第30話 入学式へ

 グリエル英傑学園の入学までに、なんとか嘆きの地下迷宮を踏破することができた。


 私達は王都にある屋敷から、豪華な専用馬車に乗りながらグリエル英傑学園へ向う。


 入学式に出席するのは、私と従者を合わせた4人と、秘書官のミネバに執事長のシオンと、ルミナスの森で私に代わって統治してるフランシスコの3人が同行する。


 学園の正門に馬車が到着すると、御者を勤めたアマンダが扉を開けて、ミネバを先頭に全員が馬車から降りる。学園の関係者が講堂へ誘導してるので、私達は講堂を目指して歩いて行くと、1人の男性が私達の方に近づいて呼び止めた。


「アリス.フェリシアさんはどなたでしょうか?」

「私は秘書官のミネバと申します。アリス様に何かご用ですか?」

「はい、アリスさんは首席合格者なので、新入生代表の言葉をいただきたいと事前に報告させてもらいましたが、こちらの手違いで新入生総代を立てる事となりました。なので、新入生代表の件はなかったことでお願いします」


 いきなり現れた男性は、私の確認もせずに新入生総代を立てたから、新入生代表はなかったことにすると伝えたのだった。私としては面倒事がなくなって良かったと思ったんだけど、ミネバ達は男性に対して怒り気味に抗議した。


「それは!余りにも失礼ではありませんか?」

「はっ?平民風情が何を言ってるのですか?ここは世界最高峰の学び舎である【グリエル英傑学園】なのですよ。その学園の入学式というめでたい日に、平民が新入生代表なんてえりえないでしょう」


 私が平民ということで、完全に見下すように突っぱねてくると、フランシスコはグリエル英傑学園の創設者が残した言葉を例に上げて問いただした。


「全てにおいて平等であれ。学園を創設した勇者様のお言葉は無いと言うことなのですな?」

「はぁ~、それは表向きな話ですよ。実際は高貴なる存在である我々貴族が、愚民ども導いてやってるのですよ。平民が我々に口出ししないでいただきたい。そういうことですから失礼します」


 これ以上の会話は無用といった感じで、男は振り返ることなく講堂へと去って行った。まぁ、私にはどうでも良いことなんだけどね。ただ、私以外の全員が完怒っているようなのでなだめる。

 

「まぁまぁ、あんな面倒なことはさ、高貴なる貴族様たちに任せちゃえば良いんじゃない。さぁ、早く講堂へ行くよ」

「「かしこまりました……」」


 みんな悔しそうな感じだ。新入生代表の晴れ姿を楽しみにしていたから、私としては面倒なイベントを回避できて嬉しいんだけどね。


 私達が講堂へ着くと、新入生席と保護者席に分かれる。私達がSクラスの席へ向うと、既に6人が席に着いていた。この人達が私のクラスメイトになるのかと思い目を送ると、1人だけこちらを睨んでいた。


(あっ、これはスルーするのがいいヤツだ)


 なんか面倒臭そうなので、視線を合わせず完全にスルーして席に着いたの。

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