決着

 二人は向き合い、お互いにオートマタを決闘台にセットする。ペペロはいつになく真剣で、心臓の鼓動が伝わってきそうなほどの気迫で見つめてきた。セットすると、意外にもあの声が突然流れてきた。

“プラグ、プラグ”

「お前は……」

“ルケだ、この前話しかけた時は、俺の“創造者”の声だったが”

「話せるのか?」

 目の前のオートマタをみて、驚愕するプラグ。

“俺はうれしいぞ、プラグ”

「何が?」

“お前がさっき俺に力をこめただろう、お前の力を使い戦うことができる”

「……」

 何がそんなにうれしいのか、と同時に、なぜこいつには自我やこうしたテレパシー能力があるのかと疑問に思うのとまた声が続いた。

“お前はずっと力を抑えてきた、解放の機会が必ずくる”

「!?」

“お前はそんな事はないと思っているだろうが、その時は必ずくる、なぜなら、誰もが力を持て余し、その開放を欲しているからだ”

「……」

 この時から、何か現実感が遠のいていった。このオートマタ、ルケが何かとても恐ろしいものに感じるようになったのだ。


 対してニコニコとしているペペロ。ルカをじっとみると、にやり、と笑った気がした。

「お前……」

“本気を出していいか?相手のオートマタを破壊しても?……”

 プラグは、その時頭の中でビジョンが見えた、ペペロのオートマタが破壊され泣きわめくペペロと、皆がプラグを恐れている光景を。

「ダメだ!!」

 シーンとする会場。プラグはそこで今自分が声に出して叫んだのだと気が付いた。プラグが謝罪すると、試合の段どりは進められ、戦いが始まった。

「お前は、悪魔なのか……」

“悪魔?お前こそ、業を持っている、お前は計り知れぬ業を持っている、だから強い”

「ダメだ、普通に戦え“本気”なんて出すな」

“チッ、いいだろう、まあ、従おう”

 ペペロは珍しく距離をとってオートマタを眺めている。試合は白熱し、一進一退が続く、だがペペロはプラグの異常に気付いていた。ぶつぶつとしゃべっているし、試合に集中していない。ペペロは横からプラグに近づいていった。

「なあ、プラグ、私は本気であんたに勝ちたいんだ、本気のあんたに、本気をだせ」

 その瞬間、ふと自分の体の中から、熱いものがこみあげてくるのを感じた。それと同時に、プラグのオートマタ、ルケが鋭いモーター音をあげて、ペペロのオートマタ、グラッツが押されている。ペペロは悔しそうな顔をしながら、それを応援した。

「いけ、おせ、押し返せ!!」

 プラグの本気を見たようで、うれしそうなペペロ、だから、それをみて一瞬安心した。それがいけなかった。プラグは自分の中から、狂気の感情、相手オートマタを破壊したいという感情が沸き上がってくるのを感じた。それと同時だった。ペペロが叫んだ。

「グラッツ!!!」

 ペペロのオートマタの右腕が、プラグのオートマタの槍に貫かれて、はじけ飛んだ。騒然とする会場、おどおどとする司会。しかしいった。

「ペペロ、どうする?」

 沈黙するペペロ、だが前をむいていった。

「続けて……」

 それからは圧倒的だった。ペペロが何をしようと圧倒され、プラグは涼しい顔をしてそれをみている、だれもがプラグの勝利を確信し、ペペロのオートマタは、ついに台の際までおしだされ、やがて決着がつくかと思われた瞬間。

 プラグは泣き顔のペペロ―その背後に、ここ数日姿を見なかった、シスター・マルグリッドの姿をみた。それは数人の探偵と話している姿で、ほっとしたのだ。

「よかった……」

 と同時に脳内で声が響く。

“待て……意識を集中しろ……”

 ふと台に意識をもどすと、プラグのオートマタルケは、反転して姿勢を正したオートマタグラッツに台の外に押し出され、敗北した瞬間だった。


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