第7話 蛇の足

 この数十年間津波に襲われていない平和な砂浜のビーチパラソルの下で、カールは口を開く。


「私がまだ皇帝だったらなあ……」


 民主化の波に押されて共和国となったアルカムエに、ワンマンな彼女は必要なかった。


 それなりに客はいるが、パラソルの下の露出の高い水着を着ている美人に声をかけるものは一人を除いていなかった。


「カールさんじゃないですか」


 ザッツだった。


「おや、宇宙海軍の仕事はいいのかい?」


「やめさせられました。整備兵を投げたので妥当ですよ」


「まったく。私に手を振ってくれてたころが懐かしいくらいだ」


「今のあなたは牙の抜けた獣ですね。僕も昔のあなたが懐かしい」


 ザッツにはカールが燃え尽きているように見えていた。


「……僕に外惑星探査の話が来ています。志願もできるみたいですよ」


「やれと?」


「いいえ。お好きにしてください」

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地の底から、宙へ (Ⅳ) @Hk-4

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