うつぼかずら

文重

うつぼかずら

「私のほうがあなたより魅力的でしてよ。こんな肉感的な唇、ほかにどなたが持っていらして?」

「あら、あたしのほうがセクシーでしょ。この香しい匂い」


「ほうらごらんなさい。私のほうにどんどん集まってきますわ。もて過ぎるのも困りものですこと」

「ご冗談でしょ。皆、あたしのほうに吸い寄せられて来るのよ。だけど、こうひっきりなしじゃあね」


「何だか寒くなってきませんこと? もう少し向こうへずれてくれません? お日様の光が弱くて届きませんわ」

「日が沈むのも早くなったしね。そっちこそ、そこどいて。あたしが陰になっちゃうじゃない」


「ああ、喉が渇きましたわ。唇がひび割れそう。そういえば人の気配もしませんわね」

「前はウザイほど構ってたのに、ほったらかしって一番ムカつくわ」


「あなた随分お痩せになったわね」

「そっちこそ、しわしわじゃない」

「私、あなたにきつく当たり過ぎましたわ。許してくださる?」

「あたしのほうこそ、ごめんね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

うつぼかずら 文重 @fumie0107

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ