第13話 再聴取

下山した僕らは王都へ戻る。

隊長が「副主任に会うぞ、確認したい事がある」と言うので研究所へ。


レヤード副主任は隊長の姿を見て言う。

「な、なんですか…もう話す事は話しましたよ」

隊長は何も言わずにハンスが言う。

「そうビビるなよ、ちょっと聞きたい事があるだけだ」

怪訝な表情になる副主任だけど隊長が構わず続けてやりとりする。

「博士と揉めた時の事を誰かに話したか?」

すると副主任は答える。

「え、ええ…まあ…事情を聞かれて」

「揉めた内容についてもか」

「それは当然聴取で聞かれるので」

「じゃあ、博士が精霊か魔族の力を借りた魔道具を作ろうとしてた事も喋ったんだな?」

「…」

隊長の問い詰めに黙ってしまう副主任。

今度はハンスが聞く。

「黙ってても事件は解決しないし博士も帰ってこないぞ」

なおも押し黙る副主任に隊長が聞く。

「なぜ難しい顔をする?言いづらいのか?」

するとようやく、重そうな口を開く。

「研究内容まで喋った事を後悔しています」

「なぜだ?」

そう聞く隊長に説明を始める副主任。

「研究内容は研究者にとって命。それを国の上層部とは言え漏らしたという事が…」

その言葉に隊長は言う。

「揉め事の聴取は双方とも行うんだろう?ある程度は博士も喋っている筈だ」

「はい…結局私が喋った事は博士にも伝わりまして…」

「ただでさえ揉めてるのに仲違いのような感じになったか…」

「いえ、一応は許してもらえました。でも博士は調査対象のような感じになりまして…」

それを聞きハンスが言う。

「マークされるようになったのか」

「…」

隊長は「分かった」と短く言う。

ハンスも「聞きたい事はそれだけだ、じゃあな、アンタも気を付けろよ」と続けた。

「…はい」と肩を落とす副主任。

そんな中、隊長は告げる。

「ハンス、少し掘り下げるぞ」


資料室で紙の束を確認する僕ら。

「ハンス、何か見つかったかな?」そう問いかける僕にハンスが言う。

「やっぱり、調査が入ってるな、隊長、見て下さい」

そう言いながら一つの資料を隊長とみんなに見せながら説明するハンス。

「博士は調査対象として国軍の動きがあります。恐らく尾行調査の手配でしょう。

主に研究内容や素材収集などで研究所の外へ出る時に何をしているか調査されていたようです」

ローナは少し残念そうな顔で言う。

「国の為に研究してるのに信用されてないってなんだか可哀そうね」

ローナのそんなセリフを聞きながら隊長は続ける。

「しかしこれで国は博士の研究を知っていた事になる」

ハンスも言う。

「ですね。おおよその把握はされていたんでしょう」

そこで僕は言ってみる。

「でも、それなら博士は精霊に協力して貰ってただけで魔族を利用するかもしれないって噂は否定されたんだよね?そこはいい事なんじゃないかな?」

その言葉にハンスが返す。

「まあな、でもそれだけじゃ済まないから今の事態なんだろ」

隊長は言う。

「これから二手に分かれるぞ」

「隊長、何か考えがあるの?」

「イフリートが鍵だ」

隊長は何かを掴んだようだった。

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