第15話 隠しエリア【氷風の雪原】
――【エクトール中級ダンジョン浅層】――
エルトールダンジョンにやってきた俺は、過去の記憶を辿りに迷宮の中を突き進んでいく。
今は道中に出てくるモンスターを相手にしている余裕はないため、遭遇した際には全速力で走って撒いたりもした。
「よし、ここだな」
そんなこんなでダンジョンを進むこと30分。
俺はようやく目的地にたどり着いた。
目の前にそびえ立つダンジョンの壁を見ながら、俺はポツリと呟く。
「見たところ、まだ誰もこの仕組みには気付いてなさそうだな」
ここは一見しただけでは、何の変哲もない一般的な通路にしか見えない。
しかし感知能力に優れた者がじっくりと調べれば、壁の一部で魔力が揺らいでいることが分かる。
あとはそこに火魔術を浴びせてやれば――
「
壁にファイアボールを当てると、瞬く間に壁が解けていき穴が生じる。
俺は迷うことなく、その穴の中に足を踏み入れた。
途端に、冷たい風が肌に吹き付けてくる。
さらにこれまでの殺風景な景色からは一転し、眼前にはどこまでも続く雪の大地が広がっていた。
この先にあるのは一般的な洞窟型エリアとは違う、フィールド型エリア。
――すなわち、隠しエリアだ。
――【エルトール中級ダンジョン 隠しエリア:
「まさか俺が誰よりも先に、この隠しエリアに足を踏み入れることになるとはな」
雪原の中を歩きながら、俺は感慨深くそう呟いた。
この場所は、極寒の地であるエルトールの気象をもとに作られた隠しエリアだ。
ただ以前にも言ったように、そもそもエルトールダンジョンは冒険者の人気がなかったため手つかずの状態となっており、設計時にこの隠しエリアを設けていたことすら今の今まで忘れていた。
「探索者の多い
残念な気持ちもあるが、今回に限ってはそのおかげで俺は真っ先にこの隠しエリアを踏破できる。
その恩恵をありがたく頂戴するとしよう。
「……ところで、このままだと冷えるな」
そんなことを考えながら歩を進めていると、やはり肌寒さを感じてしまう。
氷風の雪原という名前通り、この隠しエリアは非常に寒い。
防寒具の一つでも持ってきていなければ、一般人は10分すら滞在することはできないだろう。
だが、俺にとっては特に問題ない。
「術式変換――【
基本的には攻撃力と耐久力を高めるための魔術だが、こういった応用もできるのがこの魔術の便利なところだ。
さて、そんなことを言っているとさっそく――
『グォォォオオオオオ!』
「シュゥゥウウウウウ!」
「ふむ、来たか」
目の前に2体のモンスターが出現する。
氷の鎧をまとった巨人――【アイスゴーレム】と、白い鱗が特徴的なトカゲ――【コールドリザード】だ。
隠しエリアに出現するモンスターなだけあって、雑魚的ながらなかなか強力なのがコイツらの特徴だ。
とはいえ、決して
せいぜいがブラッディゴーレム止まりだろう。
さらに今回に限っては、俺にかなりのアドバンテージがある。
「極寒の地に生息する身で、炎を纏った相手に挑もうとは――その心意気だけは認めてやる」
『グウゥゥゥ!?』
「シャァァァ!?」
俺は身体強化を使い一瞬で2体に接近すると、炎を纏った拳で次々とその装甲を撃ち抜いていく。
2体はほとんど抵抗することもできず、俺の殴打によって一方的にやられることしかできなかった。
氷の属性を持つモンスターにとって火属性の魔術は最大の弱点。
コイツらにとって、今の俺はまさに天敵といえるだろう。
「討伐完了っと」
一分足らずで2体を倒した俺は、満足しながら一つ頷く。
「この調子なら順調にボス部屋までいけそうだな」
◇◆◇
『レベルアップしました』
『レベルアップしました』
それから隠しエリアを進むこと2時間。
道中のモンスターは纏炎で倒しつつ、時には戦闘を回避しつつ、ようやく目的地にたどり着くことができた。
「改めて見てもでかいな」
眼前にそびえ立つのは、氷でできた巨大な扉。
扉の先にいるのは、この隠しエリアを支配するエリアボス――
凍結竜は
ここまでの攻略で俺のレベルは28→30に上がったが、それでもレベル的にはまだまだ格上だ。
「だからといって苦戦してやる気はないけどな」
戦闘の準備を整えた俺は、その重々しい扉に手を当てて魔力を注ぎ込む。
「いくとするか」
そして俺は、開いた扉の中に足を踏み入れるのだった。
――――――――――――――――――――
LvUP↑
神蔵 蓮夜 20歳 レベル:30
職業:なし
攻撃力:101
耐久力:99
速 度:103
魔 力:106
知 力:106
スキル:上級魔術適性(火)Lv2
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