奇怪
「ふん」
マルグリッドは不敵に笑うと、突然態度をかえ、かかとに思いきり力をいれるとギュンっと、クランの懐に入り込んだ。
「なっ!!」
マルグリッドはプラグの胸部にちらりとプラグの“オートマタ”がしまわれているのをみると、それめがけて全力でパンチを加えた。
「ぐおおおお!!!」
クランがひるんんでも、連続の殴打をつき続けるマルグリッド、その瞳は狂気に飲まれたようにわらっていた。ふと、マルグリッドのこぶしがアッパーでクランのアゴを撃ちかけた。クランはやっとのことでそれをかわした、と同時に思わず声がでた。
「あっ……」
そのパンチはクランではなく、クランの手にしたサーベルをねらっていたのだ。サーベルは宙高くとびあがり、手を伸ばすよりはやく、マルグリッドは同じ高さに飛び上がり、サーベルをてにしてくるりと翻して落下と同時につき下ろした。
「死ねええええ!!!」
プラグは、呆然自失という状態だった。もしやマルグリッドが自分を気にかけていた理由も、自分がある種、マルグリッドにとって特別だったからではないかと思いもしたのだ。
「それはない」
「?」
その気持ちを悟ったかの様に、アイリーンが告げる。
「マルグリッドの愛が偽物だったと思っているのだろう、それはないのだ、マルグリッドはこの事実をしったのは、その後だったから……青の夜鳥の事件が特定の人間を狙うようになったのはね、君を育て始めたあとに、真実をしって、マルグリッドは自分の恋人を殺し、さらにその死体さえも利用しているこの国とヌーヴァル帝への怒りを強めたのだ」
「アイリーン、どうしてあなたはそんなに詳しいのに、マルグリッドを放置していたんだ?」
「私は……私の実験の狂気に気づいた」
(私の?)
「私は戦争の、アルシュヴェルド人から受けた痛みを補おうとし、人を愛した、だが愛だけではたりなかったのだ、お前もいずれ気付く、私がやったことは私のもとへと帰ってきた……今のヴァルシュヴァル卿は私が作り上げた、もはや私が愛そうとも、彼はかわらない」
スッ。
アイリーンは、からだをひねり、右手を後ろにのばした。
「通るがいい、ヴァルシュヴァル卿の狂気を見届けよ、それで正気が保てるのならね」
すぐにプラグは、マルグリッドの元へと向かった。そこで、ヴァルシュヴァル卿の異様な姿をみたのだった。ヴァルシュヴァル卿は自分のサーベルを使い、ある人間の胸部を貫いていたのだった。
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