第11話 ダンジョンの仕組み

 炎の獅子イグニス・レオを討伐し地上に帰還した後、なぜか優斗や緋村が、雫によってボコボコにされていた翌日。

 俺はさっそく中級ダンジョンに潜っていた。


「グルルゥ!」

「きたか――せいっ!」


 ダンジョン内を探索する俺の前に現れたのは、額に角を生やした鳥のモンスター【ホーンバード】の群れだった。

 炎の獅子イグニス・レオどころかブラッディゴーレムにも劣るそのモンスターたちを、俺は一瞬で燃やし尽くしていく。


「うん、さすがにこの程度じゃ相手にすらならないな」


 そんな感じで、出現するモンスターを討伐するだけで約半日が経過した。



『レベルアップしました』



 ある程度の探索を終えた俺は、ステータス画面を見ながら一息つく。


「半日戦い続けて、上がったのは1レベルだけ……それに中の様子を確認してみたところ、どうやらこのダンジョンは外れみたいだな」


 俺がこう判断したのには幾つか理由がある。

 ここで少し、ダンジョンの仕組みについておさらいしよう。


 今、俺が挑んでいるのは中級ダンジョンなわけだが、初級ダンジョンを攻略した者が全員同じ場所にいけるわけではない。

 初級ダンジョン同様、中級ダンジョンは幾つも存在する。

 そんな中、初級ダンジョンのボスを倒すことで、数ある中級ダンジョンのうち一つに繋がる転移結晶が与えられることになっているのだ。


 その点から、今の状況を考えると――



「ここは【エルトール】の地に作った中級ダンジョンで間違いなさそうだな」



 エルトールは極寒の地ということもあり、そもそも挑戦者が非常に少ないダンジョンだった。

 そのためダンジョン内のシステム改修が行われておらず、大した報酬が置かれていない。

 ――すなわち、時代に取り残された外れダンジョンなのだ。


「いやまあ、俺以外の普通のシーカーならその限りじゃないし、必要なスキルなんかも得られるとは思うけど……俺が望む魔導書なんかは置いてないんだよな」


 うーん、現時点で思いつく案としては、さっさと中級ダンジョンのボスを討伐して上級ダンジョンに挑むことだろうか?


「……いや、中級のボスを討伐するには、さすがに今の魔力量じゃ厳しい。それにここエルトールはともかくとして、他の中級ダンジョンには今の俺が持っておきたい魔術適性なんかがあるはず。上に挑む前にそれらを回収しておきたい」


 となると、解決策は一つしかない。

 他の中級ダンジョンに挑むための転移結晶を手に入れるのだ。


 ボスを討伐して入手できる転移結晶は1人につき一つだけなため、俺が他の初級ダンジョンを攻略したとしても意味はない。

 しかしダンジョンによっては、他の同クラスダンジョンへ転移できる結晶が置かれている場合がある。

 それを手に入れれば、問題なく他の中級ダンジョンに挑めるはず、なのだが……


「そういや、エルトールダンジョンに転移結晶を配置した覚えがないな」


 これは大魔王にふさわしくない、まさかのやらかしだ!


 まずい、このままでは他のダンジョンに転移することができない。

 誰がこんな杜撰ずさんな仕組みを考えたのか。全く、製作者に心からの罵声を浴びせたい気分だ!


「……いや、待てよ」


 ここで俺の脳裏に、あるダンジョン配信の記憶がよぎった。

 確かダンジョン内で獲得した転移結晶は、探索者ギルドで売買の対象となっているはず。

 そこで目的のものを買えば、俺が望んでいるダンジョンにもいけるはず!


「よーし、そうと決まればさっそく行動だ!」


 元気がいっぱいになった俺は、出てくるモンスターをことごとく倒しながら帰路につくのだった。



『レベルアップしました』



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 LvUP↑

 神蔵 蓮夜 20歳 レベル:28

 職業:なし

 攻撃力:95

 耐久力:93

 速 度:96

 魔 力:99

 知 力:99

 スキル:上級魔術適性(火)Lv2


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