第16話 VS凍結竜

 扉を開けた先には、1体の巨大なモンスターが鎮座していた。

 透き通るほどの純白な鱗を全身に纏い、黄色く鋭い眼でこちらを見つめてくる。

 その眼光はまるで、自分と戦いに来た獲物を品定めするかのようだ。


 あのモンスターの名前は凍結竜アイスバーンドレイク

 氷魔法を自由自在に操る、翼を持たない竜――すなわち氷の地竜だ。


『グルルゥゥゥ』


 凍結竜が唸り声を上げると同時に、その口から白い吐息が零れ出る。

 あの吐息には凍結の性質が含まれているため、素の状態で触れてしまえば一瞬で氷の結晶にへと変貌することになるだろう。


「纏炎・拡大」


 そこで俺は、身に纏う炎の熱量を一気に高めた。

 魔力消費は通常の数倍になってしまうが、こうでもしないとそもそも向き合うことすらできないのだから仕方ない。

 とはいえ、いつまでもこの状態でいたらすぐに魔力切れを起こしてしまう。

 コイツ相手には、一瞬で勝負をつける必要がある。



「さあ、短期決戦といくか」

『ッッ!? ガルゥゥウウウウウ!』



 そしてとうとう、戦いの火ぶたは切られた。

 地面を蹴りまっすぐに向かってくる俺を見て、凍結竜は追い払うように全力で氷の吐息アイス・ブレスを放ってくる。


「術式変換――【炎の大盾フレイムウォール】」


 纏炎だけでは凌ぎきれないと判断した俺は、炎の壁を生み出す中級魔術・炎の大盾フレイムウォールを前方に発動したまま突っ込んでいく。

 数秒の拮抗があった後、俺は無事に氷の吐息アイス・ブレスを突破した。


『グルゥ!?』


 まさか真正面から突破されるとは思っていなかったのだろう、凍結竜は戸惑ったような声を漏らしながら、一歩だけ後方に下がる。

 だが、それは愚策。


 俺は纏炎の一部を後方に放射することによって、その反動を利用しさらに加速する。


「甘いな、その一瞬の隙が命取りだぞ」

『――――ッッッ!?』


 そして勢いそのままに、炎を纏った拳で凍結竜にラッシュを浴びせていく。

 凍結竜の冷たく硬質な鱗も、炎の熱量の前では紙装甲も同然。

 次々と俺の拳は凍結竜の胴体に突き刺さり大ダメージを与えていく。


「――まだだ」


 しかし当然、それだけで終わらせたりはしない。

 炎の放射によって加速させた右拳を、真下から凍結竜の胴体に減り込ませる。


「はあッ!」


 そしてそのまま凍結竜の巨体を上空へを吹き飛ばしてみせた。

 まるで炎の獅子イグニス・レオと戦った際の再現だが、あの時と違う点が一つ。

 このボス部屋はフィールド型エリアということもあり天井が存在しない。

 そのため、炎の獅子イグニス・レオのように天井を足場にして反撃するような真似はできないのだ。


 ただただ空中に浮かび上がった無様な獲物それを見上げながら、俺は巨大な術式を展開する。


「残念だったな。翼のない竜など、ただのトカゲと変わらん」

『――ッ! バウゥゥゥウウウウウ!!!』


 最後の抵抗とばかりに、極限まで凝縮された氷の吐息アイス・ブレスを放ってくる凍結竜。

 いいだろう、全力には全力で返すのが礼儀というもの。



「術式最大開放――【ジオ超越せし炎槍アルス・フレイム】」



 そうして放たれた巨大な炎槍は氷の吐息アイス・ブレスを霧散させ、そのまま凍結竜の巨躯をも貫いた。

 属性的な相性もあるが、魔力操作の練度が全く違う。

 この結果は当然だった。


『グ、グォォォオオオオオ』


 体に大穴の空いた凍結竜は、断末魔を上げながら地面に落下していく。



『レベルアップしました』

『レベルアップしました』

『レベルアップしました』

『レベルアップしました』

『レベルアップしました』

『レベルアップしました』

『レベルアップしました』



 そして俺の勝利を証明するように、怒涛の勢いで鳴り響くレベルアップ音。

 かくして俺は、無事に【氷風の雪原】のエリアボス・【凍結竜アイスバーンドレイク】の討伐に成功するのだった。



「さあ、本番はここからだ」


 凍結竜を倒したことを喜ぶのもほどほどに、俺はボス討伐によって出現した魔水晶のもとに向かう。

 今回の目的は凍結竜を倒すことではなく、望んでいる報酬を手に入れることだ。

 これを達成できなければ何の意味もない。


 魔水晶に触れると、ボス部屋いっぱいにシステム音が響きわたる。



『エリアボス【凍結竜アイスバーンドレイク】の討伐を確認しました』

『特別報酬が与えられます』

『以下の三つの報酬から一つを選択してください』



 直後、魔水晶の前には三つの報酬が出現する。


 一つは刀身が氷でできた美しい長剣。

 一つは先端に氷の宝石が埋め込まれた杖。

 そして最後の一つは、表紙に水色の文様が施された魔導書だ。


「うん、目的のものはちゃんと残っていたみたいだな」


 その中から俺は迷うことなく魔導書を手に取る。

 すると次の瞬間、残る二つは一瞬で消え失せた。

 そう。見て分かるとは思うが、ここの報酬は早い者勝ちであることに加え、複数の選択肢から一つしかもらえない。

 俺にとって一番重要なものをもらえたから全く問題はないけどな。


「それじゃ、さっそく魔導書を読むとするか」


 魔導書を読んでいくと、文字を構成する魔力がほどかれていき、どんどん俺の体に流れ込んでくる。

 こういう経緯を経て、対象者に新しい力が与えられる仕組みになっているのだ。


 その証拠に――



『対象者にスキル【魔力凍結Lv1】が与えられます』



 ――システム音もまた、俺が新しいスキルを入手したことを伝えてくれていた。


「よし! これで目標通り、魔力凍結を使えるようになったぞ!」


 俺は自分のステータスを確認しながら、心からの満足と共にそう叫んだ。

 さあ、これでようやく魔道具作りに入ることができる!



――――――――――――――――――――


 LvUP↑

 神蔵 蓮夜 20歳 レベル:37

 職業:なし

 攻撃力:125

 耐久力:121

 速 度:127

 魔 力:130

 知 力:130

 スキル:上級魔術適性(火)Lv3、魔力凍結Lv1


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【大切なお願い】


いつも本作をお読みいただきありがとうございます!


連載を開始してから早一週間が経ちますが、皆様の応援のおかげで、本作が【現代ファンタジー】週間ランキングの57位にまでくることができました。

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