第2章 吸収

第18話 遭遇

これは、僕が見ている風景とは違う場所。

ある一人の男性の光景から物語は始まる。


のどかな時間が流れるアルテア大陸の真ん中。

人々はそれぞれの時間を楽しむ。

ある人は牧場で…

ある人は森で…

動物の世話や野草を摘む作業に勤しむ。

そんな日常の中、同じように日常を過ごす一人の男性。

麦わら帽子をかぶり、軽装で外出しているその姿は冒険者ではないようだ。

どこにでもいるそんな普通の人は川辺の近くに腰掛ける。

そして釣り糸を垂らす。

ここはアルテアに流れる川の一つ。

小川と言うには大きく、大河と言うには小さい普通の川。その川は人間にも動物にも憩いの場所だ。

もちろん、その中に住む魚にも。


「よっこらせ…今日は中々いい結果になりそうだ」


そんなセリフを言いながら用意する。

針には餌。足元には釣り上げる際、魚が大きかった時の為の抄う用の網。

休日の楽しみだろうか?笑顔で用意をする男性。

準備も万端。いざ戦いへ…

…なんて大袈裟な物でもないが、釣り糸は水中へ。

チャポン…と音と共に水面に広がる波紋。

穏やかな時間は過ぎていく。


「どれ、美味しい餌への食いつきに期待しようかね」


そんな風に言いながら川を眺める。

あるいは長期戦だろうか?そんな考えもあるのだろうか?

だが準備は万端だ。

水筒も弁当も持参。隙の無い用意だ。

ほどなく…


「きたっ!」

釣り竿を勢いよく上げる。

その糸の先には元気そうな1匹の魚。

「よ~しよし…幸先がいいな」

手元へたぐり寄せ、針から魚を外し魚籠へ。

上機嫌で次の魚を釣り上げるべく、餌を付ける。

「いい調子だ。このまま行けば晩飯以外に魚屋に売る分も釣れるかな」

などと楽しい予想をする。

再び水の中へ落とされた糸は静かに魚を待つ。

男性が笑みを浮かべながら待つゆったりした時間。

そんな時間が続くかに思えた時…


ポコポコ…


水面に小さな泡が…

だが男性はまだ気付かない。

やがて泡は徐々に大きくなり、水面が盛り上がり始める。

「ん?なんだ…?」

やっと気づいた時、水面は大きく盛り上がりそして人の顔程の大きさの水の塊が飛び出した。

その塊が音、いや叫び声だろうか?「ギー!」と叫ぶ。

「うわ!」

たまらず叫び声を上げる男性。

叫び声の主は1匹のスライム。

釣り人はそのスライムに突然の襲撃を受ける事になったのだった。

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