第5話 城門と紋章

「ここがファイアフィルド王都かぁ」町中を見ながらローナが言う。

そんなローナに僕も「すごい大きな所だね。ケホ…少し煙いけど」と答える。

規模の大きさに圧倒される僕らにハンスが説明する。

「言うまでもなく火の加護を受け、火を利用した産業で発展する王国だ。パンや肉の料理から武具の製造の製鉄まで、幅広く火が利用されてる。煙いのは加工場や鉄製品の工房から出る煙のせいだな」

言って周りを見渡す。それに僕らも答える。

「すごいね。色んな所から煙が出てる」

「美味い物もありそうだし、持ってる武器の鍛え治しなんかもやってるかもな。上級冒険者も王都にはよく立ち寄るらしい。まあ説明はこれぐらいにして…隊長どうします?ギルドから行って情報収集ですか?」

隊長に行動を聞くハンスだったけどすぐ否定の返事が来た。

「いや、このまままっすぐ城に乗り込む」

隊長のそんな言葉に僕は不安を述べた。

「お城って誰でもすぐに入れるのかな?審査とか無いのかな?」

そんな僕にハンスが答えた。

「公国や共和国の中には警備が薄い国もあるが、まあここは普通なら無理だろうな」

「それじゃあ…」

「まあ見てろって」ハンスが笑う。何か策があるって事なのかな。

そんなやりとりをしつつ大通りを進むとお城の門が見えた。


兵士が僕らを見て声を掛ける。

「何者だ?ここへ何をしに来た?」

隊長が前に出て答える。

「王への謁見を」

「謁見だと?連絡は?まさか貴族からの紹介状とかも無しに突然来たのか?お前らには常識が…」

声を大きくする兵士にハンスが割って入る。

「まあまあ、俺たちはこういうもんだ。」言ってなにやら兵士に見せる。

それは手の平サイズの紋章だった。

兵士の一人は「なんだこれは?こんなもの見せられても…うっ」と言い動きを止め続ける。

「…少し待て」そう言って城の方へと入っていった。

待っている僕らはハンスに話を聞く。


「ハンス、その紋章って…」

「これはな、天使の紋章と言って、天使本人、もしくは天使が認めた仲間が持つことを許された紋章だ」

ハンスの話にローナも答える。

「あ、それ聞いたことがある!実物見るの初めてだわ。なんか他にも紋章があるとかも聞いたことがある」

「勇者の勲章や魔王の印(しるし)、それに神々の証(あかし)の紋章なんかだな。天使と勇者、神々の奴は国の捜査機関と同等の身分証になったり、こうして提示すると国や人から協力を得られたりする」

説明をするハンスに僕は聞く。

「悪い人たちにも効果はあるのかな?」

「有ったり無かったりだ。素直に降伏する奴も居れば、逆上して襲い掛かってくる奴も居る」

「それじゃ今の僕とローナは持てないね。襲われて紋章を取られちゃうよ」

そんな僕に隊長が言う。

「いずれは持たせる。だから早く成長して実力を付けろ」

「うん」

そんなやりとりをしていると少しして兵士が戻ってきた。そして言う。

「失礼を致しました。早速謁見の手配をいたします。ご案内しますのでこちらへ…」

こうして王城へ通される僕ら。

僕とローナは初めての謁見と言う事もありやや緊張して王様に合う事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る