第4話
「『自分ならなんでもできる』なんていう馬鹿で愚かで滑稽な考え方を本気で持っていて、世の中に数人しかいない天才が、そんな馬鹿で愚かで滑稽な考え方を実現させて、それで僕たち人間は、人間全部が偉いんだって胸を張るんだ。オラウータンやチンパンジーやサルよりも偉いんだって。賢いんだって。………人間とサルたちの差なんて、言語があるかどうかぐらいの物妥当に。なぁ?馬鹿で愚かで滑稽で、何より………………愛おしいだろう?」
僕がにっこり笑うと、彼女はじいぃっと無表情で考え込む。ぷっくりした桜色のくちびるがむぐむぐと動いているのをどこか遠くの世界のことのように見つめながら、ゆっくり自分なりに咀嚼して噛み砕く彼女の純粋さに胸を刺されている僕は、やっぱり人間という馬鹿で愚かで滑稽な動物なのだろう。
『恋』なんていう『愛』なんていう無茶で無謀で無意味なものに人生を引っ掻き回されて、地位も名誉も財産さえも捨ててしまう。そんな馬鹿な動物なのだろう。そして、『真実の愛のために生きたのだっ!!』なんていう綺麗な戯言を吐き捨てる愚かな動物。『真実の愛』なんていうものが永遠だなんて僕は思わない。けれど、永遠であればいいと願っている。思っている。
「よく分かんない」
「分からなくていいよ。君は君のままの君だからいいんだ」
微笑みかけると、彼女は納得いかないといった雰囲気でほっぺたをぷくぅっと膨らませる。ハリセンボンみたいで可愛いなと思っていると、彼女は何もかもを諦めたように苦々しく笑った。
「あなたってとぉっても意地悪」
「そうだね。僕はどこまでも意地悪だ」
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