アシュヴァ
「マルグリッド!!」
先ほどの悲鳴を心配してかけつけたプラグ。マルグリッドは、ふとそちらに気づき、プラグに応答した。
「プラグ……」
「どうしたんだ?」
ゆっくりと手を伸ばし指をさすマルグリッド、プラグはマルグリッドの指さす方を見た。
「なん……で」
そこにはアイリーンが腹部から血を流して倒れていた。
「すまない、アイリーン……」
ヴァルシュヴァル卿がそれを見下ろしている。
「いいんです」
とアイリーン、黄色い紋章の魔法で自分の腹部を治癒していた。
「私とアイリーンが戦っているところを後ろからヴァルシュヴァル卿が、槍をとりだして突き刺したのよ」
マルグリッドが震えているのをみて、プラグは、青の夜鳥の別の面を見た気がした。やはり腐ってもマルグリッドだった。
「マルグリッド」
プラグはマルグリッドの肘をつかんだ。
「マルグリッド、逃げよう」
「でも……」
「お願いだ、あなたがいたから、僕はあの時から今まで乗り越えられた、初めてあったとき、あなたが自分を恨めといった、そして、恨みでかくれたあなたの、誰かに対する期待を、自分に対する期待を信じろといった、それから今までずっとそれを信じてきたんだ、あんたがいったんだ、恨みは、期待の裏返しだって」
「……ヴァルシュヴァル卿は、強敵よ、逃げられはしない」
「……」
「それでもあなたが望むなら試してみましょう、でも条件がある……今から私の言う通りにして」
マルグリッドは大声でさけんだ。
「ヴァルシュヴァル卿、こっちよ!!」
彼はこちらを恐ろしい形相で目をかっぴらいてみつめた。その血管がはしったような目とその周囲の筋肉に、プラグはおぞけを感じたが、マルグリッドに言われた。
「いいというまでめをとじて」
次の瞬間、マルグリッドは右手を掲げ、その手の中から光の紋章が現れた。ヴァルシュヴァル卿がつぶやく。
「呪文の直接詠唱など……野蛮だ、やはりお前はアルシュヴェルド人の生き残り……」
プラグは、目を閉じたまま、マルグリッドの手をぎゅっと握っていた。
すると次の瞬間、マルグリッドは手を開いた。そこからはすさまじい閃光がほとばしる。マルグリッドはプラグの手に、別の呪文をかけると、プラグにいった。
「目を開けていいわ、あなたの目は“この光になれた”」
マルグリッドはプラグを案内した。そこはある廃墟だった。布団や、変装用具、本や服、色々な荷物があって、ある椅子の上に聡明そうな白髪で、青い目をした男の写真があった。すぐにわかった。これが彼女の親友である“ユルム”だと。儀姉妹だといわれていたが、プラグはとっくに気づいていた。彼は男だと。
「さあ、準備をしましょう」
二人は“決着”の準備をすると外にでた。
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