第6話国王視点4
「まぁいいわ。私も王妃の景気の悪い顔など見たくないもの。王宮のフランソワーズの部屋だけど、今日中に撤去させるわ」
「今日!?」
「そんなに驚かないで頂戴」
「ですが姉上。今日中に撤去など。もう少し落ち着いてからでも」
「落ち着いた頃になれば王妃が復活するかもしれないでしょう。あの子は息子の王太子を溺愛しているのよ?公爵家に養女を迎え入れないかとアホなことを言わないとも限らないわ。そんなことを聞けば今度こそ私はあの子とその息子をどうするか分からなくてよ?」
「……わかりました」
「それと、王太子との婚約にかかった費用……。この際はっきりと言った方がいいわね。そうでなければ貴方は兎も角、王太子は理解できないようだもの」
「はい」
こうなれば致し方ない。
ちらりとクロードを見ると訳が分からないといった表情だ。どうしてそう分かり易いのだ。本当に王太子教育はどうなっている?
「クロード、よく聞きなさい。今、王家には金が無いの」
「……はっ?」
「もっと言うのなら王妃の
「…………え?」
「どうして金がないのかというとね、早い話が投資に失敗したからよ。王妃の実家は宮廷貴族。数年前に代替わりした侯爵は頭が良いだけの仕事ができない人間だったわ。それでもね、投資家としては優秀だったのよ。一時は資産が王家を抜いた事もあった程にね。それに目を付けた王家が自分達もと投資を始めたわ。まぁ、最初は良かったのよ。上手く行けば王家の貯蓄を倍にできると思っていたらしいから」
「…………」
「でも、結局失敗したわ。借金がなかっただけマシだったけど。それでもかなりの損害が出てしまったわ。そんな時に、小麦の高騰が起こったのよ。王家の予想を超えるほどにね。そこで王家は残った資産を売り払ってなんとかしようとしたの。でも焼け石に水。王都以外の土地や建物を売ってどうにか凌いだものの、王家の財政状況は一気に悪化したわ」
「そ、それでは……」
「財政を取り戻せるにはかなりの期間が必要になるということ。それでも王族をみすぼらしい姿でいさせる事はできない。なので次期王妃に私の娘が選ばれたという訳よ。モンティーヌ公爵は筆頭公爵家というだけじゃないわ。国一の資産を持っているし、私の母はフランリーグ王国の王女、夫の母はシュヴァイン公国の公女。フランソワーズには三つの国の王家の血が流れているの。王家は資金援助と二つの国の後ろ盾を得ることにも繋がる。一石二鳥どころの騒ぎじゃないわね。まぁ、公爵家に方にも特に断る理由はなかったから婚約を許可したというわけよ」
「……」
「今、貴方達王家が以前のように金が使えるのは公爵家が援助していたから。貴方がその小娘に貢いだ金は公爵家のお金なの。日々の暮らしでカツカツ状態の王家に婚約者への贈り物なんて出来ないわ。実にバカバカしい話だけど面子というものがあってね。形だけでも取り繕わないといけないという訳。分かったかしら?クロヴィス、貴方の息子との婚約に際してかかった王太子費用については弁護士に任せるわ。婚約したその日まで遡って請求するわ。いいわね」
「はい」
私としては姉上たちの要求は全て呑むつもりだ。王太子費用は勿論だが、それ以外についても。クロードは驚く事ばかりだったのだろう。顔面蒼白で言葉がでてこないようだ。
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