急変
ブレーキ音を聞きつけ、すぐに駆け付けたプラグとペペロ、だがかけつけると、そこにはなぜだか道端の端にエリサが何かに驚いた様子で座り込んでいた。トラックが路肩にとまり、かけつけてくる。
「大丈夫か!!嬢ちゃん!!」
「何があったんです」
尋ねると、トラックの運転手がいった。
「お嬢ちゃんが飛び出してきて、次の瞬間に同じくらいの背丈の人影がでてきて、嬢ちゃんを脇道に連れ戻したんだ」
警察もきて騒ぎになって、直接エリサから聞くことはできなかったが、大まかな事はトラックの運転手の言っていたことと同じだったようだ。病院で検査を受ける事になり、しばらくの間入院となったエリサ。プラグとペペロは先ほどの雰囲気は置き去りに、静かに教会に戻っていったのだった。
グイン神父はその日の仕事をおえ、かえってきたらマルグリッドとアイリーンからその一連の報告をうけた。この世界では神父よりシスターたち女性の方が立場が上だから、神父は後処理をその夜遅くまでやっていた。そして、ちょうど12から1時に差し掛かろうとしたときに、声がきこえてきた。
「グイン神父、グイン神父」
教会の傍らの自室で、真横の懺悔室から声はした。
「誰だ」
「グイン神父、私です、アイリーンです」
「アイリーン、またか、こんな夜更けに」
「卿の命令なのです、また街に出ましょう、報告をしなければ“あの子”の監視もかねて」
「アイリーン、私はあなたの協力ばかりしていられない」
「今夜、夜鳥が現れるとしても?」
「!?」
「襲われるのは、私の知人です、ですがトラップをしかけたのです、グイン神父、あなたに変装をたのみたい」
「!!?私に襲われろというのか」
「必ずお守りします」
いわれるがままにグイン神父は、城やその付近で生活する富裕層の正装に着替えた。そして、夜の街を歩くことになったのだ。
午前二時、言われた通りの通りを歩いていると、頭上で足音がするのを聞いた。
「何だ?」
空を飛ぶ鳥のような動き、しかし明らかに人ほどの大きさのあるものが、民家の屋上を飛び移り、走り回っている。
「くそっ……」
グイン神父は思い出す。つい先ほど、ヴァルシュヴァル卿とアイリーンに見下ろされ、ある誓いを立てるよう命じられた。
「グイン神父よ……私は帝の直々に“ガルシュヴァルの平穏”を脅かすものたちの“処理”を任されたのだ、そして今夜、アレの“青の夜鳥”のしっぽを掴む、ゆくゆくは、衛兵に突き出すつもりなのだ」
「な、なぜそれを私などに……」
「グイン神父よ、君のいる教会の内部に怪しい動きがあるのだ、つまり……内部に“青の夜鳥”の関係者がいる可能性が高いのだ、それに君の働きや意思の強さはアイリーンから聞いている、アイリーンは……スパイだ、ヌーヴァル帝のお気に入りでな……アイリーンが必ず君を守ろう、だから君は、我々に協力するのだ、いいね?」
グインは断れず、それを了承することになったのだ。
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