第36話 スネーク連合のラミアとメデューサたち
豊かな森を抜け、林の中を歩く僕ら。
ローナは言う。
「結構歩いたわよね、そろそろかしら」
ハンスも「少し開けた場所が見えてきたぞ」と言う。
すると、木で出来た家々や岩山に穴がいくつも開いた集落に着いた。
そこから出てきた魔物。
「なによ? あんたたち」
蛇の下半身を持つ魔物、ラミアだ。
ローナが率先して答える。
「この辺りで起きてる問題を聞いてきたの。話をさせてもらえないかしら」
それを聞いたラミアの後ろから、ゾロゾロと村の魔物が。
ラミアたちと、髪の毛が蛇になってる魔物、メデューサだ。
最初の一人のラミアが言う。
「随分変わったパーティーみたいだけど、わざわざ首を突っ込みに来たの? ご苦労様ね」
後ろの魔族も「なんだなんだ?」「敵か?」「人間じゃないの?あいつら」と険悪な雰囲気を出している。
一応ローナについては外見を見て亜人か魔物だと判断したらしく話だけは出来そうだけど油断はできない。
メデューサのまとめ役とおぼしき女性が言う。
「あんたは亜人か魔族か…でも後ろのもんは私達が嫌いな奴らのニオイがするわ、特にそこのでかい女」
メデューサは隊長の事を睨む。でも隊長は悠然と構えるだけで抜剣すらしない。
そんな隊長が気に障るのかメデューサは言う。
「気に入らないね、全員まとめて取って食っちまうのが早いかもしれないね」
一触即発だけどローナが割って入った。
「ちょ…ちょっと待って…わ、私たちは使者として来たのよ…」
ラミアは眉をひそめ言う。
「使者?」
「そ、そうよ…私たちは大使の…」
それを聞きハンスは「馬鹿!」と小声で止める。そして言う。
「人間の大使の仲間だと白状してどうする」
だがメデューサは意外な反応をした。
「魔界からの使者なのか?」
…
ローナはたじろいだあと、言い出す。
「そ…そうよ! 私は魔界の使者! 大使の知り合いでもあるけど!」
「…」
「そんで後ろの人たちは私達の家来!」
「…」
「魔界からこの辺りの問題について確かめに来たのよ!」
…
メデューサの勘違いから始まった会話だが、相手は疑っている。
「こんな子供が?」「怪しい奴め」「殺してしまおう」
口々にそんな事を口走る。
ローナはたじろぐ。
ハンスも「ヤバイ雰囲気だぜ」と警戒感を高ぶらせた。
でもメデューサの一人が言う。
「待てよ、そう言えばなんか見た事あるぞ」
驚きの証言にみんな注目する。
「あれはたしか…魔界のどこかで…貴族たちが集まる時だったか…」
その言葉にローナが言う。
「そ、そうよ…私は貴族! 魔界貴族の娘よ!」
ざわざわ…
驚きと困惑に包まれる魔族たち。そんな彼女たちに畳みかける。
「魔界は魔族同士や魔物と亜人の衝突に憂いを感じているわ。だからそれを解決しに来たの」
ざわつきは最高潮になる。ラミアの一人が言う。
「分かったわ。それじゃ、話だけはしてみないとね」
こうして僕たちは話し合いの取っ掛かりを得たのだった。
ローナはさっそく聞いて、やりとりしてみる。
大使がなんらかの体調不良を訴えている件も合わせて伝える。「それじゃ、揉め事の件なんだけど」
そう言うとラミアは言う。
「大使は治療中なのね。それはそうと、揉め事はアイツらが悪いのよ」
「あいつらって、カエルたちの事?」
「そうよ。ここら辺は元々私達が居たのに、あいつらってば勝手なのよ」
「随分ご立腹みたいね」
「もちろんよ。カエルでしょ? だから水場を都合よく使い始めてさ。それで懲らしめてやろうとしたりしたけどね」
「それが争いに発展したのね」
メデューサも言う。
「まあ私達に勝てるはずないけど、意外としぶとくてね。それで仲裁を買って出る奴が居たからお願いしたのよ」
ハンスが聞いてみる。
「それが大使か」
「そう。あんまり争いを続けると人間の冒険者やギルドに目を付けられて討伐クエストを組まれても困るから。それで仲裁役は同じ種族だとまずいから、亜人の血が流れる人間にしたのよ。ここら辺ではギルドにも顔が効く大きな家柄の人物でね」
「じゃあ、成り行き次第じゃ手打ちにしてもいいよな」
そう言うハンスにメデューサが言う。
「どうだかね。私は嫌いさ。あんな連中。弱いっちいのは足手まといだ。人間と戦いになったら戦力になる奴じゃないと」
それを聞くラミアは言う。
「ちょっと、やめなよ」
「ふん!」
ハンスはやりとりを見て言う。
「そっちにも色々ありそうだな」
ラミアは「まあね」と返す。
ローナも言う。
「手を貸すから少しだけ待って。必ず良い、なんていうか、その、乗り切り方を見つけるから」
隊長は言葉を添える。
「今、性急で中途半端な解決策をするより、しっかり調べて打開できる改善策を用意する」
「…」
ラミアとメデューサたちは顔を見合わせる。それからラミアは言う。
「そういう事ならお手並み拝見と行こうじゃないか。でもあまり時間は掛けないでね」
僕らは静かに頷いた。
それを横目にラミアの後ろに居るメデューサはいまだ不満げに小さく「チッ…」と舌打ちしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます