高校初の友達
突然だが、どうして教室で1人でいると憐れむような目で見られるのだろうか?1人が悪なのか?複数人でワイワイしていると正義なのか?否!そんなことない!
「…」
と、そんなことを心の中で思いながら今日も1人で本を読む。クラスのみんながチラチラとこっちを見ているような気がする。な、なんだよ、別にいいだろ1人でも!そんなこと言ったらあの子だって1人じゃないか!そう思い俺の2つ前の席の女の子を見る。その子はフレームの細い丸ぶち眼鏡をかけて本を読んでいた。その様はどこか昔の優里を思い返してしまいそうになる。
あの子、どんな本読んでるんだろ。
ふとに気になった。俺は自然を装い席から立ちゆっくりと前へ進んでいく。本を読んでいる少女は夢中で後ろから迫る俺に気づいていないようだ。怪しまれない程度に本の表紙を確認する。
「っ!ね、ねぇ」
本の表紙を確認した途端、俺は彼女に声をかけていた。
「…え?わ、私?」
彼女は話しかけられたことにびっくりしたのか眼鏡の奥の目を大きく見開いていた。
「あ、い、いきなり話しかけてごめん…」
「あ、えっと、それは全然いいんだけど…ど、どうしたのかな」
彼女は戸惑いながらもそう聞き返してきた。
「その本」
俺は彼女の持っている本を指差した。
「この本がどうかしたの…?」
「あ、えと…これ、面白いよね」
ガダッ!
どこからかそんな音が聞こえてきた。だが今はそんな音に気を取られている場合ではなかった。
なんと彼女と俺の持っている本が奇しくも同じ本だったのだ。そのせいで反射的に声をかけてしまった。
気づいた時には既に遅かった。緊張で今自分が何を言ったのか全く覚えていない。
またやってしまった。
「ご、ごめ…」
「…うん。これ、面白いよね」
彼女は丸ぶち眼鏡の奥の目を細めて優しくはにかみながらそう言った。
「だ、だよね…」
途端に恥ずかしくなり小さな声でそう言った。とても恥ずかしい。でもなんだか仲間が出来たような気がして嬉しかった。なんだか懐かしい気持ちになってしまう。
そして俺は気づく。ここで何も話さなければ、きっと気まずい沈黙がやってきてしまうと。何か、何かないのか…話を続ける何かは…
「あ、じ、じゃあ、これも知ってる?」
そう考えていると彼女の方から話しかけてくれた。彼女は机の中をまさぐり1冊の本を取り出した。
「え?そ、それって…」
そこにあったのはかなり硬派なファンタジー作品として有名なラノベだった。女の子があまり読まないようなタイプのラノベがそこにはあった。
「知ってる?」
「も、もちろん」
「ほんと?面白いよね」
彼女は先程と同じような笑みを浮かべながらそう言った。彼女の笑顔を前にするとドキリとしてしまう。
優里はファンタジー要素がある小説を全く読まなかった。だからファンタジー作品の話が全く出来なかった。だが目の前の少女は読んでいる。なぜだかその事に嬉しさを感じた。
「う、うん。特にあのシーンなんか…」
「あ、分かる。あそこは熱かったよね」
騒がしい教室の中、俺たちの声は全てその喧騒にかき消される。だが目の前の少女とだけは会話出来た。
時間を忘れて会話していると次の授業が始まるチャイムがが鳴った。
「え、あ、もうこんな時間…」
「あっという間だったね」
俺と彼女は目を合わせて笑いあった。同じ趣味を持っている人と話すことが楽しい。その事を久しぶりに思い出した。
「俺、
「私は
俺は今日、高校に入学して初めて友達が出来た。
【あとがき】
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