第15話 陽キャの園から始まる一日

 そんなこんなで三人集まり、俺たちはまず駅前からファッション街の方へと向かった。


 もちろんだが、最初からそこへ足を延ばそうとしてたわけじゃない。


 俺なんかは、『行くとしても雑貨屋さんか何かかなぁ』なんて平和に考えてたわけだ。適当に話合わせとくかぁ、みたいに。


 そしたらどっこい。


 行き先はまさかの陽キャの園。ファッション街て。


 行き交う人々の着てる服やら髪色やら、もう何から何までキンキラキンの派手派手派手。オシャレオシャレオシャレ。


 隣を歩いてる月森さんと冴島さんはそんな人たちと互角以上に渡り合えるほどのファッションスタイルで、なおかつ外見もいいことから戦えてるけど、俺はもう完全に瀕死状態。


 襟付きTシャツにチノパンという結構爽やか系を意識した(嘘。妹に選んでもらいました)恰好だったのだが、それでもダメっぽかった。もっと顔が良かったらいいのかね……。わかんないや……。


「そんでさ、名和くんやい。君は普段どゆとこで服買ってる?」


「……え?」


 死にかけの顔をしながら二人について行ってたら、突然キラーパスを頂いた。


 頬を冷や汗が伝う。


「男の子のファッション事情って何気にあんま詳しくなくてさー。兄も弟も彼氏も現在いないもんでね。えへへー」


「で、でもその、友達とかは……」


「あー。いるにはいるけど、あ奴らにあんま服どこで買うかとか聞いたことないんだよね。よくよく振り返ってみたら。ね、雪妃?」


「うん。私はそもそもあんまり質問自体しないし。普通の会話はするけど」


「そういうとこじゃないの~? もっと質問はすべきー。智也も言ってたでしょー? 月森にもっと興味持ってもらえるような男にならねばーって」


「そんなこと言われても……」


「言い訳はダメっ。ほらほら、名和くんも何とか言ったげてこの子に。男子にもっと興味を持ちましょう。何なら俺に夢中になってもいいんだぜ? って」


「言わないから、そんなこと……」


 俺が呆れながら言うと、冴島さんは楽しそうに手を叩いて笑い、月森さんは謎にこっちをジーッと見て来てた。いや、ギャグ待ちされても困るからね。絶対言わないから。


 てか、俺に夢中になんてなったら月森さんの親御さんが泣いてしまう。完全に道踏み外すことになりますよ、ほんと。


「ならさ、ならさ、雪妃。私に夢中になってみたらどう?」


「へ?」


「私、男装したげるよ。あんまり熱入れ過ぎちゃダメだよ、子猫ちゃん。とか言って」


「それなら全然いい。むしろそれでいい。本物の男子は……一部の人を除いて、今は大丈夫だから」


「え~ほんとぉ~? なら本気でやっちゃおっかなぁ~。てか、一部の人って誰のこと? めちゃ気になるんですけど」


「べ、別に。気にしなくていいよ」


「えー! 気になるじゃん! 誰ー?」


「だ、だから気にしなくていいんだってば」


 じゃれ合いながら歩く二人を見つつ、俺は安堵しながら歩を進めるのだった。


 ほんと危ねぇ……。さっきの服普段どこで買ってますかって質問、横道に逸れてくれて死ぬほど助かった。


 なぜなら、俺の服は基本的に妹と母さんが選んで買ってきてくれてるから。


 そんなの絶対言えるわけない。言えるわけがないんだ。











【作者コメ】

帰って来ました(汗)

これでしばらくはまたカクヨムの方に投稿しつつやっていきます!

今話はリハビリ回であり、伏線回でもあります!

そもそも伏線って言っちゃダメな気がするけど、どこが伏線なのか言わなきゃバレないバレない!

そんなわけで、またよろしくお願いしますね! ではでは~

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