VSダンジョン

 始めましょうと言ってはみたものの、相手はダンジョン。勝利条件すら不明の状態でどうやって戦えばいいのでしょうか。

 そうしている間にも土が盛り上がり、私を潰そうとしてくる。


「あまり得意ではないんですが。」


 爆発魔法を一発。辺りが消し飛ぶ。先輩からもらった赤色の魔石で私は光だけでなく、爆発も扱えるようになった。先輩が使ってたところを見たことは無いんですけど…なんででしょうね?


「次はそこですか。」


 私がさっきまでいたところは岩が生えてますね。あれで貫かれたらただじゃ済みそうにないです。それに、とことん私の後ろを狙ってきますし。結構厳しい相手ですね。


 地面がうねり、私を囲い込む。私はそれを爆破してまた移動する。後輩を守りながら戦うのはなかなか骨がおれますね。

 



 そのまま何と戦っているのかも分からずに襲いくる土の壁を壊し続ける。


「これ、終わりますかね?」


 いや、終わりがあるのかどうかも分からないのだが、いよいよ魔力量が厳しくなってきた。


「ふーん、そうゆう。」


 少し遠くに上級ポータルが一瞬見えました。あと、そこから流れ出してるとてつもない量の魔力も。


「あの奥ですかね。」


 この距離で戦闘をしている私でも感じることが出来る魔力量。多分あのポータル以降の何かがこの面倒な事態を引き起こしてるんでしょうね。


 ならばやるべきことは決まりました。後ろで倒れてる後輩に魔力の障壁を張る。私は頑張って上級ポータルに走って、中にいる何かを叩く。完璧な作戦ですね。失敗するわけがありません。


 とりあえず走ります。周りの地形は変わってますけど本気で走れば、というか魔力を放出しながら走ればなんとか地形を維持しながら走れますね。


 その後はしばらく走ってポータルに到着した。


「ガードはいないんですねぇ。」


 なんでだろ?そういえば最初のゴブリン以外の魔物を見ていない。まあ楽なのでそっちの方が嬉しいんですけど。ただポータルの周りの地形がボコボコなのは少し面倒だから止めて欲しいなぁ。





 さて上級エリアです。空が…赤い。いかにもまがまがしい雰囲気ですね。魔力もなんだか嫌な感じです。ただ、地形が変わるのはなくなりましたね。


「なにか…いる。いや、ある。」


 この異様な魔力の中でも特に目立っている魔力があります。ダンジョンの最奥付近ですね。


「私1人で行くような所じゃないんですが…」


 まあ、仕方がない。奥のほうは魔力の量で圧倒されるほどですけど、行くしかないですからね。



 しばらく何も音のしない荒野を歩き、ダンジョンの最奥に到達する。


「とても、きれいですね。」


 そこには赤い石がおかれており、そこから魔力が漏れ出ている。


「ダンジョンコアとか言う奴でしょうか。」


 普通のダンジョンならお目にかかることは滅多にないダンジョンコア。それこそ大量発生とか、突然変異とかでダンジョン内の魔力が大きく変わった時にしか姿を見せないもの。


「じゃあなんでここにあるんでしょうね。」


 問題はそこだ。今回敵らしい敵はいない。じゃあなぜダンジョンコアが露出しているのかについてですが、 それの答えは単純明快。これ自身に変異みたいな症状が起こったからでしょうね。


「本当にきれいですねぇ。」


 一目見たときから、手に取りたいという強い衝動に駆られた。恐らくダンジョンコア内部の魔力量がおかしいため精神汚染が進んでいるのだろう。


「さてどうやって持って帰りましょうか。」


 多分このダンジョンコアを素手で持ち運べば発狂するでしょうし、最悪の場合体を乗っ取られる可能性もありますからね。


「会社支給のバックパックならなんとかなりますかね。」


 直接手で触らないよう細心の注意を払いながらその石をバックに入れる。

 しばらくは警戒していたが特になにも起こることはなかった。


「問題は無さそうです。安心しました。」


 後はこのダンジョンから脱出すること。ダンジョンコアがなくなったらダンジョンは崩壊する。いや、まあ当たり前ですけど。これを解析班に渡してどうなってるかも知りたいですし、あとそうだ。帰る途中で後輩も回収していかないといけませんね。やれ、先輩は大変だぜ!


「あれ?」


 急に辺りの地形がおかしく、一気に魔力が…体に流入してくる。これは、頭にきますね。


「立っていられない…」


 ダンジョンコアの影響でしょうか。かなりの痛みです。体全体の魔力が暴走して、自分の意思で止めることができなくなります。


「ストップ…ストップ!」


 爆発魔法と光魔法が自分の意思に反して何度も何度も撃ち続けられます。


 まずい、このままだと死ぬかもしれません。が、何をしたらいいのかも分かりません。


「先輩…」


 こんな時私の先輩ならどうしたのだろうか。そんなことを考えながら私は倒れました。





「生きてるか?後輩。」


 …返事がない。ただのしかばねのようだ。

なんてな。多分本当に死んでるだろうし。


「もう一回くらいチャンスをやってもいいだろう。」


 自分が直接介入できたら楽なんだが。まあ後輩の育成と考えて長い目でやるとしよう。

 それに、もし次もダメなら…まあちょっとくらい手を貸してもいいだろう。なにせ俺の可愛い可愛い後輩なのだから。












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