第12話
ある満月の夜、広場で集会が開かれた。
村人の様子を探るためにリメイも参加したが、開始当初から村人はリメイをちらちらと見てやりづらそうにしていた。
今さらガスマスクを気にされているとも思えない。
金髪が満月を反射して眩しいのか、などと呑気に考えていた。
しばらく村人からは遠慮がちな発言が続いたが、ある人が追悼の言葉をエリクに捧げると、他の参加者も同調するように、エリクがどんな人間だったかを語り合うように話が始まる。
仕舞いには犯人捜しは有耶無耶になり、いよいよリメイも欠伸をかみ殺した。
通夜のような集会だった。
夜も更けた頃、なし崩し的にラーシュがやったという話に落ち着き、その日はお開きになった。
集会には、ラーシュはいなかった。
唖然とするリメイを残し、村人は三々五々解散していく。
証拠や本人の弁解も確認せず、印象だけで犯人を決めつける村人の同調圧力が恐ろしくなった。
「――あれ、集会は終わっちまったんだ」
息を切らしたアンジェリカが遅れてやってきた。
目が合い、こないだ言い合いになったことを気まずく思ったリメイだが、アンジェリカは気にする様子もなく、おう、と片手を挙げて近づいてきた。
店じまいに時間がかかって遅れたそうだ。
「集会、どんな感じだったんだ?」
「どんなって……文化の違いにびっくりよ」
リメイはありのまま集会の様子をアンジェリカに話した。
「ラーシュさん、前の日も揉めてたもんなぁ。事あるごとにエリクさんに因縁つけてたし、疑われても仕方ねえんじゃねえかな」
「でも本人から何も聞かず、印象で決めつけるのって、どうなの?」
「ここはルイス村だぞ? 疑われたくないなら、ちゃんと裁判には顔を出さないと……」
「裁判? あれが?」
まるでルイスだけ文化が百年ほど遅れているかのようだ。
「まぁ、最後は領主様が何とかするしかないんだよな。裁判はあくまで井戸端会議の延長線。あたしはリメイがいるの見て、てっきり今夜の裁判は特別扱いなのかと思ったぞ」
参加者がやりづらそうにリメイを見ていた理由はそれか。
「というか、ラーシュさん居なかったのか?」
アンシェリカは怪訝な表情を浮かべていた。確かに変だ。
村人の心象を決定づける『裁判』にはを出さないと、言われたい放題になる。
被害者と前日に喧嘩した人間なんて特に矛先が向くだろう。ラーシュもそんなことは重々承知だろうし、どんな予定よりも優先して参加するはずだ。
「……行こう」
「えっ、どこへ?」
「農場。何かあったのかも」
真夜中に差し掛かる時分。リメイはすたすたと歩いてラーシュの農場へ向かったが、アンジェリカが慌てたように付いてきた。
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