災難。
「死ね!!!」
青の夜鳥がまるで機械音声のような声でさけんだ。夜鳥は魔力を巨大オートマタの腕のような道具にこめ、前方に射出した。そのアーマーは民家の屋根をつきやぶった。
「!!!」
なんとか住んでのところでよけたが、アイリーンは、それをみて息をのんだ。そして手元をみる。相手の攻撃の軌道をかえるために、二つの鞭はぼろぼろになり、ちぎれて散乱していた。
「しまっ」
正面をみると、相手はすでに自分の間近までせまってきていた。二つの青い瞳が、どこか人工的な、ガスマスクのようなマスクを背負った顔がコートの隙間からのぞいた。
「あんた!!なんでそこまで、あんたにとってあの子はそこまで……」
アイリーンがよくわからない事を叫んだ瞬間。すでにアイリーンの眼前までその武器はせまっていた。
“ギャリイイィイイイン”
アイリーンは、最初何が起きたかわからなかった。まるで事故にあい吹き飛ばされたかのように自分の体は宙をまったし、回転した。それは間違いなかった。全身が痛むし、どの程度の流血、あるいは体の欠損があるのか確かめなければいけなかった。だがこうした時に人間の脳が麻痺して、痛みを感じないという事もよくあるらしい。帝に好かれたことやこの任務を任されたことなどが走馬灯のように駆け巡る。
ヴァルシュヴァル卿が、アイリーンの前にたっていった。
「よくやった……実験体C-176」
「……」
そうよばれたのは先ほどまで屋根上にいた子供。アイリーンは自分の体をみて無傷な事を確認し、自分の目の前の少年が、自分をつきとばし、敵の攻撃からかばったのだとさとった。変わりにその子供は、腹部に大穴があいていた。
「クフッ……」
その子供にむけて、グイン神父が叫んだ。
「クラン……!!君はクランか!?」
そういわれた子供は、前を向き直り、体制を崩した。ピンチか?と思い青の夜鳥をみると、あちらも息をきらしている。そして空高く飛び上がり、その場から退避した。
その夜、夜遅くクランは帰宅した。体を引きずり、腹部を抱きかかえるようにして、暗がりの中、病室で様子をみられているエリサ、その傍らにプラグがいた。アイリーンが一言発した。
「あのね……あの時私を助けたのはクランだと思う……」
「え?そうなのか」
クランは、どきっとした、すぐにでもかけよろうかとおもった。だが、手を立てかけた扉をあけようとして、自分の腹をみてやめた。そのことですぐ後に後悔した。エリサが続けたのだ。
「助けてもらってなんだけど、彼はきっと人間じゃないわ」
「!?」
「体から下、機械的なものがみえたし、跳ねられる瞬間、いくつかの触手が体から現れた……人じゃなかった、怖かった……」
クランは唇をかみしめる、そしてその場をさった。
その場をさったあと、またエリサはいった。
「けれどね、彼はとってもいい人、人間じゃないとしても彼をすくって、きっと……あなたと一緒で少し変わっているだけだから」
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