虫ガキはニコ姉の幼虫

青猫あずき

幼虫はやがて蝶になる

小学生が数人集まって虫取りをしているのを私はニコニコと眺めていた。

このクソ田舎で出来る娯楽などそれほど多くない。


虫取りはそんな数少ない娯楽の中では上等な遊びだ。

川遊びの次に楽しい。

もっとも私が幼稚園児の頃に、川で溺れた子供が出てしまったので、この辺りの大人は子供だけで川遊びをさせることはなくなったので、虫取りが子供にとって最高の時間ということになる。


じっと見ている年上の女性を不審に思ったのか、小学生たちは集まって何やら小声で話し始めた。

半袖から伸びる子供たちの腕は日に焼けて黒くなっている。

話がまとまったのか、子供たちは場所を変えることにしたらしい。

私は人を待っているから、ここに残らねばならないので彼らを見送ることにする。


水筒に入ったお茶を一口飲み、私は人を待つ。

都会へ行ってしまった友人が この夏戻ってくると話に聞いたので、旧交を温めようということになったのだ。


「すみません。人と待ち合わせをしているのですけど、この近くで大学生の男を見ませんでしたか?」


やれやれ、なんともピントのずれた声掛けをしてくる男だ。


「流石に大学生にもなると小学生の頃に遊んだ友人の顔なんて覚えていないかな?  待ち合わせの相手は私だよ」


「え? まさかお前……マコトなのか……マジで? 女?」


白いワンピース姿の私はどう見ても女に決まっているだろう。

まったく、だなんて漫画の中だけの話にしてほしいものだ。


さっきの小学生たちにもひとり元気のいい女子が混ざっていたので昔の自分のようだと思い眺めていたが…いやはや彼らもまた男子だと思って一緒に遊んでいるのだろうか?


虫取りをする子供をニコニコと眺めているお姉さんの正体は、男子にまじって虫取りをしていた少女の成長した姿なのだ。

いずれ、あの少女も私のように女だったと驚かれるのだろうか。


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