第3話 私立旭学園

 あっという間に入学式当日になった。

 珊瑚は新しく買い与えたスマホでユーチューブに夢中だ。今は教育系のモノを中心に見ている。これも勉強の一つか。

 新しい制服は学ランとブレザーの二種類があり、お金に余裕がある過程は二種類買っている。女子はセーラー服とブレザー、これも自由に選択できる。この学校は転校生や留学生が多いらしい。色々な制服があっても違和感を持たせないのが目的らしい。


「留守番頼んだ」

「は~い。いってらっしゃい」

「行ってきます」


 玄関から出るとすぐさま鍵を掛ける。かけ忘れの無いようにだ。合鍵は珊瑚に渡してあるが外出する気は無いようだ。鍵を失くした時に珊瑚に頼むくらいか。

 

 徒歩で十五分。坂道を登り校舎が見えてくる。校門には入学式のプラカード。第何回かは書いていない。生徒会役員らしき人から胸に造花の名札を付けてもらう。入学式は体育館で行われるために体育館に向かう。同じ名札を付けた新入生が同じ方向に向かっている。掲示板にクラスが書かれており、俺は一年一組だった。


 そどなくして在校生と新入生が集まり、入学式が始まる。校歌斉唱の後に校長の話。新入生挨拶。生徒会長の話が終わり。あくびをかみ殺していると生活指導の先生から各種注意事項の話が始まる。なんで最後に生活指導の先生が? とも思ったが、この学校の校則は緩く、問題行動を起こす生徒が後を絶たないらしい。それは風紀委員がしっかりしていないのでは? とは思っとが問題を起こした生徒は即退学らしい。だから、校則は緩る目で罰が重いのかもしれない。入学式が終わり新入生は退場する。


 一年一組の教室はシーンとしていた。まだ距離感の測り方が分からいと言うのも有るが自己紹介もまだだ、こんなもんだろう。



 教室のドアが開き、二人の先生らしき人物が入ってくる。

 女性の教師が二人、担任と副担任だろう。


「入学おめでとう。私が担任の高橋真琴たかはしまことだ。こちらが副担任の葉月沙耶はづきさや

 

 葉月先生がぺこりと頭を下げる。まだ初々しさが残っている。二年目だろうか? 


「まずは自己紹介だ。出席番号一番。伊藤静真からだな」


 そう呼ばれて立ち上がる。皆の視線が集まる。ここは無難な挨拶にしよう。


「はい。峰岸中学から来ました。伊藤静真です。趣味は読書、本なら何でも読みます。本を集めるのも好きですが最近は漫画は電子書籍、ハードブックは書店で買います。図書委員希望です。よろしくお願いします」


 そう言って席に着く。なかなか無難だったと思う。後の人もさんこうになればいいんだが……


 自己紹介が一通り終わり。高瀬先生と葉月先生からタブレットが配られる。


「この学校に教科書はない。すべてタブレットの中に入っている。我々は一様黒板に板書きはするが、ノートを取るなり、タブレットで撮影するなりしてくれ、他に質問は?」


 俺はスッと手を挙げる。


「伊藤、言ってみろ」

「はい。部活は必ず入らなくてはいけないのでしょうか?」

「全員入ってもらう。ただし部としては存在するが幽霊部員のみの部活もある。これは実質帰宅部だ。バイトは禁止されていないが必ず報告すること」

「ありがとうございます」

「あと、各自の委員会は明日のHRで決めようと思う。人気の委員会はくじ引きだ。注意事項はこれぐらいいだ。おおいに学生生活を謳歌するように」


 葉月先生一言もしゃべってなかったなというどうでもいい事を考えながら休み時間に皆それぞれグループを作り始める。群れる気は無いので校舎を見て回る。自販機はどこかボッチ飯に良さそうなのは何処か、これは図書委員になれれば昼休みに図書室で食べればいい話だ。

 

 今日は誰とも話さずに帰宅した。

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