第2話 認識の相違
珊瑚はお風呂好きだ。猫には珍しく濡れる事に躊躇しない。これは子猫の頃からお姉さんに風呂に入れられていたからでドライヤーの音にも慣れている。ただし、体を拭くのは自分の仕事ではないと思い込んでいる節がある。お風呂からびちょ濡れで出てきた時は心臓が飛び出るかと思った。
思春期の男子に全裸美少女は刺激があり過ぎた。だが、部屋がびしょびしょになるのは困るのですぐさまバスタオルで拭きあげた。無心で拭きあげたが瑞々しい肌の感触が手に残って困った。
彼女との生活は刺激に満ち満ちている。性的な意味でも非日常的な意味でも。
ディス・コード。そう呼ばれる能力がこの世にはある。認識を改変、情報を改変、物質を改変。とにかく出鱈目な能力だ。この能力のお陰でお姉さんと出会えた。そのせいでお姉さんは死んだ。組織の裏切りにあったのだ。俺も所属していたが今はフリーだ。それは珊瑚を守る為だ。
猫又は高く売れる。その強奪にお姉さんは抵抗した。それが原因で亡くなったのだ。組織随一の強さを誇っていたお姉さんも数の暴力には勝てず死んでしまった。
「静真。お風呂あいたよ」
「体を拭け」
「それは静真の仕事」
「マジか」
全裸で突っ立ている珊瑚にバスタオルを持ってきて拭いてあげる。下半身が反応するが珊瑚はなんの反応も返さない。バスローブを着せて、ドライヤーで髪を乾かす。
湿気を帯びた髪は絹糸のようでドライヤーでダメージを受けないように遠くから風邪を当てる。
「手慣れてるよね静真」
「二回目だからな」
「他にも理由あるんじゃない?」
「昔髪が長かったからな、手順は分かる」
「なんで伸ばしてたの?」
「がんで髪が無くなった人用のカツラにするためだな」
「カツラって何?」
「目が悪い人がメガネを掛けるように髪が寂しい人が装備するものだ」
「ふ~ん」
乾かし終わったので風呂に入る準備をする。バスローブは元々俺のヤツだったが、パジャマと下着を持って脱衣室に入る。脱ぎ散らかされた珊瑚の衣服をカゴに入れる。着ている服を脱ぎカゴに入れて、タオルを持って風呂場に、リンスインシャンプーと石鹸。他に珊瑚用のシャンプー、リンス、コンデショナーがある。初めは使い方が分からない珊瑚を見ない様に指示を出したのはファインプレーだと言えるだろう。
一通り体を洗い浴槽で体を休める。ドクンと心臓が跳ねる能力が強制発動する予兆だ。
「誰だ!」
「私」
珊瑚の声がするが姿は見えない。光学迷彩? 量子ステルス? 風に声を乗せただけ?
ドクンと心象風景から武器を取り出す。小太刀だ。狭い風呂場では刀を振るえない。
「お腹すいた」
「ピザでも頼め」
「スマホ勝手に使っていいの?」
「ああ、暗証番号は003598だ」
「分かった~」
風の能力を使った事に身体が勝手に反応しただけの様だ。
寒くなって湯船に入り直す。無駄に緊張した。ため息をつくとタオルを目の上に乗せて湯船に沈み込んだ。
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