影と光

 あくる日の昼下がり、やけにニコニコしているペペロ。決闘祭も終わり、静かになった街中。だが、街はやけに騒々しかった。というのも、昨日も夜鳥がでたというのだ。

「また城の関係者がやられたらしい」

「狙いはなんなのか、やっぱり滅ぼされたアルシュベルド人の復讐なのかねえ」

「まあ、子供が狙われないのが幸いか」

 と町行く大人たちは話しをしているが、耳に入っているのかはいっていないのか。ペペロはプラグとのお出かけを楽しんだ。

 プラグはそれが意外だった。パンを買って食べたり、洋服を見たり、贅沢などはできないが、それでも十分散策できるだけで楽しい。


 そんな様子を傍らで追跡し、見ている人がいた。子供にしては長めのコートをきて、遠くからじっくりと見つめる瞳、ふと深くかぶった探偵帽をずらすと、そこにあらわれたそれは、エリサの顏だった。

(べ、別に気になってない、ただ、プラグが心配なだけで……)

 と誰にいうまでもなく独り言をいって、二人のあとをつけていた。


 ふと二人は、教会によくにたコの字型の廃墟にはいった。二人で談笑していたが、夕日が暮れかかった頃、プラグに立つように命じて、ペペロは、プラグの正面にたった。

(どうしよう、緊張する)

 ペペロは両手を背中側に隠し、もじもじしている。

「?」

 ペペロは、その雰囲気をあえてこわすように突然に両手を突き出した。

「これ!!」

 それは小さな包みだった。

「あけていい?」

 プレゼントだと理解したプラグはそれを開ける。そこには、小さなオートマタ用の歯車が入っていた。

「お前のオートマタかなりオンボロだったからさ、使わないリペアパーツをやろうと思ったんだ、伝承だと、パーツには、それぞれの職人の魂が宿るらしい、それにこれには、私の魔力をこめたんだ……その、うけとってくれ」

「あ、ありがとう」 

 と返すとペペロは背中をむけそっぽをむいた。そして、二、三歩あるくとまた振り返っていった。

「いままで、冷たくしたり、暴力をふるったりしてごめん、本当はお前の、かつての姿や今の姿に憧れをもってたんだ、私がどんだけきつくふるまっても、ガッツがあったっていうか、だから、これからは少し優しくするから」

 そういって、ペペロはプラグに近づいて、彼の顎に手を当てた。

「!!」

 驚くプラグ


 その瞬間、エリサも建物の入口の影からみていたが、見るに堪えなくなり、胸が苦しくなり、道路側にとびだしていった、しばらく行った先で、道路に飛び出すと、すぐそばまでトラックが近づいてきていた。

「あっ……」

  

 その頃ペペロは、プラグの額にキスをした。

「だから、もしその気になったら、わたしともっと仲良くなってくれ」

 そういって笑うペペロ。プラグは、何も返せずぽかーんとしていた。その時だった。そのトラックの急激なブレーキ音を聞いたのは。

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