第19話 登録
ファイアフィルドから戻った僕らはアルテアに帰ってきていた。
王都で宿を取り、部屋で話す僕ら。
ハンスが僕に聞く。
「そんで、これからどうすんだ?」
「え?どうするって…隊長に付いて行くつもりなんだけど…」
「…お前ノープランかよ」
呆れるハンスだったけど隊長がハンスに言う。
「大まかな手順ぐらい説明してやれ」
「え?俺がですか!?」
そう驚くと僕では無くローナが言う。
「ハンスも分からないんじゃないの?ずーっとお役所仕事しかしてないみたいだし」
「お前な、馬鹿にするなよお子様共め。いいぞ教えてやる。そうだな、とりあえずギルドに冒険者登録してないだろ」
あ…と僕らは止まる。
「色々便利だから登録しておけ。それからまずはレベルアップを目指しつつ、クエストをこなしたりしながら…、う~ん、それで勇者を目指すんだから、実際に今居る勇者に会ってみればいいんじゃないか」
「勇者に会うって、簡単に出来るのかな」
「やってみなきゃ分からんな」
「どこで会えるんだろう」
「それを調べるのも冒険だが、まあ有名な勇者が何人か居るから、活躍してる土地へ行ってみるのがいいだろ」
「なるほど」
「まあ、今はギルドの雰囲気とか駆け出し冒険者の気持ちを堪能しておけよ」
「そうだね、地道に行く事にするよ」
ハンスはローナに言う。
「お前も登録して来いよ。何かと便利だぞ」
ローナは頷きながら「それじゃ、ギルドへ行きましょう!」という言葉に隊長は返す。
「ハンス」
「付き添いですね…ハイハイ」
こうして3人でギルドへ向かった。
「大きいわね…」
僕はローナに「大丈夫?怖くない?」と気遣う。
「うん、冒険者が一杯居るけど平気よ」と返した。
冒険者がたくさん居るギルドの中で3人で固まって歩く。
王都の中のギルドだけあって広くて人が多い。
そんなギルドの受付で僕は言う。
「すみません、冒険者登録をしたいんですけど…」
すると受付の女性は返事をしてくれる。
「はい、初心者の方ですね、では必要事項を記入して下さい」
短めの髪に片方だけかなり小さいおさげをしてる可愛い受付の人は丁寧に対応してくれる。
色々と聞いたり書いたり、ローナと二人で説明を受けて少しして…
「はい、ではこれで登録が終わりました。低ランク向けクエストは掲示板の右寄りに掲示してますのでどうぞ」
「ありがとう、お姉さん」
「頑張ってくださいね」
そう言われてハンスの所へ。
「出来たよ、登録」
「おう、そんじゃさっそくクエスト見てみるか」
ローナは「何があるのかしら?」とワクワクしてるような感じだ。
「お前ら向けの野草の収集や魔石のかけら探しとかあればいいんだがな…」
そんな会話をしながら掲示板へ。
ハンスは「どれどれ…簡単そうなクエストは…」なんて言いながら掲示板を眺める。
僕も一緒に見るけど端っこに貼られた一枚の紙に目が止まった。
そこには”注意!狂暴なスライム目撃あり”と書かれていた。
「ハンス、これなんだろう?」
「うん?なになに…クエストではないが急告のようだな」
言いながらみんなで見る。
まずハンスが読み上げる。
「付近にてスライムに襲われた情報あり。被害者一名」
ローナも続けて読む。
「場所は…少し北東に行った小川…ふ~ん、冒険者や釣り人は注意の事…だってさ」
そんな情報に僕は言う。
「なんだろうね、確認した方がいいかな」
ハンスも同意してくれる。
「大した事は無いと思うが受付で聞いてみるか」
僕らは再び受付へ。
「すみません、掲示板のスライムの件なんですけど」
「はい、最近の魔物の目撃例の掲示ですね。警鐘を鳴らすために出してます」
受付の女性は詳しく対応してくれるのでハンスが尋ねてみる。
「襲われたのは冒険者か?」
「いえ、釣り人のようですが」
「話を聞きたいんだ、名前と住んでる所は聞けるか?」
「まだクエストや襲われた本人からの依頼では無いので、個人の情報については…」
そこまで言われた所でハンスは調停官の身分証を見せながら言う。
「俺は調停官なんだ、少し調査したいと思ってる」
「あ、そういう事ですか…」
「シッ!静かに頼むぜ。何かが起こってるなら大事になる前に片付けたいんだ。な?頼むよ。国の方への調査申請はこっちであとで出しとくよ」
「…う~ん…それなら…」
受付の人は少しだけ渋りながらも「少々お待ちを」と奥へ消えていく。
ほどなく…「お待たせしました、こちらですね」と言いながら資料を持ってきてくれた。
それをみんなで確認する。
ハンスはぶつくさと声に出しながら読み上げてくれる。
「なになに…名前に家の場所…お、すぐそこじゃねえか」
ローナも見ながら言う。
「被害は軽傷、右上腕すり傷…大きな怪我はないみたいね」
僕はハンスに聞いてみる。
「どうする?この人の所へ行ってみる?」
だけどハンスは言う。
「一度隊長の所へ戻るか…それからだな」
資料を返しながら受付の人に「ありがとう」とお礼を言いながらギルドを出る事にした。
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