記録1:祠と解けない雪②

「で、どうだ?」

「はぁ。どうだ、と言われましても……」

 火戦初芽は溜息をついて、もう一度パソコンの画面を見つめる。何から何まで胡散臭い雰囲気しか感じない。もっと言うなら、ブログのアクセス数欲しさに、奇妙奇天烈なことをやっているだけに思える。どうだ、と意見を求められても、特別感想など出てこない。

 しかし、それをそのまま言ったところで、目の前の先輩、都々森冴子は聞く耳を持たない。彼女の中で答えは決まっていて、初芽はそれに従うだけだ。時々、どうしてこんな先輩に付き合っているのかと、自分でも分からなくなる。

 冴子のオンボロパソコンは、折りたたむための接続部分が馬鹿になっている。上部の画面を左手で支え、見やすい位置をキープしないとまともに使えない。早く買い替えれば良いのに、と初芽は見る度に思う。

「このブログ、怪しさ以外の何物でもありませんよ。自分の妄想を書いてるだけです」

「なっ、オカルター雅樹先生に失礼だぞっ! 謝れ。馬鹿者、無礼者!」

「無礼者って、いつの時代の人ですか」

 悪びれる様子もなく、冴子は初芽に向かって指を指す。無礼者なのはどっちだと言いたくなる。しかも、冴子が大声を出したせいで、周りの注目を集めてしまった。悪目立ちして問題児扱いされた挙句卒業できない、なんてことになるのだけは避けたい。

 ……と、初芽は願っているが、すでに手遅れだった。二人の通うS大学では、「メディア情報学科四年と一年の、変なコンビがいる」と噂になっていた。冴子が悪目立ちするせいで、隣にいる初芽まで変人扱いされている。

 オカルター雅樹は、冴子が尊敬するオカルト研究家の一人だ。馬鹿にしたままだと話が進まない。心にも思っていないが、初芽は一応謝罪した。

「馬鹿にして、すみませんでした。それで、冴子先輩はどう思ったんですか」

「おいおい。私達がどれだけの付き合いだと思っているんだ。頼むよ、初芽くん」

「どれだけって、たった半年ですよ。あと、急に何ですか、その呼び方は」

 初芽は迷惑そうに眉を顰める。

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