剣と魔法を習いましょう

「異世界の者よ。起きてください」


 朝、ふかふかのベッドで寝ていたのにギルバールに起こされてしまった。

 聞けば王に返答しろと。せっかちな国王陛下だ。


「王よ、昨日の話受け入れる。私たちも手伝いましょう」

「おおありがとう異世界の者よ。ではルルよこっちに来なさい」

「こんにちは。私の名はルルと申します。異世界人と会うのは初めてなので少し緊張しています」


 ルルと名乗った少女は金髪を三つ編みにしてとんがり帽子を被っていていかにも魔法使いという姿だった。


「おおっ可愛い女の子チャン……ごめん氷華」


 涼雅は女好きだ。地球に居た時も見境なく女性に手を出そうとして氷華にされていた。


「ルルさんは魔法を教えてくれるんだな?」

「はい。まず魔法の基本属性についてお話しましょう。魔法は火、水、風、土そして聖があります。他にも派生で氷や雷などの種類があります。大体の人は基本属性全てを扱えますが聖に適正がある者だけ他の属性魔法を使えません。大体の人は基本属性の全てを扱えると言いましたが人によって得手不得手がありますが日常生活には困りません。他にも精霊術というものもありますがそれはエルフにしか使えません。ここまでで質問はありますか?」

「なぜ聖に適性がある者は他の属性魔法を使えないのですか?」


 氷華が言った。


「聖の属性は神のご加護を賜っているからです。なので基本聖職者となります」

「ありがとうございます」

「次は無属性魔法についてお話しましょう。無属性魔法は身体能力を向上させたりなど属性魔法では出来ないことが出来ます」


 念話、と聞いて思わず莉央の方を向いてしまう。

 莉央もまたこちらを向いていた。俺の夢が叶うかもしれない。


「最後に魔術についてお話しましょう。魔術は個々が保有する唯一つの魔法です。例外として古文書や遺跡に魔術陣として残されている場合がありますがかなり稀です。あなた方も魔術によって召喚されました」

「なんかかっけえな魔術!」

「涼雅静かにしなさいよ」

「大地だってそう思うだろ?」

「ああ」


 特に個々が保有する唯一の魔法、というところが俺の心をくすぐる。

 莉央にも『唯一の魔法を持ってるんだって』と言ったら目をキラキラさせていた。


「しかし魔術は最初から使用できるものではありません。外界からの影響を受けたときに顕現します。それは死に間際だったりただ足の小指を机の角にぶつけただけの時もあります」

「じゃあ今ルルちゃんに殺されそうになったら顕現するのか?」

「いいえ。魔術は魔法がある程度使えるようになったらの話です」

「そうなのか……」


 涼雅はわかりやすく落胆したようだった。


「大丈夫ですよ。すぐ使えるようになれますから。ではまず魔力の制御から始めましょう。魔力の制御は魔法を使うにあたって必要なことです。とりあえず魔力を感じてみてください」


 ルルが俺たちの手をとる。

 すると体に血液以外の何かが体内で循環するのを感じた。それは体がほんのり温かくなるものだった。


「今、私の魔力を皆さんに流しています。使

「そういえば過去にも異世界人は来たことがあるのか?」

「はい。古文書にはそう書いてありました。では皆さん魔力を外に出してみましょう。どちらの手でもいいので前に出してください。そして先ほど感じた魔力を外に出してそこに留めるイメージをしてください」


 俺は右手を出してあの温かいものを手から出すイメージをした。

 するとずずっと手から魔力が抜け出るのを感じた。


「そうです。皆さん出来てますね」

「なんでルルちゃん分かるんだ?」

「無属性魔法の魔力視を使っているからです」


 なるほどなそういうことも出来るのか。


「……やはり

「ルルちゃんなんか言った?」

「いいえ、なにも。では制御も出来ているので無属性魔法を使ってみましょう。腕に魔力をためるイメージをしてください。はい出来てますね。次は――」


 俺たちは僅か半日で全ての属性の魔法を使えるようになってしまった。

 だがルルは驚かずただ淡々と魔法を教えるだけだった。

 その事に俺たちは少し違和感を覚えるのだった。



「お前らっ! 速さが足りんぞ! もっと足に魔力を込めろ! もちろん剣にもだ!」

「「「はいっ!」」」

「声がちっせぇぞっ!」

「「「はいっっっっ!」」」

「じゃあどんどん打ち込んでこい!」

「「「はいっっっっ!」」」


 日がもう傾きかけているというのに殺す気なのかこいつ。

 午後は剣術の稽古だった。先生の名前はアイリス。女性っぽい名前だが男性だ。ちなみにそれを涼雅が言ってボコボコにされていた。


「どうした異世界人! 使!」

「ちっ!」


 俺はさっき習ったばっかりの身体強化を使ってアイリスに肉薄する。

 上段からの振り下ろし。剣の道を歩んでいるアイリスが防げないはずがない。

 だがこれを当てるつもりはない。


「そんなチンケな攻撃当たんねぇよっ!」

「どうかな」

「どりゃっ!」


 アイリスの後ろから涼雅、右から氷華、左から莉央が姿を表す。

 一閃。

 それは俺らの中に無尽蔵にある魔力を最大限込めた一撃。

 それはバキッ! と音をたてて防がれた。


「お前らチームワーク良すぎだろ。仲良しか」


 アイリスと三人の手には折れた木剣があった。


「よし。今日は終わりだ! 素振りやっとけよ!」

「「「はいっっっっっ!」」」


 こうして異世界生活二日目は運動過多で死にそうになった。



「眠い」

「珍しく涼雅がまともなことを言ってるわね」

「そうだな」

「一応魔力感知広げとくぞい」

「大丈夫か? 魔力」

「まだ底が見えない」

「そうか、俺もだ」

『私も』


 莉央も大丈夫のようだ。ルルの言うようにかなりの量の魔力を俺たちは持っているようだ。

 ちなみに魔力感知は無属性魔法の一つで魔力を広げている範囲内に物質が入ったらその物質がどこにあるかわかる魔法だ。地球で言ったらソナーみたいな感じ。


「しかしルルちゃんもアイリスも異世界人の事を知ってるような口ぶりだったな」

「確かによく考えてみたらルルは異世界人に会うのは初めてなのに『皆さんは異世界人なのでこちらの者より多くの魔力を保有しています。そして順応も早いのですぐに制御、使用できるようになるでしょう』ってまるで教えたことがあるような言いぶりよね」

「それにアイリスだって『とんでもねぇ力を使ってこいよ』だって。昔相対したみたいな言い方じゃねぇか」


 ちょっと涼雅と氷華が暴走してきた。こいつらはいつもこうだ。


「お前らちょっと考えすぎだ。それに莉央もわかんなくなってる」

「すまない」

「ごめんね莉央」

『大丈夫』

「とりあえず魔力感知は広げておくことにしよう」

「そうだな。ていうか一日でこんなに出来るようになるとはな」

「本当よ。魔法はすぐにできちゃうし剣術だって見たらすぐにできちゃったものね」

「それが異世界人の適正と言うやつなんだろう」


 だがまだ念話は出来ていない。魔法の練度が足りないのだろう。魔力を広げることは出来るが圧縮したりすることがまだ未熟なのだ。

 一日で出来るようになることはない。ゆっくりやろう。


「でもルルちゃん可愛かったなぁ」

「シッッッッ!」

「グハッ」


 ホント涼雅は早く氷華とくっつきなさい。

 俺は莉央の頭を撫でながらそう思った。



§


「国王陛下。報告申し上げます。異世界の者たちはこれまで以上の速度で成長しています。もうかと」

「こっちからも報告するぜ。あのガキどもはヤバい。今までよりダンチで上達しやがった。ルルの意見に同意するぜ」

「そうかルル。アイリスありがとう。ギルバールよ魔術陣の準備をしておけ」

「はっ」







誤字脱字報告ありがとうございます。(先に言ってくスタイル)

序盤は説明が多くなっちゃう。ごめんなさい

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