5.原因と追究―――スタートライン
「斧牛陸大……『大和の荒神』」
「そんな大層なもんじゃないんだけど」
「『暴力の権化』、『リテラシー征服者』『全人類共通の敵』」
「それは絶対言い過ぎ」
「『現代のチンギス・ハーン』! 女の敵!」
「いや、それは言いがかりだから」
「倒した相手の女を自分のものにして、世界に100人以上子供がいるって本当?」
「子供はいない!! 全部根も葉もない噂だ!!」
「でも、格闘経験がないのに、プロの格闘家や武闘家を全員倒したっていうのは本当でしょ?」
「まぁ……」
「道場破りして地上げしてたって本当でしょ?」
「それは嘘だ! こっちから仕掛けたことなんて一度も無いから!!」
最初は小学生の時。
同級生の喧嘩の仲裁をしたら、中学生の不良グループにリンチにあった。
だが、陸大はその不良グループを返り討ちにしてしまった。
それからはノンストップだった。
数が増え、年齢が上がり、格闘技の経験者が加わり、次第に生意気な小学生をしめる目的は薄れ、挑戦・度胸試しになった。
陸大が中学生のころ、地元の暴走族が勧誘に来て断ると、リンチに遭った。
陸大はそれを返り討ちしにした。
それからは半ぐれやら格闘家崩れが入れ代わり立ち代わり挑戦し始め、やがてヤクザが介入し始めた。
陸大はその全てを返り討ちにした。
高校生の頃になると、すでに『アンタッチャブル』として名が通り、挑戦者はプロの格闘家や武道家、武術家へとなっていた。
陸大は高校卒業後、日本を出た。
しかし、日本から追って来たものや、噂を聞いて挑戦する者が後を絶たなかった。
その挑戦者たちとの闘いの様子はSNSで拡散された。
「あはは、そりゃ壮絶な人生だったね」
「迷惑極まりない」
「まぁ、私が知っているのは10年前だからね。私は高校生のころ事故に遭ってね。そしたら急にこの世界に召喚されてさ。驚いたよ」
「君も大変な人生だな」
「いえいえ。これからの君ほどじゃないよ」
「え?」
「……そっか、自覚ないんだもんね。オークは魔物だから、普通に討伐対象なんだよ」
「話せばわかってもらえるのでは?」
「君が今話している日本語、通じませーん」
ドドはぽかんと口を開けた。
「英語もいけるぞ。中国語も」
「無理です。通じません。てゆーか、そういう問題じゃないから。君はゴキブリがしゃべったら友愛を抱ける?」
「その例えはひどいが、言いたいことはわかる」
ドドはようやく理解した。
自分がこの森を出て人間と暮らす未来はあり得ない。
「どうにかして人間に戻る方法はないのか?」
「たぶん、大まかに三つ考えられるね」
「おおー、お願いします。教えてください!」
「わ、素直―」
マリアは人差し指を立てた。
「一つは聖堂の法術。魔法の一種だけど聖属性魔法は魔を浄化する力があるんだ。まぁ、君が丸ごと浄化されちゃうかもしれないね」
自然ピースサインするマリア。
「二つ目は?」
「人間を庇護する聖獣様たち。彼らは元は魔獣や魔物だけど人間に寄り沿って生きている。だから普段は人間の姿をしているの」
「おお」
「でもこれは魔法による変身だから本質的には変わらないね。それに魔術は高度だから習得するなら一生かかるかも」
ドドは肩を落とす。
「三つめは?」
「闇の王ハラスを倒す」
ドドは首を傾げた。
「君をそんな姿にした張本人さ」
「おれを?」
魔獣と魔物の違い。それはその起源だ。
闇の軍が生み出した兵。それが魔物の祖と言われている。
ハラスには魔物を生む力がある。だからこそ、ハラスの討伐は人類の悲願なのである。
「わかりやすく言えば、魔王の呪いだね。解くなら魔王を倒すしかないけど……ハラスは強いからね。これまた難しい」
「おれは今まで、自分から戦いを仕掛けたことはなかった」
「うん」
「だが、おれをこんな姿にしたそのハラスには報いを受けてもらう」
ドドは決意した。
闇の王ハラスを倒すと。
「じゃあ、まずは言葉のお勉強からだね」
「え? いや、どうせなら魔法とか教えてくれ」
「あ、無理無理。君魔力無いから」
「……え?」
早速、決意が揺らいだ。
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