第14話 分担作業その1

資料室を出た僕らに隊長が言う。

「ハンスとローナで国内と上層部の情報収集をしろ、ラルス、お前は私と一緒に来い」

「何か目星がついたのかな」と聞くと隊長は僕へはただ頷くだけで、ハンスには調べる資料の指示などが書かれた物だろうか、紙きれを渡した。


こうして私、ローナはヴァリーとラルスと別れハンスと一緒に王様の元へ。

ハンスが言う。

「王様、資料の確認をしたいのですが…こちらが用意して欲しい資料です」

そう言いながら提出して欲しい資料の一覧が書かれた紙を渡すハンス。

「うむ、どれ…」と、目を通しながら答える王様。

「書庫の当番に見せるがいい。対応してくれるだろう」

「ありがとうございます」

王様へのお願いを終え、書庫へ。

ハンスは「悪いな、この資料を出してくれ」と申告する。

当番者の若い女性は「お待ちください」と奥へ。

ハンスは私に言う。

「それじゃ情報確認の仕方を指南してやる。しっかりついて来いよ」

「まかせて!魔法とかは未熟だけどせめて資料確認ぐらいはきっちりやってみせるわ」

「いい姿勢だ」

そんな会話をしてるとさっきの人は箱一杯の紙束を持ち帰ってきた。


「ちょっと多いですが…」

目の前に置かれた書類の束に私は言葉を失う。

「お城の外への持ち出しはご遠慮くださいね」

そんな言葉を掛けられるがなんだか上の空だ。

ハンスは「よし、そこの机でさっそく取り掛かるぞ」と腕を鳴らす。

私はややげんなりしながら付き合うことになった。


そんな私にハンスが言う。

「まず俺がやってみせるからな」

「何を探せばいいのかしら」

「そりゃまあ…研究所関連だな。あとは議会の議事録だ」

「う~んと…こっちの資料かしら」

紙束を取り出す。

「よし、じゃあ始めるか」

パラパラとめくる。

ハンスはそれらを見ながら私に説明してくれる。

「この研究所の資料だが、まずは予算や研究内容を見るんだ」

「ふ~ん」

「この手の資料は突然使うお金が増えたり、減ったりしてる所がないか、とかそんなのを注意しながら見るんだ」

説明を受けながら二人で見る。

パラパラ…

「何か見つかった?」

「まだ見始めたばかりだろ…」

「長くなりそうね」

「お前がこの手の調査に慣れてくれば二人掛かりなんだがな」

「はいはい、早く基礎が出来るように頑張るわよ」

「勉強熱心で大変よろしい」

「手掛かりを見つけてヴァリーとラルスをびっくりさせましょ」

私は意気込みを見せながらハンスと作業を続けた。

いくつかの資料を読み終え、新しい資料を見ている時。

「う~ん…中々見つからないわね」

「地味な作業だからキツイだろ。もうギブアップか?」

「ま、まだまだよ。さ、次のページをめくりましょ!」

「負けん気だけは一丁前だな。寝ててもいいぞ。あとで隊長に楽しい報告が出来る」

「ノーギブアップよ!私の戦いはまだ終わってないわ」

「へいへい…ホント意地っ張りなお嬢様だぜ…と…これは…」

何やら見つけたようなハンスに私は聞く。

「どうしたの?」

「この議事録だがな…う~ん…」

「なによ?気になるの?」

「気になると言えば気になる…かな。見てみろ」

「なになに…工房の今後と費用について?」

「特別予算追加の検討について…まだ動きは無いが大きな案件になりそうな議題だな」

私とハンスはその資料について深く読み解くことにしたのだった。

そのあとに、更に事件を裏付ける資料を漁る事になるのだけど…

この時の私は”ラルスは大丈夫かな”なんて呑気な事を考えていた。

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