ伝えておくわ」

「?? どういうことですか?」

「今日ね。レオンが見たんだって、ルイと男が楽しげにしゃべっているのを」

「うーん。あっ! タレス君ですね」

「誰よ、それ」

「一、二年主席で三年の時は次席の子です」


 ソロンは鬼の形相でルイによる。ルイの肩を掴み。


「ルイ」

「は、はい」





「その子、紹介しなさい」

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