川中島ってのか、中州ってのか、川の中の陸地があるだろ? それの結構大きな、木も茂って丘みたいになってるとこがA川にあってさ。


 あ、そう、それだよ。そか、ちゃんと言うならW川か。合流するあたりだもんな。


 高校の頃、学校サボってよくそこに行ってたんだ。ガキが遠足に来なけりゃ静かでいいところなんだぜ。


 何するって……寝たり、漫画とかPSPとか持ってきたり……あとは、ま、タバコ。

 や、ちゃんと灰皿持ってってたって! ガキのときに散々行ってて単に好きな場所だったから、火事とかヤダしな。


 とにかく、何しても誰にも見つからねーから居心地良かったんだよ。


 んで、その日もそんなふうにサボってて、日も暮れてきたんで帰ることにしたんだ。


 中州の丘から河原までの距離が短いところを選んで飛び越えたんだが、着地に失敗して盛大に転んだ。


 自慢じゃないけど運動神経は良いほうだから、そこで転んだのは初めてだった。


 幸い擦り傷程度で済んで、畜生って思いながら立ち上がって、それで転んだことに原因があるのに気がついた。


 中州からはよく分からなかったけど、河原に石が積んであったんだ。どうやら、ちょうどその上に着地しちまったらしい。


 誰だよ、こんなとこに石を積んだやつはってムカついて、まだ少し残ってたその石積を俺は蹴飛ばしてやった。


 夕日が赤く照らす河原を不機嫌なままで歩き出すと、爪先が何かに当たった。


 ―――見下ろすと、石が積まれていた。


 辺りを見回すと、そこかしこに石が積まれていた。

 視界に入るあらゆるところに、いろんな形で石が積んであったんだ。


 ひとりでできる数ではないし、集団で石を積むような連中がいるとも思えない。

 言いようのない不気味さを感じて、「賽の河原」って単語が思い浮かんだ。


 急いで帰ろうと河原を走り出したのに、一向に土手にたどり着かなかった。どれだけ走っても、石が積まれた河原から抜け出せなかったんだ。


 いい加減疲れて座り込みかけた時だった。


 ポケットに入れていたケータイが震えて、着メロが鳴った。


 その瞬間―――、がらがらって音がそこらじゅうからして、見ると、積まれた石は全部崩れていた。


 うん、その後は普通に帰ることができたよ。

 


 

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