当たり前こそが『彼女』の日常である。_放課後(5)
「…………」
_……嘘だろ!マジすか!?
受李は猫乃が言ってた受李の彼氏(!?)の写真を見た途端に即座に頭をくしゃくしゃにしては頭を抱えた。
「ほら、これがあんたの彼氏でしょ?私にも見せなさいよ」
「……はぁぁぁぁぁ」
「ちょ…なんでそんなに嫌がってんのよ!?」
「これは……なぁ~」
その写真を見た受李は口から木霊が出るかのようにため息をついた。
「どしたん。そんなため息をついて…」
と受李が担架に乗せられている初音を嫌味ありの顔で見つめた。
「察し」
「はいぃ出来るか、ンなもん。その写真を見てなんでそんなに唸ってんねん」
「それが……」
頭を悩ませた受李が例の写真を初音に見せると
「うわぁ……乙、ご愁傷さま(笑)」
「乙ってなんだよ!ふざけんじゃねぇ!」
と微笑しながら受李をからかう始末。そんな様子を見て猫乃は一瞬は違和感を持ったが受李に近づき
「ほら、その人の所分かるんでしょ?私にも案内してよ」
「けどよ……こい」
と受李は本当のことを言おうとした途端
「まずは、その彼氏さんがやっているカフェでも行ったら(笑)?」
と嘲笑う初音が言った。
「おい初音。ふざけ…」
「え、カフェやってるの?」
「せやで〜、あそこのコーヒーがめっちゃ上手いんよ~。拝見のついでに飲んでみたら?」
「私……コーヒー、飲めなくて……」
猫乃がそう言い苦笑すると、初音のニヤリが止まり「ふーん」と変なのがなくなったような顔をした。が、またニヤリ顔に切り替わり
「そうなん。じゃあパフェでも食べにいきな。それもめっちゃ美味いから」
「あ、はい!ありがとうございます」
「ほな…、いってて…」
「はい、おしゃべりはここまでね」
「あ、まだ話が…ぁぁ!」
「これ以上喋らないでー」
と巨人から与えた痛みが気づかなかったかのように初音は痛め、救急隊員に冷めた顔で注意されながら、救急車に運ばれていくのを見て猫乃はすんと冷めた目で
「ほら、行きましょ」
「え、今からっすか?」
と受李はキョトン顔で向いてきたがそんなのをお構い無しに
「さ、彼氏さんのカフェ案内しなさいよ」
「はぁ……絶対に後悔すんなよ?」
「?」
「はぁ…マジでふざんなよ。あいつ…」
とため息をしながら受李は猫乃に受李の彼氏(?)のカフェに案内をしたのだった。
「へぇ……
「うん……。まぁね…」
と向かった先はまるでどっかのラノベに出てきそうなレンガ造りのカフェである。
「ここに…彼氏さんがいるの?」
「あぁ…、ちなみにここの上にうちとあいつで住んでいる」
「ええ!?」
「……」
__まさか、シェアハウスなんて……
と猫乃からの怒りと嫉妬が混ざった視線を浴びせられる受李。「はぁ……」と呆れながらため息をつく。
「じゃあ、入るよ」
「あ、まだ準備が……」
と猫乃の気持ちを知らずに、カランカランとベルが鳴るドアを入った。
「おう、いらっしゃ……って、なんだ受李か…おい、なんか汚れてるぞ!」
と洗いたてのコップを拭いていたエプロンを掛けている深緑髪の人が怪我と土埃で汚れた受李に近寄った。その人を見て猫乃はビクりと頬を赤らめた。この人だ。
「たーいま」
「待ってろ。今、タオルを……」
「いいよ。着替えとく。大した事じゃないし」
「いいや、さすがに風呂入れ。今から沸かしとくよ」
「いやいや、シャワーで充分や。それよりもお客さん」
受李はすぐに猫乃を指した。あまりの急な流れで聴き込んでいたせいか猫乃は
「ええ!?」
驚き、そっと深緑髪の人に向きを変えた。すると
「ん?見ない顔だな」
「それじゃ、シャワー浴びるー」
なんかラブコメのような雰囲気を無視して受李が浴室に向かっている最中に深緑髪の人が猫乃に近づくなり猫乃の顔を覗かせた。
「ひぇ…」
と猫乃は一歩離れた。それはあまりにも美形で色気のあるシャツとエプロンのイケメンカフェ店員とまさに受李にはもったいない彼氏(?)であるからだ。
「あ………驚かせてごめんな。ここじゃ、あんまり見ない顔だから……んで、君、名前は?」
「あ…えっと…猫乃です。杠葉猫乃…」
「猫乃ちゃんか……。俺は矢凪 蓮佳だ。いつも受李が世話になったな。よかったら、ここでなんか食べる?」
「え、あぁ〜………ん~………。た、頼むので待っててください」
「そっか、ごゆっくり」
と名乗った受李の彼氏(?)は微笑んで、すぐにカウンターに入って、濡れたコップを拭いた。猫乃は蓮佳を追うようにカウンター席に座って近くに置いてあるメニューを見る。そしてコーヒーの豆を専用の瓶に詰め替える蓮佳の後ろを姿を見るなりドキッとし、顔を赤らめる。そして、猫乃は思う。
__……やっぱり、この人は
すると
「注文は何かあった?」
蓮佳がまた猫乃の顔を覗かせる。
「ふぇ!?えっと……あの!」
「はい?」
と猫乃はこれはチャンスだと思い、受李を除いたデートを提案をしようとして立ち上がった。だが、受李の彼氏(?)である蓮佳があまりのイケメン顔であったため緊張して口が篭っていた。蓮佳がキョトン顔で首を傾げると
「その……矢凪さん……!」
「はい…」
「もし、良かったら……あれ?」
猫乃が顔をあげた途端、ある違和感に気づいた。猫乃はその違和感を絶対に嘘だと思い込んだ。だけど、少し違和感は消えてはなかった。すると
「どした?」
と止まっている猫乃が気になりすぎて、蓮佳が近づいてきた。猫乃はその首元を見るなり
「ちょっとすいません」
「ん?ひぇ……」
と猫乃が蓮佳の首を触ってみる。すると男ではあんまり出ない声と喉仏がないすべすべな肌であった。
「え……嘘……でも……」
「あ、あの〜…」
「何してんの」
「ひぇ」
猫乃が声をかけられた方を振り返るとそこには風呂上がりの受李がいた。タオルを肩にかけて白Tシャツに黒のスウェットパンツの姿でカウンター席に座った。
__まさか……
信じ難い事実にゴクリと唾を飲み
「ねぇ…愛川さん」
「ん?何?」
と猫乃は風呂上がりのホットミルクを飲む受李に確認のためにこう問いかけた。
「もしかして……かもしれないけど、矢凪さんって……女?」
「そうだよ」
受李が猫乃の問いに即答する。受李がすんなりに答えたのに猫乃は何故か認めずに
「いやいや、そんな訳ないでしょ」
「えぇ……」
「だって、こんなにも結構高いじゃん。それに男らしい体型だし……」
「それは……なんかごめんな。それは蓮佳が高身長のど貧乳だからだよ」
「おいコラ。勝手に人のカップを言うんじゃない」
「いてっ」
と受李に軽めに頭を叩く蓮佳。すると
「う……嘘よ。そんなの……」
猫乃はそう言い、焦りながら蓮佳の方に向かった。猫乃は蓮佳を疑いの目を見ながら
「矢凪さん。そんなの嘘ですよね……普通のお、男ですよね?」
「あ……」
猫乃は期待の眼差しが送った。きっと、嘘だと。彼女はそう思っていたのだろう。だが、蓮佳は気まずそうにしながら猫乃の視線を逸らして
「…ごめん」
「………え?」
「俺……女です」
「~……!」
猫乃は絶句した。こんな絶世のイケメンが女だとは思いもしなかったからだ。
「ほーら、言っただろ。蓮佳は女だって」
「な、なんか……悪い」
「あ、あぁ……そんなの……いやぁぁぁぁぁぁぁー!!」
と猫乃は涙目になりながら、すぐに荷物を持って店を出ていった。猫乃の現実を突きつけられて即座に逃げる悲惨な後ろ姿を見て、受李はため息をついて、呆れた目で蓮佳に見つめた。
「……」
「どした?俺なんかついてる?」
「はぁ…」
「いや、なんで!?」
あの光景に何も分かってない蓮佳に受李は少しうんざりしており
__どうやったら、こいつをめっちゃモテてるよって分からせる事が出来るのだろう…。と受李はぬるめのホットミルクを一口飲んだ。
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