第78話 白濁の波
お風呂の中でお互いに体の好きな部位を一つだけ見せ合う。
それを提案したのは正直失敗だったのかもしれない、と後になって思った。
ゆぅちゃんがどれだけそういうイヤラシイ欲求を抱えているのかはわからないけど、少なくとも俺の方はこのお風呂イベントも相まって相当なところまできてた。
彼女が受け入れ態勢オーケーの合図を出せば、今すぐにでも突撃したい。
チェリーで経験なんて一つも無いけど、冷静に、理性的に、彼女の肌に触れたくてたまらなかった。
だからそういう意味で言えば、俺のした提案はその欲求を強くさせるだけのものであって解消には至らない歯がゆいものだ。
今から見せなければならなくなったお●ん●んだってとんでもないことになってる。
これは本当にどうしよう。
提案を撤回した方がいいんじゃないかとさえ思えた。
ケダモノ扱いされて、もっとゆぅちゃんの肌に触れられなくなるかもしれない。
『え。さと君……何でこんなことになってるの……? 気持ち悪い……』
とか言われたりして!
あぁぁぁぁ! そんなことになったら俺はもう死ねる! 死ぬしかなくなる! 屋上から飛び降りる!
タオルで視界を遮った状態で、俺は頭をガシガシと掻く。
自分の愚かさをこれ程に呪ったことはない。
面白カップル同士じゃん、なんて考えたのもほんの一瞬だ。
怒張した己のブツを確認するや否や、そんな楽観的な考えは即座に吹っ飛んだ。
ゆぅちゃんもまだ俺に背を向けたまま。
互いに見せ合う部位を言ったのはいいものの、二人して見せつける踏ん切りがつかない。
大っぴらにする勇気が出ず、沈黙のまま時が流れていた。
彼女の背中はもじもじした動きを見せている。
濡れたタオル越しからもそれは確認できた。
どうしよう。いったいどうすればこの状況を問題なく切り抜けられる。
「……さと……君……?」
「――! はぃぇ!」
グルグルと色々なことを考えていると、虚を突くようにゆぅちゃんが俺の名前を呼んでくる。
思わず変な声で反応してしまった。裏返りまくりだ。
「そ、その……じゃあ……さっそく……」
「っ……!」
「い、いい……かな……?」
タイミングよく視界を遮っていた濡れタオルがずり落ちる。
俺は緊張と動揺でポカンと口を開けるだけ。
けれど、その目には確かにシルエットだけじゃない肌色のゆぅちゃんが映っていて、口から飛び出すんじゃないかというほどに心臓はバクバク跳ねまくっている。
鼻の奥の辺りもキュッと痛み、血が出るんじゃないかと思うほどだった。
たぶんこれ、鼻血の出る前兆だ。
ヤバい。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。
「んっ……」
ゆぅちゃんがこちらへ体の正面を向ける。
タオルと手で隠している胸の部分を、震えながら開示させようとしていた。
「ま、待って!」
俺は反射的に声を上げ、彼女の手を抑える。
が、勢い余ってその手ごと自分の手をゆぅちゃんの胸に押し付けてしまった。
「――ごごご、ごめんっ!」
謝りながら手を離すも、場の空気はもはや簡単にどうこうできるものではなくなってる。
ゆぅちゃんの顔は真っ赤で、俺の顔もたぶん真っ赤。
湯船に浸かってないというのにのぼせそうだ。
同時に眩暈もしてくる。
してくるのだが……この日のゆぅちゃんは半端じゃなかった。
こんなものでは終わらない。
「……っ……!」
「んへっ!?」
突然、そっと俺の胸に体を預けてくる。裸のまま。
彼女の胴からはタオルがはらりと落ち、完全に肌と肌が密着する形となった。
温もりが、感触が、ゆぅちゃんのすべてが伝わってくる。
一瞬、天国への階段のようなものが見えた気がした。
俺は今日死ぬのかもしれない。
素直にそう思った。もはや彼女の体を押し退ける力も意思もない。
理性などかなぐり捨て、大人しく欲望に従う自分がそこにいた。
突っ立って、ゆぅちゃんからの裸ハグを受け入れている。
ついでに言うと、下半身のアレも凄まじい戦闘態勢。
当てるな、という方が無理だった。
白い柔肌に突き刺さるみたいにして、思い切りゆぅちゃんの下腹部を押し返していた。
上半身は触れ合ってるのに、そのせいで下は密着しきることができない。
俺は恥ずかしさのあまり顔を抑えた。
もう好きにしてくれ。どうにでもなれ。
「……さと……君……す……すごいぃ……」
「――ッッッ!?」
切なげな表情と上目遣い。
そして、グイグイと押し付けられる下腹部。
もはやヤバいという領域を超えている。
何のプレイなのかもわからない。
頭もくらくらしてきた。
「ゆ、ゆぅちゃっ……!」
「こ……こんなに……硬くて……ビクビク……跳ねて……私のこと……押し返して……」
「あ……! あっ……! あぁぁっ……!」
動かないで。
その言葉が出て行かない。
意識も何もかも、限界に近かった。
「これが……さと君の……さと君のぉ……!」
「だ、だめっ……! ほんとっ、だめっ! ゆぅちゃん!」
「男の子の……一番……弱いところ……!」
「あぁぁぁぁっ!」
刹那。
俺の脳はバチバチとスパークし、白濁の波に意識を持って行かれた。
膝に力が入らなくなり、その場に倒れたのは覚えてる。
ゆぅちゃんが必死に俺の名前を呼んでいたのも。
でも、俺はそこから完全に眠りについてしまった。
苦しさとか、不快感はない。
あったのは、ひたすらに気持ちいい感覚。
突き抜けるようなそれは間違いなく事故みたいなもので。
俺は罪悪感を軽く覚えてしまっていた。
【作者コメ】
今日これからせせら木はBANされるかもしれません。皆さん、お元気で。
というのは冗談として(お願いだから冗談であって。BANは嫌だよ。)、表現できる限界に挑んだ回なのですが、キャラとキャラの極限までに愛し合うシーンや、交わり合いを書きたいなと思い、その欲求がどうにも抑えきれません。
色々考えた結果、本作のみならず、他作品のR18話を『ファンティア』というサイトにアップしていこうと思ってます。
急ではありますが、後日また近況ノートにて詳しいことはお話ししますので、よろしくお願いします。
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