第52話困った子

 私のイリスは良い子。

 優しい良い子。


 ただ、拾い癖があった事は知らなかった。


 正直、今もイリスが聖女になる事には反対だった。

 それというのも聖女になれば嫌でも神殿関係のあれやこれやに巻き込まれるから。

 それがイリスにとって良い結果を招くとは到底思えない。良い未来になるとも思えなかった。


 イリスが保護した女児。

 見るからに虐待されたと思われる女児が私の所に来たのはそれからすぐで、その頃にはもうイリスは別の国に赴いていた。


 そしてイリスからだという手紙。


 私はその中身を読んで頭が痛くなった。女児を聖王国で保護して欲しいという内容に正直頭を抱えたけれど。イリスは私が反対したところでその意思を変える事はないのだと知っていた。だから私が折れる事にした。

 いつもは聞き分けの良い子なのに……妙なところで頑固なのよね。


 ただね、イリス。


 どうして次から次へと拾い物をしてくるのかしら?


 次は「聖獣の子」ってどういう事!?


 そう、イリスの保護活動は女児に留まることは無かった。

 なにかしら?

 聖女の巡礼というよりも希少種の保護活動になっている気がする。どうしてかしら?


 私の目が行き届いていないところで今度は何を拾ってくるのかしらね!?


 不安だった。

 そしてその不安はその後も続くのだった。


 もう既に悟りの境地。

 イリスはきっとこれからも何かしらの問題事を引っさげながら私の所に帰ってくる。

 そんな予感がする……私の予感って外さないのよね。


 イリスが帰って来るまでに色々と片付けておきましょう。

 運の良い事に聖王国に滞在している枢機卿が二名もいるのだから。

 彼等の力を借りれば何とかなりそうだわ。権力の乱用?私物化?なんとでも言うと良いわ。


 これは聖王国にとって必要な事なのだから!!


 変な言い掛かりを付けられない様に先手を打っておきましょう。

 ふふふ。他国がイリスの力を欲しようと画策しているという報告は既に受けているのだから。利用しようと計画を練っている事もね!忌々しい事にその中に、あの枢機卿団も含まれていた。彼等は、特にあの老害共はイリスの力を利用しようとするだけならまだしも悪巧みも考えているのだから油断なんてできる筈もない。

 こちらにいる枢機卿二人の協力もあり、ちょっとした騒動はあったけれど何とかなったわ!!


 後はイリスが帰還するのを待つばかり。


 一ヶ月後には帰国するという手紙をもらったの!

 やっと帰ってくるのよ!

 可愛い姪っ子の帰国を喜んでいた私は知らない。


 イリスが私の跡大聖女を継ごうと考えていた事を。

 そのために二人の枢機卿を味方につけた事を。


 私は何も知らないでいた。


 そしてそれは、そう遠くない未来での事。


 その数年後、私は姪が起こした「とある事件」の顛末に驚愕して言葉もない程に驚かされてしまうのだけれど……それはまた、少し後のお話だったのです。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る