第7話 情報整理

コルソー大臣から説明を受ける僕ら。

――――

色々な資料や紙の束を示され、手際よく事の顛末を教えてくれる。

「─以上です。現在分かってるのはこの程度ですね。質問はありますか?」

そんな風にまとめる。

僕とローナはまだ駆け出しだし、ハンスも特に疑問は無いようだ。

「では、私はこれで。何かあれば遠慮なくおっしゃってください」

その言葉にハンスが思い出したように言う。

「あ、すみません、これから調べるのにこの大陸やお城の地図などがあれば助かるんですが…」

「ええ、そうですね。用意させますので、兵士に持ってこさせます。調査の方、なにとぞよろしくお願いします。こちらも全力で捜索を継続しますので」

頑張ってくださいね、と凛々しい笑顔を返してくれて退室するコルソー大臣。


大臣から聞けるだけの情報を聞いた僕らは一旦隊長との合流を待つことにした。

そして少しの時間のあと、王様との話を終えた隊長が来た。

あてがわれた一室の中で情報をまとめる事にする。

ハンスが隊長に対して資料を広げながら報告をまとめるように話しだす。


「では、大臣から集めた情報です。行方不明なのは王立研究所所長のジルキン博士。男性、年齢は50歳。主に研究所で発明品の研究、今までいくつかの品物を開発、実用性のあるものを作り出して評価されていますがたまに失敗作もあるようです。今回も何かの研究中だったとの事ですが詳細は不明。一定の成果が出るまでは結構な秘密主義みたいです。失踪は6日前、部屋に戻らない博士を不審に思った同僚の研究員からの報告で分かりました。これが当時の部屋の記録とスケッチです」

ハンスはそう言ってジルキン博士の資料と失踪当時の資料を机に出して示した。

博士の経歴書には似顔絵のスケッチが付いていた。50歳なのに白髪なのは研究の苦労が原因だろうか?

そして国の人が調べたのだろうか、博士の部屋の状況が書かれた報告書が並べられる。


「失踪当時、研究室の鍵は掛かっていなかったようです。コップなどは衛生上放置できないので現在は片されていて部屋の現状は失踪当時とは少しだけ違うようです」

「私たちでもう一度調べる、だが今は情報の続きだ」


「博士が失踪した時は目撃者などは居ません。あと博士の人間関係などですが最近兵長のグスタフと揉めていた、という証言があります」

報告をまとめるハンスに隊長が要所要所の質問をしていく。

「国王からは犯行声明や身代金の要求はないと聞いているがどうだ?」

「はい。今の所どこからもそれらしき要求はないそうです」

「揉めていた相手のグスタフ兵長についての情報は?」

「詳しい内容は軍部にあるそうですが一応大臣からも確認はできました。グスタフ兵長32歳 18歳で国軍入りし歩兵部隊に配属、その後異例の早さで出世し28歳で兵長の任に就いています」

ハンスが示した資料にはやはりグスタフ兵長の経歴と顔のスケッチが付いていてそれを示しながら話を進めるハンス。

資料にはいかにも”体は筋骨隆々です”みたいな男が書かれていた。

「若くして兵長の任に就いているので、一般的な軍幹部のように指示役だけでなく前線で体も張る現役の兵士でもあります。出世は今までの戦闘で上げた功績が正当に評価されたものでしょう。ただ少し性格面で頑固な所があるようです。兵長についてはこれぐらいです」

「それ以外に問題点は?国や大陸の情勢はどうだ?」

「国の情勢としては普通だと思います。一部の種族間の対立や魔族との争いはあるものの、これは他の大陸や国でもあるレベルです。近年の動向としては毎年火を利用した工房などを増築、作った物品を流通させたりして発展しています。一部品物については輸出も始めているそうです。国としては順調な成長でしょう」

「…」

「今の所分かっている情報はこんな所です。隊長、どうします?」

「すぐに研究所に行く。研究員たちから話を聞いて、研究室と博士の部屋の確認をするぞ」

こうして僕らは研究所と博士の部屋に行くことにした。

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