碧眼

アイリーンが叫ぶ

「初めから、街の人々や、警察、教会からにらまれていたあなたの青目と青髪、表面上差別はなくなってはいるけれどやはり“アルシュヴェルド”の力を感じざるをえない“戦争の災厄”“狂気の人種”アルシュヴェルド人の……」

 ドクン、と心臓が脈うった。彼女は、アイリーンは今まで隠していた差別の意思を自分に向けている。アルシュヴェルド人は各地に戦争を巻き起こし非人道的な人体実験を行ったことでよく知られている。まさに狂気をはらんでいる人種とされ“アシュヴァ”の力も恐れられている。青の力……青の魔力である。それと自分を紐づけている、明らかに意思がある。敵意だ。


マルグリッドが前へでて、プラグをかばう。

「いいえ、そんなつもりじゃないのよ」

アイリーンが続ける。

「そんなあなたをずっとかばい続けてきたマルグリッド……あなたが見ようとしなければ、目を塞いでさえいれば、そんな差別から私もあなたを守れたのよ、プラグ……けれどマルグリッド、すべては彼女が悪い、あなたを救いながら、救われることを望み、けれどとうとう自分の過去を救う事の出来なかった愚かな、矛盾をはらんだ女が!!」


 アイリーンは十字にムチをふるった。その斬撃はまっすぐとんだが、マルグリッドはプラグを抱きかかえて宙をとんだ。アイリーンは一回転し、そのまたもや今度は高めに十字をきった。

「マルグリッド……」

 プラグがマルグリッドに話しかけようとしたとき、マルグリッドはシー、とジェスチャーを送った。マルグリッドのコートが自分をつつんだ。

「しめた!!」

 コートにくるまれたプラグが、コート事鮮血を散らした。

「ハハハハハハハハ!!!」

 アイリーンが笑い叫ぶ。それをみているヴァルシュヴァル卿もニタニタと笑う。アイリーンは狂喜に目を光らせているようだった。

「やったぞ、やったぞ、憎いクソガキが!!アハハハハハ」

 ボトリ、と地面に落ちるコート、アイリーンはそれを足でけり、中身を確認した。そこには……マルグリッドの人形がしきつめられ、赤いインキの入った袋が中央にひもで結ばれていたのだった。

「マルグリッドオオオオ!!!!!」

 宙に向かって叫ぶアイリーン。


 その背後から、クランが姿をあらわした。腹部に手をかかえ、よろよろとしている。

「あなた、そんなので大丈夫なの?」

「ええ、問題アリマセン、私は“実験体”ですから」

「ふん……せいぜいあの女に、絶望と失望を与えることね、自分のしてきたことを後悔しながら、殺さなければ」

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