第25話 ダンジョン三昧①

 年が明けて、私達はグリエル英傑学院に入学する日が近づいてきた。


 入学までの間は、ユーザニア市にあるダンジョン【嘆きの地下迷宮】の攻略を続けた。最深部となる30階層の完全踏破を目指して、ダンジョン三昧の生活を続けていたの。


 従者の成長を確かめる為に、以前は全く歯が立たなかった20階層のボス部屋に、何度も挑戦してははね返されたけど、少しずつ自力をつけたことで、少しずつ勝利が近づいてきた。


「さぁ、1ボスに挑戦するよ。ゼシカの指示で戦うからよろしくね」

「かしこまりました。アリス様は死霊王ワイトキングを押さえてください。私とアナで右のキメラを倒すから、リューネはそれまで左のキメラを頼むわね」

「「OK!」」


 ゼシカは、ボス部屋に入る前に全員へ指示を出した後に、扉を開けて部屋の中へ足を進めた。


「作戦開始!アナ、私が弓で援護するから隙をついてヒット&アウェイで攻撃して」

「はい、姉様!」


 戦闘開始と同時に、ゼシカは右のキメラへ矢を速射して動きを封じる。踏み出そうとすれば的確に足元に矢を放たれて、思うように動けずに吠えて威嚇をするが、集中力が散漫になった隙を、アナのレイピアが的確に後ろ足を捉えては直ぐに距離をとる。


『シュッ、シュパッ』

「ガゥ、ゴルァ!」


 アナに気を取られて顔を後ろへ向けると、ゼシカは隙を見逃さずに風魔法を放った。


「そこっ!〚風槍ウィンドスピア〛!」

『グサッ!』

「グルァー!」


 風の槍がキメラの右目に刺さると、痛みで頭を上げて立ち上がった。無防備な腹部が露わになると、レイピアに火魔法を纏わせた魔法剣で切り裂く。


「姉様、流石だよ!〚炎剣フレイムソード〛!」

『ズバッ!』

「ゴルァーーーッ!」


 切り裂かれた腹部からは内臓が剥き出しになり、仰向けに倒れたところへ、ゼシカがトドメとなる風魔法を放った。


「決める!〚風砲ウィンドキャノン〛!」

『バシュンッ!』

「ゴッ……ガッ」


 ゼシカは、キメラが小さな呻き声を残して消滅したことを確認すると、直ぐにアナに指示を出す。


「直ぐに、リューネに合流するよ」

「OK!」


 リューネは大剣を構えて、キメラ相手に互角以上に渡り合っていた。多少の傷は負っているけど、それ以上にキメラは傷だらけになっていて、2人が合流すれば負けることはないはずだ。


「お待たせ!リューネはそのまま正面ね。アナは背後に回って足元を、私は横から矢を射って隙を作るから、隙を突いて全力の一撃を打ち込むのよ」

「「OK!」」


 ゼシカの指示が終わると、横と後ろの2方向から同時に攻撃をしかける。キメラは『チクチク』と攻撃をされて苛立つと、体を横に向けたことで最大の隙ができたので、リューネは全力で大剣を振り下ろした。


「そこっ!」

『ブチッ!』

「ガッ……」


 大剣が首を捉えると、切断されずにそのまま地面に叩きつけると、鈍い音の後に首が体から離れたのを確認したので、3人に声をかけて褒めたの。


「おぉ~、3人とも見事だったよ!悪いんだけどさ、死霊王ワイトキングを押さえようとしたんだけど、弱すぎて倒しちゃった」

「ありがとうございます。死霊王ワイトキングを瞬殺とは流石はアリス様ですね」

「次に挑戦する時は3人に死霊王ワイトキングを任せるね。少し休憩したら25階層を目指すよ」

「「かしこまりました」」


 今の3人なら死霊王ワイトキングを相手にしても、負けることはないと思ったので先へ進むことにしたの。この調子なら入学までにダンジョン踏破ができるかも知れないね。

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