第二十六話 次のトラップ部屋へと向かう
時は少し溯る。
連合軍――その先頭にいる帝国軍が、アジト内へ足を踏み入れてから、少し時間が経過した頃。
「はああああ!!!」
「ぐあああ!!!!」
ドオオオオオン!!!!
主に帝国軍による苛烈な突撃と、それによって瞬く間に蹂躙される”
だが、そいつらが最後っ屁に自爆をお見舞いし、帝国軍にそこそこの犠牲者を出す。
そんな戦場を上から俯瞰しながら、俺はポツリと言葉を漏らした。
「これ、俺が入る余地、殆どなくね?」
……と。
そう。本来であれば、連合軍側と”
だが、いざ見てみればこの通り。敵の多くは俺が介入するまでも無く致命傷となり、そして自らその命を自爆を持って終わらせているのだ。
お陰で今やっているのは、精々連合軍側と接敵できていない、僅かな構成員の頸椎を溶かして殺しているだけだ。
そしてそいつらも、死の間際に口内に隠し持っているのであろう自爆ボタンをポチっとするから、全く気が抜けない。
本当にマジで、極まった死兵って厄介だなぁ……
「だが、これならそう遠くない内に倒せそうだ」
なら、自分は何か異変が無いか探す方に注力しようと、俺は手始めにこの部屋を隈なく調査してみる事にした。
もしかしたら、何か見落としている罠があるかもしれないし……まあ、念のためだ。
そう思いながら、室内を探索し始めた俺は……やがて、直ぐに気付くこととなる。
「あれ? これ……ヤバめの魔法陣だよな?」
そう。血のせいで見えにくいが、地面には間違いなく魔法陣が形成されつつあったのだ。
解析してみたところ、火属性系の強力な魔法――属性から察するに、恐らくザイールが発動者か。
「よし。なら、この術式……書き換えてやるか」
魔法液によって、地面に描かれつつある魔法陣――あれを対処して、更に敵へダメージを与えるといういい方法を思いついた俺は、早速行動に移す。
手始めに、1匹のスライムを屍に隠すようにして配置した俺は、そこから地面に広がる魔法陣へ魔力を流し、術式の書き換えを始めた。
「なるほど。構成員が撒き散らす血に、魔法液が含まれてるって事か。それを上手い事操作して、魔法陣の形にするとか、よく思いつくなぁ……」
そう言って内心感心しながら、俺は書き換えを進める。
解析した時点で分かっていた事だが、この魔法陣には妨害術式がほとんど無い。大方、それを入れる余裕は無かったのだろう。精々、そこそこの術式隠蔽しかされていない。
ただ、その分複雑で強力な魔法陣になっており、書き換えにはそれなりの時間を要する。
「書き換えた事がバレないようにしつつ……向かう先を、発動者に……」
術式を大きく変えすぎると、発動時に気付かれてしまう可能性が非常に高い。
その事をしっかりと念頭に入れながら、書き換え作業をしていると……
「これは……!? マズい、退避! 防壁の展開を急げ!」
連合軍側のリオルム総督が、焦燥感を露わにしながらそんな声を上げた。
どうやら向こうも、下の魔法陣に気付いたようだ。
戦闘中に気付くとは……普通に凄いな。
そう思い、感心していると、ザイールが思わぬ行動に出る。
「くっ……これに気付くのかよ! さっき急ピッチで準備した、俺のとっておきなの――に!」
そう言って、なんと味方である構成員を殺害したのだ。更に、残る構成員は即自害までしやがった。
それにより、血と共に撒き散らされる魔法液が、魔法陣を一気に完成へと至らせてしまう。
「ヤバいヤバい。まだ終わってねえ!」
俺は焦燥感を露わにしながら、急いで魔法陣の書き換えを終わりへと近づけていく。
そして――
「よし、終わった……」
「さあ――死ね。”
書き換え作業が終わってから、僅か数秒後。
魔法陣が発動し、巨大な炎が上がった。
だが、その炎は連合軍では無く、ザイールの方へと向かい……
「がああっ!!!!」
ザイールを、瀕死の重傷へと追いつめるのであった。
「……ふぅ。危なかった。何とか、間に合ったか」
いやーマジで危なかった。
ザイールが予想外の行動をしてくれやがったせいで、危うく連合軍の先発隊が半壊するところだったよ。
「と……とどめだっ!」
その後、ぶっ倒れているザイールを、リオルム総督が困惑しながらも撃破し、これで”
「よし。悪くない、悪くない……じゃ、報告するか」
そう言って、俺は即座にレイン殿下と連絡を取る。
「レイン殿下、シンです。報告があります」
「そうか。報告は?」
「はい。敵方の一般構成員はほぼ全滅。残るは奥に居る数名のみかと。また、幹部のザイールも死にました。こちら側の被害は、騎士数名です」
「そうか……ありがとう。引き続き頼む」
そうして報告を手短に済ませた俺は、即座に最前線へ目を向けた。
「さてと。次は物理と魔法のトラップ群。下手を打てば相当足止めを喰らいそうだな……」
そんな事を呟いていると、完全に合流できた連合軍が、トラップ部屋のすぐ目の前まで足を進めるのであった。
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