ほんの『一部』の日常である。_夕方

「うわ……何あれ……」

「これ……怪物…?」

「グロ……」

「また……連合さん。派手にやらかしたんじゃね?」

「だろうな……」

とたまたま遊歩道を歩いていた通行人が目に見たのは規制線の向こうの死体だ。それは蓮佳が殺した化け物が無惨にも脳みそをばらまけていた。手足も引きちぎられまるでバラバラ殺人が起こったかのようだった。そんな通行人が集まることをその気にならず当の本人である蓮佳は

「うう……疲れた」

と海城にこっぴどく叱られたのでよろよろのになったまま家に向かおうとしてた。すると

「おや、矢凪さん。おかえり」

「ん……あ、五色田ばあちゃん…」

五色田ばあちゃんがたまたま蓮佳がここを通る寸前のところを気づいたらしい。五色田ばあちゃんは蓮佳に近寄ると

「結構怒らたらしいね……」

「へへへ……おかげさまでね……」

「さぁさぁ、入りなさいな。美味しいお菓子でもあげるわ」

と言い、五色田ばあちゃんは自分が勤めている駄菓子屋を案内した。


「はい。どうぞ」

「おおお、いただきまーす」

茶色の菓子皿の醤油せんべいを手に取り、ガブリと大きい一口で食べた。

「よくお食べな。沢山あるから」

「うん。ありがと、五色田ばあちゃん」

「いいよ、いいよ。助けてやった礼もあるし」

ほんとに申し訳ねぇと蓮佳はそう言いながらせんべい一枚をまるっと食べた。すると、五色田ばあちゃんがこう言った。

「ちゃんと刑事さんのところに行ったかい?迷惑かけたのかい」

「かけてはないよ」

「嘘だね…。その様子だと迷惑かけたわね」

「……怒らないの?」

「怒るも何も、君がやった事は大体の親友と似ているんだよ」

「親友……ね……」

と蓮佳は親友を復唱した。蓮佳にはかつて親友がいた。とても優しく、頼りになる奴だった。だが、その親友も…

「あの女に奪われた…」

蓮佳はその事を思いだしてははぁ……と深いため息をついた。あの数十年前のことを思い出してもここの異世界は何も起こんないのに……。まさに今更ってな感じがする。ほんと、俺は何を考えてんだが、 蓮佳はぼーっとしていた頭をくしゃくしゃすると

「そういう、馬鹿なところを感じたらすぐにくしゃくしゃするのさ」

「え?」

キョトンとした顔をする蓮佳に五色田ばあちゃんは続けた。

「うちの親友はね、そういうなんか馬鹿なことを考えてはすぐに頭をくしゃくしゃにしてるんさ…。ま、それに両手で頬を叩くこともある」

あ……、なんか分かる……。蓮佳がそう思うと

「あと酒癖が悪いことやな。」

「……っ。悪いな酒癖が悪くてよぉ…」

「大丈夫、矢凪さんはあいつよりマシさ」

「それ結局、俺は酒癖悪ぃじゃねぇか!」

「ハッハッハッ、それでいいんだよ。あんたらしさでもあるから」

と手元の緑茶を少しゆっくり回しながら五色田ばあちゃんはこう言った。

「彼はそんな奴さ。クズで外道な行動が出来れば、たまにちょっと頼りのある行動をする奴さ。ま、危険な行動もするけど」

「あはは、まるで私見たいだわ〜」

「そうさ、あんたは親友と一緒さ」

「え?」

またもやキョトンとする蓮佳。すると五色田ばあちゃんの閉じていた目が細く開く。五色田ばあちゃんの目を開いた先には深緑のミディアム髪でアジアの絵師が描いたかのような紺色の瞳の女性。少し雑すぎなハーフアップで猫背とまるでダメな女性が目の前にいるかのような存在だ。五色田ばあちゃんは蓮佳を見て、微笑み

「ふっ……本当に親友にそっくりだ。私ゃ、死後にいるのかね?」

「いやいや、ばあちゃん、死ぬな、死ぬな」

と突然のことを言われたので蓮佳はつっこんだ。

「ふははは、そういうとこも奴にそっくりだわ〜、本当に死後にいるみたいやわ〜」

「嘘だろオイ!?」

「はっはっは…だが、親友の事はあんまり覚えてないんよ。でも………確かにいるのは確かだ」

そういうと五色田ばあちゃんは笑った。すると今まで五色田ばあちゃんをツッコミをした蓮佳でさえも、何故かはにかみ笑った。あー、あの苦い思い出が消えかかるかのように笑った。すると

「ところで……」

「ん?」

「矢凪さん、もうすぐ大丈夫かい?そろそろあの子が帰ってくる時間だけど……」

ん?と蓮佳はスマホで時間を確認するとなんと午後の五時になっていた。

「………」

蓮佳は青ざめてしまった。そう、この時間は委員会のある受李が帰ってくる時間。つまり

「こんなところで野暮しちゃいけねぇんだった……」

「あらま〜」

五色田ばあちゃんは頭を抱える蓮佳に同情をした。そして、

「ご馳走様!」

そう言い蓮佳は大声を出しては

「悪ぃ!片付けてくれー!!!」

と砂埃が来るような感じに猛スピードで走った。

「ゴホッ、ゴッホ……」

その砂埃に受けたのか五色田ばあちゃんは咳払いをし、そのお菓子を片付けようとしたが

「あら?」

なんと片付けとは言ったのに既にゴミが無いのだった。まるで五色田ばあちゃんの負担を減らせるように……。それを見た五色田ばあちゃんは「ふふ」と笑い。

「そういえば彼も同じだったよな。本当に似てるわ似てる」

と猛スピードで走る蓮佳を見ては微笑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る