破壊 グロ注意
「これがお前の両親か。ふんっ。中年で使えなかった駄作だな。適性も運動能力も若い者に劣る欠陥品だ」
駄作? 欠陥品? 俺の両親が?
誰よりも厳しい母だった。
無口だけど不器用な優しさを向けてくれる父だった。
幼稚園の頃怪我をしたら優しく手当してくれた。成績が悪くなったら怒られた。ご飯を美味しいと言ったら喜んでくれた。
挙げたらキリが無いほど出てくる思い出をギルバールは、この国は、踏みにじった。
「……るな」
ふざけるなっ!
ああ! コイツラを壊してやりたい!
ぐちゃぐちゃにして恐怖を脳に刻み込ませてやりたい!
俺の両親を侮辱したコイツラを。同胞を殺した罪を今、死をもって償わせたいっ!
体の中心に魔力が集まる。魔力がぐるぐる渦巻きながら形を作った。
コワシテヤル!
「なっ魔術が顕現しただとっ! 早すぎる!」
「まずお前からだ」
使い方は自ずと分かった。
身体強化を使って軋む体を無理矢理動かす。
ギルバールの体に触れればそれで終わる。
身体強化をした足で床を蹴る。今まで以上の速度だった。
「くそっ!」
ギルバールがまた指を鳴らす。
人に操られるような感覚を感じ、失速してしまったが自分に魔術を使う。
すると感覚がもとに戻った。
再び床を蹴りギルバールに肉薄する。
「俺の魔術が効かないだとっ! ありえん!」
ギルバールが魔力障壁を展開するが無意味だ。
俺が手を払うとそれは霧散した。
俺はギルバールの顔に手を当てて魔術を使う。
「死ね」
「止めてくれ! 俺はまだ死に――」
首から血を吹き出して倒れるギルバール。
ギルバールの頭は消えていた。否、爆発したと言っていいだろう。
血生臭い脳漿が手に纏わりついて気持ち悪かった。
ギルバールは殺した。次はあの王だ。
ギルバールの死体を蹴り飛ばしてから魔力感知を使う。
そこか。
この部屋から見て右上の部屋。
そのまま天井を破壊したら行けるだろう。
そう思い足に魔力を込めたときだった。
「大地。行くな。莉央が悲しむぞ」
「分かってる」
「ならさっさと逃げるぞ」
「それはできない。俺は王を殺す」
「大地……」
ああ、鬱陶しい。お前らは黙ってろ。
ほとんど俺の理性は消えかかっていた。大事な幼馴染を脅すぐらいには。
「俺の邪魔するな涼雅。お前も殺されたいのか?」
ありったけの魔力を涼雅にぶつける。
氷華が少し怯えたように震えた。
「ああ分かったよ。勝手にしろ」
「ちょっと涼雅! 大地!」
涼雅が諦めたように首を振る。分かってくれるならそれでいい。
俺は王のいるところへ急いだ。
「ギルバール終ったか。どうだった。成功したか?」
俺が薄暗い王のいる部屋に行くと何を勘違いしているのかこちらに背を向けて言った。
「やはり頭の悪い異世界人は使いやすいな。勝手に我が国の礎となってくれる」
「……」
「これを繰り返して強力な手駒を揃えたらあの大国カルバンやアメリア。そしてこの大陸全域を支配することが出来る! 戦争をしているなんて鼻からの嘘なのに我らの掌の上で滑稽に踊る異世界人には笑えてくるよな! ハッハッハッ! そうは思わんかギル――なっなぜお前がいる! もしやギルバールの奴失敗したのか!」
愉悦の表情から一転。驚愕したのか目を見開いて立ち上がる王。
「良いだろう。あ奴が居なくなっても手駒はある! 喜べ! この私が直々にお前を利用してやる! 行け! 我が亡者共よ! あいつを拘束するのだ!」
手を出すと同時に魔術陣が王の足元に展開される。
そこからうめき声をあげながら死臭を放つ亡者が大量に生み出された。
その亡者の髪は少なくなっていたが金、灰、そして黒の色が確認できた。
「どうした! 怖気づいたか! この亡者はお前らと同じ異世界人! 死した今、私の人形となったのだよ!」
「うるさい」
俺は手を振るって王の魔術を破壊する。
すると亡者がドロっと粘度の高い液体になった。
「私の魔術を消しただと?! お前もしや魔術を――」
「うるさいんだよお前」
俺は王の腕に触れて魔術を発動する。
ぐちゃりと音がして砕けた腕は白い骨が針のように皮膚を貫き、顔を出した。
「ぐぁ”ぁ”ぁ”っ! 私の腕がぁ”ぁ”ぁ”ぁ”っ!」
「安心しろ。それくらいで死にはしない。次は足だ」
「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”! もうっもう止めてくれっ!」
少し魔力を込めすぎたみたいで足が丸々無くなってしまった。
「あ”ぁ”っ」
「気絶するな」
床に倒れた王の首に雷属性の魔法を使い、無理矢理叩き起こす。
失血死してもらっては困るので足に魔力を張って血が流れないようにした。
「ひっ! すまなかった! 許してくれ。許してくれぇ」
「許さない。俺の家族を殺した罪を償え」
「分かった! 名誉か? 金か? 女か? 何でもくれてやる。だから殺さないでくれ!」
「何もいらない。俺はトラバス=フォン=ルシア、お前の命を頂く」
「止めてくれっ! 止めてくれぇぇぇ!」
うるさく喚く顔に手を当てて魔術を行使しようとする。
いや。こうじゃないな。
俺は王の心臓がある所に手を向けてゆっくり握る。
「――――ッ!」
王が声にならない悲鳴をあげた。
「死ね」
ぎゅっと手を握ろうとしたときだった。
『大地! 止めて!』
聞き焦がれていた声が頭に響いた。念話を通して聞こえてくる声は震えていた。
「莉央……?」
後ろに振り返る。そこには無くなったはずの腕を生やした莉央がいた。
『そのままじゃあなたもそっちに堕ちてしまう。今あなたは憎しみを晴らす、それだけ捕らわれてしまっている』
「でも……」
『でもじゃない! あなただけが背負わなくて良い! 私たちと一緒に背負うの! この憎しみを! この悲しみを! 私たちの心に留めておくの! だからっそんな顔しないで……! 私たちを忘れないで……!』
涙を流しながら訴える莉央を見てようやく俺は我に返った。
「莉央……」
「大地。ちょっと面かせ」
「痛っ! 何すんだ涼雅!」
涼雅に思い切り頬を殴られた。魔力で強化しているからかなり痛い。
「さっき俺らを脅した仕返しだ。それにお前は俺らのこと信用してねぇのか? 幼馴染だろ? 頼ってくれ」
「私こいつに今鬱憤溜まってるんだから大地だけなんてずるいわよ」
「氷華。俺もだ」
『私も忘れないでよね。大地の両親を殺すように仕向けた人は倒さないと』
俺には幼馴染がいる。一緒に歩んでくれる人がいる。
「ごめん」
「そこは感謝だろ大地」
「ありがとう。皆」
「よし! じゃあこいつ殺しますか!」
「どうやって殺りましょうか」
『ざっくり胴体半分に切るとか』
「そこは炎でじっくり弱火だろ」
「感電死は?」
『溺死で良いんじゃない?』
「「「それだ!」」」
地球人を苦しめたからこいつを水でじわじわと苦しめてやろう。
そう思い嬉々として振り返る。だが既に王は泡を吹いて死んでいた。
「国王陛下!」
ガシャガシャと金属の擦れる音がした。
部屋の入口に顔を出したのはフルプレートを装備した兵士で剣を構えていた。
「やべっもう来たか。逃げるぞ!」
「分かった。遺体だけ持ってかせてくれ!」
「すまんがあそこはもう兵士だらけだ今は逃げることを最優先にしろ!」
「っ分かった莉央動けるのか?」
『うん。まだ動ける』
「あいつらを逃がすなっ! 国王陛下を殺害したあいつらを捕らえよっ!」
兵士の中でも特に図体のでかい男が言う。
「「「「はっ!」」」」
俺は王城の壁を魔術で破壊する。
「ナイスだ大地」
兵士が斬り殺しそうな程の勢いで走ってくる。
それを尻目に俺たちは王城から飛び出す。
「ヒャッハー! 冒険だー!」
「貴様ら待てっ! お前ら領土全体に魔法鳩を送れ!」
兵士の剣に月光が反射する夜、俺たちの長い冒険が始まった。
こんにちは真冬です。今日投稿できちゃいました。ですが更新が遅くなって申し訳ありません。
これにて『第一章異世界召喚された』が終わりです。
これからはあとがきみたいなもんです。読み飛ばしちゃってもいいです。
最後ちょっと温度差が激しかったかな……上手く書けたか分からないので感想待ってます。
主人公の感情の変化もムズかったなぁ。単純に真冬の実力不足です……精進します。
後で今まで出てきた魔術の説明と人物をまとめたものを投稿しようと思います。
二章からの人物もちゃっかり乗っているので人物確認なんかに使ってください。
長々と書きましたが最後に一つ!
♡コメント。☆励みになります! 文字付きだったらもっと喜んで執筆速度が上がります! よろしくお願いしますっ!
常夏真冬。
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