第51話ゴールド枢機卿視点2

 

 結果から言うと大丈夫じゃなかった。


 部下からの続報によると、神殿の地下牢には幼い子供が鎖に繋がれて監禁されていると言うじゃないか!!しかも、村人達から虐待を受けているという証言も上がってきた!!!

 何じゃ、そりゃ!? 一体どういう事だよ!?

 しかも子供は五、六歳くらいの幼児との報告……。

 おいおい、いくら何でも幼すぎ!!

 一体いつからそんな状況だったんだ。その前に何で子供を監禁して虐待していたんだよ?意味不明。理解不能。


 これは早急に対処しなければマズいね――と思った。


 その国の権力者に話を通すべきか、とも考えた。でもねぇ、こういった村関係は国の力が届き難くて放置されていたりする。国と国の国境からはかなり離れているのも原因なんだけど、それにしてはもう酷い。酷すぎて言葉がでないよ。


 聖王国から使者を送り対策を取るように促した。

 それ以外に方法ってないんだよね。


 フランも呆れてた。



『外からアクションを掛けた方が動きやすいでしょう』


『誰だって国の恥を外には出したくないもの』


『聖王国の言葉を無視する事はないでしょう』



 なんて言いながら同意してくれた。

 そして使者を遣わすことになった。でも、多分……その村はもうダメだろう。

 どんな理由があるにせよやっている事は犯罪だ。その証拠を神殿の地下に隠していると報告したし……まぁ、証拠が無くても同じように処理されただろうけどね。その村の関係者達は、もう「終わり」だろう。後はあの国の人間がどう対処するのか見モノだよね。

 しかしなぁ~、こんな犯罪って本当に起きるんだね。しかも聖女見習いが滞在する村で起こるだなんて――ついてないよねぇ?



  それからさらに数日後、神殿の地下にある隠し部屋と地下牢を調べた結果を知らせに来た部下から驚愕する報告がなされた。

 なんとその女児は「聖属性」の持ち主だという!

 何、その子……神の子じゃん。正確には「神の愛し子」。……今の時代にまだそんな存在が居たんだ。希少種だよ、ほんとに。

 そんな子を監禁とかあり得ない……。

 しかも、その地下牢はがあったらしい。


 おいおい、何?それ!?


 そんな重要な案件が隠ぺいされているなんて――この国大丈夫? あ、そういえばこの神殿って旧時代の遺跡なんだっけ?ヤバくない?え?その女児を村から移動して本当に大丈夫?……聖女一行は速やかに村から立ち去った方がいいねっ!


 イリス達は女児の保護を名目に村を後にした。

 ただし、イリス達が村から出た瞬間に村が壊滅してしまった。


 やっぱり!!


 村全体が湖になったって何だよ!?



 その後がもう大変だった。

 これは後から解った事だけど、村は元々水神を祀っていたらしい。

 多分だけど女児は「水神の巫女」の家系だったんじゃないかな?千年前はそういった「巫女の家系」は珍しくなかったしね。で……そんな村は元々あった水神信仰を止めてしまったわけか。

 まぁ、巫女がいれば水に関しては何の問題もない。

 最初は有難がられていても年月と共にそれが「あたりまえ」と受け止められていくのもまた人間社会ではよくある事だ。残念だけどね。


 それでも「巫女」っていうのは誰でもなれるものじゃない。力を使いこなせるように修行する必要がある。保護された女児は強い「聖気」持ちだと判明した。



【女児たちのはが、その力はです――】



 興奮しきった部下からの報告書。

 若干、字の乱れがあった。



 【女児たちを聖王国へ移送致します――】



 ここに来るんだ。

 まぁ、妥当な線だろうな……。



 それにしても力がコントロールできない……か。


 

 きっと赤ん坊の時なんか無意識に力を使ってたんじゃないのかな?報告書には親は女児が二歳の時に死んでいるとある。恐らく、親から受け継いだ力だったんだろう。親が生存していればこんな目には合わなかった筈だ。コントロールできない子供の力を押さえられるのはその親だけ。


 両親共に親族なし。


 最悪のパターンだ。

 親が死んで直ぐに神殿の地下牢へ閉じ込められていたわけだ。

 まぁ、普通の人間からすると幼児が泣いただけで洪水が起こる程の大雨が降ったり、台風クラスの暴風雨が襲ったりといった事が起これば怖い。

 そりゃ、「バケモノ」とか「悪魔付き」とか言われるのは仕方ないね。村ぐるみだったわけだし……。うん。村が湖の底に沈んだのも村人が一人残らず死んだのも自業自得って奴だ。信仰を忘れずに女児を大事にしていれば恩恵もあったんだろうけどねぇ。


 今まで恩恵をタダ同然で貪っていたツケだ。

 仕方ないよね。

 神様を怒らせちゃったんだから。


 ほんと、馬鹿な事をしたもんだ。





 


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