第7話

 俺は必死にデータを探った。

 スマホの中に入り込んだことなんて、もちろん初めてだから、勝手がさっぱりわからない。だけど、俺がここから出るには、やるしか無い。


 手あたり次第にデータを探っていると、やっと連絡先のデータにたどり着いた。

 どれもこれも、見覚えのあるヤツのデータ。

 確かに俺がここから出るには、誰かの体を乗っ取るしか方法はない。だからといって、乗っ取るのは誰でもいいかと言えば、それは違うというものだろう、心情的に。

 俺はこの時になって何故、田中が俺を選んだのかがわかったような気がした。


 話したこともあるし連絡先も知っているけど、普段そんなに接しないし、それほど親しくもないヤツ。

 それが、田中にとっての俺(おまけに田中は俺をバカだと思っていたらしい)。格好の相手だったという訳なのだろう。乗っ取ったところで、それほど罪悪感も持たなくて済むだろうし。


 だから俺も、俺にとってのそんな相手を探した。もちろん、田中以外で、だ。

 誰かいないか。

 この中にいるけど、たいして親しくもないヤツ……それでいて、うっかりアプリを開いてしまうくらいに警戒心が薄いヤツ。この際だ、男でも女でも年上でも年下でも構わない。


 そして……見つけた。

 あとはこの連絡先に当てて、俺自身を飛ばすだけだ。


 おい、そこのあんた。

 もしあんたのスマホに突然【DIGY】っていうアプリが入っていたら……分かるよな?

 いきなり削除なんてしないで、ちゃんと開いてくれよ?

 そして俺にあんたの全てを乗っ取らせてくれ。頼む!


 それにしても。

 本当に、見知らぬアプリには迂闊に触るもんじゃないな……どうしてるかな、俺を乗っ取った田中。うまく、俺として、中野達希として生活できているんだろうか……


 end

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