変わった彼女に耐えられない!
Haru
陰キャと陽キャ
「あ、えと…これ、面白いよね」
今でも初めて彼女に話しかけた時のことを覚えている。
「えっ?あ…」
俺に話しかけられたフレームの細い丸ぶち眼鏡をかけた彼女は大層驚いた顔をしていた。それでも自分が興味を持っているものに反応を示して貰えたのが嬉しかったのかどこかうずうずしていた。
俺は人と話すのが苦手だ。でも彼女の持っていた本は俺の好きな本だった。特にそれだけが好きだという訳では無いが、数ある好きな作品のうちの1つだった。
「…ご、ごめん。急に話しかけたりして」
俺たちの間には気まずい沈黙が流れていた。そんな空気に耐えきれなくなってそう言う。そのまま立ち去ろうとすると
「お、面白いよね。これ」
それが俺たちのした初めての会話だった。
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「今日の放課後どうする?」
「あ、この前出来たパンケーキのお店行きたい!」
「お、いいねぇ」
学校が終わりみんながそんな華やかな会話をしている。
「…」
俺はそれを遠目で眺めている。俺には全く縁もゆかりも無い話だから。ははっ、自分で言ってて悲しくなるなぁ…俺は友達と言える人が居ない。もし俺に友達と言える人がいたとするのなら、それはきっと中学生の頃の1人だけだろう。そんな彼女ももう居なくなってしまった。
「
「うん、もちろん行くよ」
優里と呼ばれた1人の女子生徒に目を向ける。黒く艶のある長髪にナチュラルメイクがされていても分かるほどに整っている顔。更に勉強はできるが運動は苦手というギャップ付き。更に更にモデル顔負けのプロポーション。誰がどう見ても美少女だ。もちろん彼女はクラスの中心人物でこの学校1可愛いと言われている生徒だ。
「…」
まぁそんな彼女と俺に関わりがあるわけが無い。ジメジメとした日陰でひっそり生きている俺と太陽の元で輝きながら生きている彼女は全く違うんだ。
それでも少し昔のことを考えてしまう。きっと誰も考えたことがないんだろうな。
中学生の頃の彼女は今と全く違った。目元が隠れるほどに伸びた前髪、フレームの細い丸ぶち眼鏡をかけどんな目をしているのかも分からない。背中は少し猫背になっていていつも1人で本を読みながら隅っこで過ごしていた。俺と同じような生徒だった。だから俺は優里に声をかけることが出来たんだ。きっとこの子も俺と同じような人なんだと思ったから。
それからは仲が良かった。趣味が合い良く話をするようになった。休日には一緒に本を買いに行ったりすることもあった。純粋に楽しかったし、多分…いや、俺は確実に優里に恋心を抱いていた。
でも優里は変わってしまった。違うな。こんな言い方は失礼だ。優里は変わることに成功した。きっと俺が想像も出来ないほどの努力をしたんだろう。高校1年生の入学式で俺は優里を探した。同じ高校に進学することは知っていた。だから張り出されている紙をよく探した。すると俺と優里は同じクラスだった。それを確認して教室に向かう。だがそこには優里が居なかった。
見間違えたか?そう思った。だが自己紹介の時に優里を確認することが出来た。
「久川 優里です」
そう言った彼女は俺の知らない人だった。
「あ、ちょっとどいてもらっていい?ええっと…赤峰君」
「え?あ、う、うん。ご、ごめんね…」
突然後ろから話しかけられて俺はしどろもどろになりながらそう返した。それと俺の名前は赤峰じゃなくて彩峰です…
まぁ俺のクラスでの立ち位置はこんなもんだ。優里はクラスの中心人物。対する俺は中学生の頃から何も変わってない。現実はそんなものだ。これからも俺は日陰者としてひっそり暮らしていくよ。
「
「ん?優里なんか言った?」
「…ううん。なんでもない」
「そう?なら早く行こ」
「うん」
【あとがき】
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