第30話 解決と今回のエピローグ
宿屋で報告すると隊長は言う。
「イオウが炭鉱から流れてスライムが吸収したのは明白だ」
ハンスも答える。
「水質検査で検出されてないのはスライムが吸収してしまったからですね」
隊長は厳しい顔でハンスに指示を出す。
「強制捜査の令状を請求しろ。証拠を押収して追及するぞ」
ハンスは調停官の立場を利用して準備してくれた。
必要な令状と国の人たちで捜査班が組まれ開発会社へ。
なだれ込む捜査陣。
こうして事件は解決する事になる。
証拠品は押収され従業員も証人喚問へ招致された。
そこからは全てが明るみになるのは早かった。
王国の捜査が入った会社はすぐに言い逃れ出来なくなり罪を認めた。
捜査が終わった後、隊長は僕に言う。
「お前の手柄だ。匂いの件、よく気付いた」
「え?う、うん」
「細かな観察は調査の基本だ。その姿勢を忘れるな」
相変わらず冷静な表情で言う隊長だったけど僕は初めて褒められてとても嬉しい気分になった。
全部が終わった後、僕とローナは小川の水源へ。
そこでクイーンスライムに事の顛末を話した。
でもクイーンスライムは優しく言う。
「毒性のあるスライムも綺麗な水のトコへ戻せば毒気も抜けて元に戻るから心配いらないよ」と言ってくれた。
「ごめんね、なんか人間たちのせいで…」僕は謝りながら言うとクイーンは続ける。
「律義な人間も居るもんだね。これなら仲良くできそうだ。これからもよろしくねぇ」なんて言ってくれた。
僕はまたしてもなんだか嬉しくなってローナと笑顔で山を降りたのだった。
最後に、今回の騒動を解決したと言う事で、王国の大臣からお呼ばれをされる僕ら。
王宮に赴き会議室の部屋へ。
そこには大臣と執務官らしき数名の男たち。
大臣は言う。
「よくやってくれた」
隊長はいつも通りの対応をする。
「大方は片付いている。報告書を出すから確認を」
そう言うと大臣は笑顔になり言う。
「後処理の方は国にまかせてくれ」
そんな風に言いながらハンスと僕、ローナの方を見る。
「その方らも良い働きをしてくれた。感謝しているぞ」
そんな風に言われ僕らも嬉しくなる。
冒険、というか正式なクエストでもなかったけど、やっぱり国や人の役に立つのは嬉しいと思った。
大臣は続ける。
「褒美の方など、あとで連絡する。それにしても迅速だったな。スライムと共に人間が絡んだ事件だったが、その手腕…感服である。調停官のハンス以外は見慣れぬパーティーのようだが中々どうして…どのような手管を使ったのか…。諸君らはさぞ腕の立つ者なのだろうな」
そんな言葉を聞いた隊長は言う。
「特別な事はしていない」
「そうなのか?」
そう尋ねる大臣に、隊長は珍しく少し笑顔を浮かべてこう答える。
「スライムと大親友な奴の手を借りた」
その言葉にハンスは渋い顔をしだす。
大臣は言う。
「そのような者が居るのか」
「国で働いてる人物だ」
隊長がそう答えると大臣と共に執務官がどよめき始める。
「魔族と親友?」「スライムと人間が?」「どういう事だ…」
大臣も驚いている。
「ここで働きながら国に内緒で魔族と親交を深める者が居るだと…?これは調査して問い詰める必要もあるか…?」
隊長はクスクスと笑いそうな笑顔で言う。
「この調停官がよく知ってる。詳しく話を聞くといい」
「そ…そうだな。ハンスよ。すぐに事実確認をしようぞ」
ハンスはまずい、という顔をしてるけど隊長は言う。
「では我々はこれで。行くぞ、ラルス、ローナ」
ハンスは「ちょっ…隊長…」と言いかけるも大臣に「さあ、話を聞かせるのだ」と捕まってしまった。
退室する僕ら。
こうして事件は解決した。
ハンスがちょっとだけ可哀想だったけど、隊長の楽しそうな顔が見れた僕は「こんな風に笑うんだね」と思ったりしたのだった。
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